【レビュー】 歌詞を味わう洋楽 第3講 'Take Me Home, Country Roads' (John Denver, 1971)
今回は、John Denver の 'Take Me Home, Country Roads' (1971) の歌詞を味わいたいと思います。
日本では、ジブリ映画『耳をすませば』(1995) の主題歌として日本語カバーされました。
この歌の舞台となっているのは、アメリカ合衆国のウエスト・バージニア州。
私は訪れたことがありませんが、'Mountain State' という愛称が付いており、山々に囲まれた自然豊かな地域であるようです。
出だしの 'almost heaven' は、そういう土地柄「天にも届きそうな」とも解釈できるし、自然の豊かさを「まるで天国のような」ところだと表しているのかもしれません。
人々の暮らしは「木々より古い」(older than the trees) と言っているくらいですから、歴史のある街なのでしょう。
一方で「山々より若い」(younger than the mountains) と言っているのは自然への敬意でしょうか。
同時に、まだまだ「発展を遂げている」 (growing) 街への敬意なのかもしれません。
いずれにしても「そよ風のように」(like a breeze) と表していることから、のどかで穏やかな街のイメージが膨らみます。
サビの部分です。
「『自分がいるべき場所』(the place I belong) へ連れて帰っておくれ」と言っていることから、タイトルにもなっている 'country roads' は「故郷へ続く道」ということでしょう。
自分をあたたかく包んでくれる故郷を 'mama' と表しているのは、万国共通の感覚なのだと感じます。
2番に入ります。
ここはいろいろな解釈ができそうです。
1、2行目を直訳すると「あらゆる思い出が『彼女』のまわりに集まる」「炭鉱夫の『妻』は青い海を知らない」ということになりますが、'her' や 'lady' とは誰を指しているのでしょうか。
もしかしたら「母親」や「昔付き合っていた女性」など実際の人間かもしれないし「ウエスト・バージニア」を表しているのかもしれません。
3行目も「暗い」(dark)「埃っぽい」(dusty)「空に描かれた」(painted on the sky) と形容詞が並んでおり、抽象的な歌詞になっています。
2行目に 'miner' が出てきたように、昔炭鉱業が盛んだった街の様子を表しているのかもしれません。
4行目の 'moonshine' は禁酒法時代の「密造酒」のことのようです。
1番の歌詞がどちらかというと、故郷を鳥の目で捉えているのに対して、2番ではそこで暮らす人々の営みによりフォーカスした生々しさを感じます。
主人公はそれらを五感で懐かしみながら、思わず涙している (teardrop in my eye)のでしょう。
サビを繰り返し、Cメロに入ります。
1行目「朝早く『彼女』が呼ぶ声が聞こえる」とありますが、「彼女」とは誰を指すのか。
2行目の状況として、ラジオから何か故郷に関連するニュースなり曲なりが聞こえてきて「帰ろう」と思い立ったのか、それとも後続にあるようにすでに帰郷の途中カーラジオで地元局の放送を聞いているのか。
この部分も解釈が分かれそうです。
いずれにしても、主人公は「もっと早く帰ればよかった」(I should have been home yesterday) と後悔しながら車を走らせているようです。
最後、サビをリフレインし、曲は終わります。
ちなみに冒頭で紹介した日本語カバー版は(映画に寄せていることもあるのでしょうが)「自分の夢を叶えるべく、故郷には帰りたいけど帰らない」という「故郷との決別」を歌っているのが、原曲と対照的になっていて興味深いです。
帰るにしても、帰らないにしても、誰にもある故郷。
それぞれの 'the place I belong' を思いながら、歌詞を味わってみてください。