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私もいつからかパパゲーノ
寝れなくなった私はNHKのドラマを観ることにした。
「ももさんと7人のパパゲーノ」という名前のドラマらしいんだけど、これがなかなか心にくる。
心にくる、というか心を自体は軽くしてくれる作用も持ちつつ、心の奥深くにはズドンとくるようやドラマだった。
内容はというと、20代で東京の一般企業で働く、「死にたい」が口癖のもも(伊藤沙莉)が仕事を辞め、全く知らない田舎で野宿をしながら「7人の"死にたい"という気持ちを抱えながらも毎日を生きる人」と出会っていくという話。
題名にもある、「パパゲーノ」とはその7人のような死にたいと思いつつもその人なりの考え方や理由で死ぬことをとどまる人らしい。
小学校の音楽で習ったオペラに出てきたパパゲーノがそんな人だなんて思いもしなかった。
ももと途中から共に旅するようになる雄太(染谷将太)もパパゲーノの1人。
それぞれの背景や生きることを決めた理由はぜひご自身で観て確かめてほしいのだが、
パパゲーノの定義を知った私はここで思った。
いやちょっと待って!!
わたしもパパゲーノじゃない?
と。
自称無職とか、自称うつとか、自称サバサバ女とかみたいに自称の状態だけど、
私は間違えなくパパゲーノ(自称)だ。
私は今、未来のために生きている。未来のために努力したいから、諦めたくないから生きている。
自殺寸前まで追い込まれても死ななかったのは、自分の未来を捨てたくなかったから。
努力したら未来は変わるって過去から学んで知っていたし。
行きたい大学に受かって、そこから知らない世界に飛び込んで未来を切り開きたい。
行きたい大学に受からなくても、私ならきっとそこからなにか目標を生み出して努力出来ると思うし、
自分を支えてくれた大切な人を失っても、きっと立ち上がって前を向くことが出来ると思う。
そしてドラマを観て思ったのは、パパゲーノはみんなその日暮らしだし、自分の生きるための理由や考え方を守るためならどんな決断だってするんだなと。
私もそうだと思う。
これがいいのかは分からないけど、常にその日を生きるのだけに精一杯で、未来のために努力したいとか言いつつも、結局は一日単位でしか考えられない。
友達や環境、学校のことだって、自分の生きる理由を守るためなら簡単に、今まで積み上げたものを切り崩してしまう。
だけどそうして生きているからか、パパゲーノは脳裏にちらつく「死」という文字を見無かったことにして、死ぬことを選ばないんだろうな。
もちろん屈強なメンタルを持っているわけではないし、死にたいと思いつつ生きているくらいだから、怠惰や弱さと共生して生きてる。
ただ、自分の限界を知りながらも、前を向いて生きることができる。
インスタ映えするようなキラキラしている人生どころか、ステレオタイプの人生とも違う生き方だから、ぐらぐら揺らぐことがあっても、生きる道から外れまいと不安定な平均台の上を歩いてる。
だからパパゲーノみたいな人たちが一番強い人間なんだろうなって思います。
そこに私も含めさせてもらえたら嬉しい。
1話完結で50分ほどで観れるし、伊藤沙莉と染谷将太の自然な演技がすごく良かった。
脚本家含め制作陣の方には、小学生もInstagramやTiktokに投稿するような時代になって、
ルッキズムも激化して、華やかな風貌の人や人生を送る人よりフォーカスされる風潮の世の中に、
希死念慮を抱えるが、パッと見普通の人のドラマを作ってくれてありがとう、と言いたいです。
カウンセリングドラマらしく、心が少し不安定な人に特に観て欲しいな。