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変革の時は来る! ジョージ・フロイドさん事件初公判を控え、抗議の現場でうたわれる「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」

2020年、ブラック・ライヴズ・マター運動が全世界へと広がるきっかけとなったのが、同年5月25日に起こった警察官によるジョージ・フロイドさん殺害事件でした。全米のみならず世界の注目が注がれる事件の初公判が、今月、3月29日以降にいよいよはじまります。

ミネソタ州ミネアポリス(事件の起こった地元)の裁判所前にはデモ隊が繰り出しました。みなが声を合わせてうたうのは、ソウル・ミュージック創始者の一人、サム・クックの名曲「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」。1964年の歌が、いまなお、うたい続けられる理由を音楽評論家の藤田正さんに伺います。
※トップ画像はReMastered(邦題『リマスター:サム・クック』|Netflix)オフィシャル・トレイラーより

サム・クック「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」

――BLM運動の端緒となったジョージ・フロイドさん殺害事件。世界の多くの人が事件の映像を見て、衝撃をうけました。

藤田 むごい。その一言です。警察官による人殺し。ありえないことが起きた……じゃなくて、連日のように発生している米・警察官によるリンチ~暴力行為の、その最初から「最期」に至るまで、ぼくらはネット動画を通じて「体験」してしまった。地球の反対側にいてるぼくらも「目撃者」の一人だということを心に抱きながら、フロイド氏ほか無念の死を遂げた人たちを追悼したいと思います。

――いま、抗議活動の現場で「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」がうたわれていると聞いて、胸が熱くなりました。ソウル・シンガーの多くがカバーする、サム・クックの名曲。ブラック・ライヴズ・マターの抗議活動において、やはり外せない一曲なんですね。

藤田 Twitterの動画ね、観ました。この歌を街に流しながらフロイド氏を追悼しプロテストするって、ブラック・ライヴズ・マター運動に共感する人たちって何て心優しい人たちなんだろうと思いました。差別と暴力に対する怒り、だけじゃないんだよね。デモ隊は魂(ソウル)の救済をも願っている。これこそが「ソウル・ミュージック」の核じゃないですか。ぼくらは「ジョージ・フロイド~ブラック・ライヴズ・マター~サム・クック」という三つの点を自分のイメージの中で繋げて、俯瞰したらどうですかね。サム・クックというゴスペル&ソウル・ミュージックの筆頭だったシンガーが、変化はきっと来るよ、とうたった。そのソウルが今も生きている……じゃあ、その意味って何だろう、ってこと。

―― 「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」の成り立ちについては、藤田さんも『歌と映像で読み解くブラック・ライヴズ・マター」で詳しく述べられています。

藤田 書籍にも書いたけど、この歌は最初から公民権運動の象徴だったわけじゃない。歴史の積み重ねの中で、歌の意味、あるいは意義を、多くの黒人や解放運動に関わった人たちが認識していった。いわば気づきの歌なんだと思う。どちらが良いかどうかじゃなくて、ジェイムズ・ブラウンの激しさ、直接的な「ブラック!!」というメッセージとは対極にある歌。現在のブラック・ライヴズ・マター運動には、さてどちらが適切か、ということですね。

――サムは、惜しくもこの歌が世に出てヒットする前に銃弾に倒れてしまいますが、そのとき、わずか33歳。この事件についてはネットフリックスの『リマスター:サム・クック』が詳しいですね。

藤田 観るべき作品です。サム・クックがなぜ死んだのか。本当に不思議。死に至る彼の行動にしてもね。

『リマスター:サム・クック』|Netflix

――いっぽう、アマゾン・プライム・ビデオでは『あの夜、マイアミで』が配信されています。サムのほか、マルコムX、モハメド・アリ、ジム・ブラウン(元NFL選手で俳優)といったそうそうたる人物たちが集った特別な一夜を描いています。この映画でも「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」は重要な核となっています。

藤田 これも観るべき! 歴史的な出会いを描いているし、本作品にしても、これまでのアメリカ史を問い直そうという明確なムーブメントがあちこちで起っている、その一例です。

『あの夜、マイアミで』|アマゾン・プライム・ビデオ

1964年2月25日、フロリダ州・マイアミビーチ。カシアス・クレイ(のちのモハメド・アリ)が世界ヘビー級タイトルマッチで王座をうばった伝説の夜の出来事を描く『あの夜、マイアミで』(原題:One Night In Miami…)。実際にあったイベントをベースとしつつもフィクションが加えられている。

――「ア・チェンジ・イズ・ゴナ・カム」は、今も生きている!

藤田 そうです。で、ぜひこのニュース動画も観てください。今や「フロイド・スクエア」と呼ばれるようになったフロイド氏殺害現場の、すぐ傍に住むお父さんと息子のドキュメント。もちろんサム・クックの歌とリンクしてね。泣いてしまいますよ。

NBC NEWS Floyd Square:Fatherhood at the Intersection of E.38th St. and Chicago Ave.



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