経済情勢をどう見るか・・・消費(1)
2022年10月28日
一般社団法人成果配分調査会代表理事 浅井茂利
<情報のご利用に際してのご注意>
本稿の内容および執筆者の肩書は、原稿執筆当時のものです。
当会(一般社団法人成果配分調査会)は、提供する情報の内容に関し万全を期しておりますが、その正確性、完全性を保証するものではありません。この情報を利用したことにより利用者が被ったいかなる損害についても、当会および執筆者は一切責任を負いかねます。
なお、本稿の掲載内容を引用する際は、一般社団法人成果配分調査会によるものであることを明記してください。
<ポイント>
*消費は回復が遅れており、名目消費活動指数の横ばいが続いている。
*実質消費活動指数を見ると、非耐久財、サービスでは、横ばいないし微減に止まっているものの、耐久財は縮小傾向が顕著となっている。
*耐久財の縮小傾向については、半導体不足など供給制約の影響も考えられるものの、その物価上昇率が6%近くに達し、全体の物価上昇率の倍近く高騰していることが、消費意欲を削いでいる可能性がある。
*物価高騰による実質可処分所得の減少が消費不況をもたらすことのないよう、賃上げ(ベースアップ)による実質賃金維持が最重要課題となっている。
消費回復が遅れているが、耐久財とサービスでは状況が異なっている
日本銀行の算出している「消費活動指数」で2022年8月までの状況を見ると、名目消費活動指数は、2015年を100とした指数(季節調整値)で2022年5月以降、4カ月連続で99台と横ばいが続いています。このため実質消費活動指数は、物価上昇を反映してやや縮小傾向となっています。
実質消費活動指数の中身を見ると、
*非耐久財(半耐久財を含む)とサービスは、ほぼ横ばいないし微減に止まっているのに対し、
*耐久財は、4月(103.1)から8月(92.0)にかけて、11.1ポイントも低下している。
ことがわかります。
経済活動の動向を敏感に観察できる職種の人に対するアンケート調査である内閣府の「景気ウォッチャー調査」を見ても、家計動向関連(小売、飲食、サービス、住宅)の職種の人の回答状況(2022年9月)では、飲食とサービスについては、好不況の境目である50を超えていますが、小売については改善が見られるものの、50には達していません。
消費不況回避が最重要課題
耐久財とサービスで、消費の状況に差がある理由としては、コロナ禍の下で抑制されていたサービス消費に対する消費意欲が根強いということが、まずあげられると思います。
また耐久財については、半導体などの供給制約が残っていることが考えられますが、一方で、
*経済産業省「鉱工業指数」を見ると、消費財の中の耐久財の在庫が4年6カ月ぶりの高水準となっている。
ということがありますので、供給制約という生産者側の要因だけでなく、消費者側の要因についても注意を払う必要があります。
消費者物価上昇率を耐久財とサービスで比べてみると、少なくとも9月までは、
*サービスの物価がほとんど上昇していないのに対し、
*耐久財の物価上昇率が6%近くに達し、消費者物価上昇率(総合)の倍近く高騰している。
という状況にあります。耐久財のほうが、資源価格の高騰の影響が大きく、供給制約もあるので、その差自体はやむをえないところですが、それが耐久財に対する消費意欲を削いでいる可能性があることについては、とくに注意する必要があります。
ちなみに、非耐久財の物価高騰は耐久財をも上回る状況にありますが、生活必需品の性格が強いために、耐久財に比べて消費に影響が出にくいということが考えられます。ただし、非耐久財にしても、サービスにしても、今後の物価動向次第では、節約行動の高まりも十分に予想されるところです。
ちなみに、2022年10月の東京都区部の消費者物価から当調査会が推計した10月の全国の消費者物価上昇率(前年同月比)の予測値は、総合3.7%、耐久財5.3%、非耐久財7.3%、サービス0.8%となっています。
物価高騰 ⇒ 実質可処分所得の減少 ⇒ 節約行動の高まり
⇒ 消費の縮小 ⇒ 消費不況
という経路を回避するためには、当然のことながら、賃上げ(ベースアップ)による実質賃金維持、消費底支えが最重要課題であることは言うまでもありません。
*この記事に関しては、みなさまからのご質問・ご意見などを踏まえ、補強していきます。
*この記事に関するバックデータは、会員向けの記事において、随時、提供していきます。