大人トナー
あなたは、大人になりたいですか?私はなりたくありません。
なぜって、それはどうしても、自分が大人になる事がどうしても想像できないからです。想像できないことは怖いです。子供を叱る自分、飲み会でお酒を飲む自分、毎日八時間寝れない自分。どれも幽霊のように信じがたい話であり、恐ろしい話なのです。それに、私はこれらの事実を受け入れようが受け入れまいが大人になってしまうのです。どんなに逃げ続けようと、迷おうと、いつかは社会に追いつかれます。
それが恐ろしくてたまりません。
何とか逃げ道を探していたところ、このシリーズと出会いました。
〈物語シリーズ〉です。主人公は高校二年生の阿良々木暦。昔のある事件が理由で人とのかかわりあいを避けていました。そんな中、上の階から転落してきた少女、戦場ヶ原ひたぎを受け止めるところから話は始まります。
このシリーズ、ファンタジーの側面やライトノベルの側面がかなり強いものの、それらが苦手な人たちにも十分お勧めできます。その理由というのは、作品を通して語られる登場人物各々の人生哲学です。もはやこのシリーズの魅力は八割ここに詰まっているといっても過言ではありません。作中で語られる各登場人物の人生哲学は、それぞれのキャラクター性を強く表し、その登場人物に深く厚い魅力を感じさせてくれるのです。またそれぞれの哲学は別のキャラクターとぶつかり合うことで、変化とともに成長していきます。
さながら金属のように。
そして、読み進める中で彼ら彼女らの哲学、そして成長に触れた時、私はこれこそが探していたものだと気づきました。
自分に確固たる信念、哲学があれば、たとえ大人になっても、人とぶつかることがあっても、柔軟に成長し続け、分かり合い、自分を貫き続けられるのではないでしょうか。社会が迫ってくる恐ろしさは未だ拭えないながらも、対処法くらいは見えてきた気がします。
先ほど魅力の八割をお伝えしましたが、残り二割は同氏の秀逸な言葉遊びです。構成二九巻という数字は地獄の様かもしれませんが、もしハマれたならすぐに読み終わってしまうでしょう。
筆者:高等学校1年生(2024年現在)