春のプロムナード(短歌人2018年4月号)

こんにちは、短歌人の太田青磁です。
短歌人4月号の特集「春のプロムナード」から5人の歌を紹介します。

炎症の喉もてあます食卓にコップに満ちる水たくましい
かんたんに雪道の道消していた北風よ今わたしに吹けよ
今の不安が先の不安へつぎつぎとかわる夜の果て、肩を冷やして
「 雪あかりになって」/黒崎聡美
ロロロッサ真白き皿に散らしつつ行方知らずの春を待ちをり
裏窓のしたテラコッタを洗ひたる水は暗渠へもぐりて迅し
あをぐろき土割りて咲くヒヤシンス行方知れずの春はもどりつ
「行方知れずの春」/三島麻亜子
することはある けれども今日は小型なるSUVで野を目指したし
路面より浮かびてわれは行き先の地まで天地の中間にあり
ハレの日を持たざるわれへ海の辺の道はわずかに愉の匂い帯び
「スポーツ・ユーティリティ・ビークル」/渡部洋児
ははのあしとわれのあしとにあたりたり家をころがるバランスボール
藤井隆のすばらしさを説きとまどひの反応されたる婚活パーティー
わナンバーが右折しさうで直進すうしろで四秒車間をはかる
「かはいそうな風」/高澤志帆
予報士の来るぞ来るぞといふ寒波来たりて今日は雪に籠りぬ
蔵王山(さん)と呼びて親しきこの山を宮城の人はザオウザンとよぶ
人間の弱さ強さを思ひつつまた読み返す遠藤周作
 「白の主張」/荘司竹彦

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