短歌人2018年4月号 会員2欄(1)
珈琲の湯気のゆたかにのぼるときしづかに雨は降りはじめたり/桐江襟子
リフトから見おろす白と深緑、ストックを振っているいとこたち/相田奈緒
ただ一人談志を看取りし談吉の弟子たる矜持を口跡に見ゆ/高橋道子
洗顔パウダー泡立てながら「あ、髪切ったからだ」と答えが出る/加藤真弓
本格カレーが腸に及ぼす影響について知らぬ存ぜぬ朝/国東杏蜜
八年の叔父の余命を言い当てた病院前を黙って通る/佐々木あき
雪の日のブルックナーの七番は祈りの様にふかく情に入る/伊藤佳子
うさみみのパジャマのままで雪かきをはじめれば子供らが逃げてゆく/北城椿貴
手のひらの氷柱は小さきガラス靴光る朝に溶けてゆきたり/來栖三樹
オーボエのAにあはせる管弦のおと厚く響きて開演せまる/佐々木順子