司法試験合格を阻む誤解 勉強方法 その5
前回までのあらすじ
司法試験に合格するには
「法的知識を用いて問題を解決する能力があると採点者に示す力が必要だよ」
というお話でした。
今回は、この力と関連した「よくある誤解」について考えてみます。
よくある誤解
時々、司法試験合格に必要な力を「法的知識を用いて問題を解決する能力」だと誤解している人がいます。
これは非常によくある誤解です。
そして、致命的な勘違いです。
司法試験合格に必要なのは、そのような能力そのものではありません(というか、受験生如きにそんな力は殆どありません)。
必要なのは、能力があると
「採点者に示す力=採点者に伝える力」
です。
「自分には十分な能力がありますよ、合格させても大丈夫ですよ」と採点者に伝える力、これが司法試験合格に必要だ、ということです。
*「能力がなければ、伝える力だけあっても仕方ないじゃないか」という疑問が湧くかも知れませんが、これについては別の機会に譲ります。
伝える力
これは実際、当然です。
「司法試験合格には自分の能力を採点者に伝える力が必要だ」
強調テク駆使してドヤ顔で書いてますが、余りにも当然のことです。
しかし、当然すぎるために、よく見過ごされます。
そして、先のような危険な誤解を生みます。
初学者だけではありません。
相当程度学習が進んでいる人であっても、この点を正確に理解できていない、もしくは軽視、誤解している人は決して少なくありません。
この誤解したまま勉強を続けると、時に辛い(と思われる)事態を引き起こします。
「司法浪人化」
です。
これはおそらく、多くの受験生が避けたい事態であろうと思います。
そのため、司法浪人化を回避したい人は、「伝える力」の重要性を頭に叩き込んでおく必要があります。
*私は、人は自分自身の心に従って生きることが最も幸せなのだろう、と考えています。なにしろ、一度きりの大切な尊い人生ですから。そのため、司法浪人をあえて賛美はしませんが、かといって批判するつもりも毛頭ありません。ですから、司法浪人の是非について、私からこれ以上言及することはありません。
採点者の視点
「伝える力」の重要性を頭に叩き込むため、一度採点者の視点に立ってみましょう。
採点者は、受験生の作成した答案だけを見て、その受験生の能力を判断します。
採点者には、その答案を書いた受験生が誰なのか絶対に明かされません。
顔も名前も性別も年齢も、生まれも育ちも知らされません。
その受験生が一体どれだけ「法的知識を用いて問題を解決する能力」がある人なのか、採点者にはまるで分かりません。
目の前の答案以外の情報は一切与えられません。
公平な採点のために、これは至極当然の措置です。
ですから、答案内に個人を特定できる内容が記載されていた場合には、それだけで失格となります。
このやり方を疑問に思う人は、おそらくいないと思います。
ここで非常に重要なことが分かります。
それは
「伝える力がない限り、受験生の能力は採点者に一切伝わらない」
という、無慈悲かつ当然の現実です。
一切伝わりません。ゼロですZERO。
これだけで「伝える力」がどれだけ重要か分かるはずです。
採点者の努力
採点者は多分全員、きっと真剣に採点しています。
常人であれば判読は不可能であろうと思われる乱雑な汚字であっても、全力で舌打ちしながら可能な限り解読を試みてくれています。
通常の判断能力を有する一般人には到底意味不明と考えられる記述であっても、悪態を吐きながら何度何度も読み返し、丁寧に分析をしてくれています。
これは決してお世辞ではありません(実際に、そうとでも考えないと合理的な説明がつかない合格答案は山ほどあります)。
何が言いたいかというと、採点者側の受け取る能力は極めて高い、ということです。
ですから、受験生側の伝える力が低くても(そして普通は高くありません)、採点者側の受け取る力が高いため、受験生の能力が全く伝わらないという最悪の事態は通常回避されます。
そのため、白紙等でもない限り、0点になることはまずありません。
とはいえ、もちろん採点者の力にも限界があります。
採点者は受験生にとっては神だけど神ではありません。
採点者がフォローしきれない程度に受験生の「伝える力」が低い場合、採点者は受験生の能力を受け取ることができません。
そうなると、その受験生の能力が仮に十分であっても、絶対に合格できません。
繰り返しになりますが、
「その十分なはずの能力が採点者に一切伝わらないから」
です。
伝わらない答案の意味
伝わらない答案は、試験との関係では、書いていない答案と同じです。
採点者が受け取れなければ、採点者にとって存在しないからです。
です。
白紙で合格した人はいません。
つまり、伝わらない答案では絶対に合格しません。
何度でも
くどいようですが、伝える力の重要性については、どれだけ言っても言い過ぎということはありません。
もし仮にあなたが司法試験受験を考えていて(もしくはすでに勉強を開始していて)、まだ「伝える力」の重要性を意識していなかったということであれば、その重要性を理解すると共に、一度徹底的に自分の「伝える力」を確認する必要があります。
そして、もし不足していると考えたなら、絶対に向上させなければなりません。
しかし、これはそれなりに大変な作業です。
私は結構苦労しましたし、また現在進行形で苦労し続けています。
次回は、伝える力の難しさについて書こうかなと思っています。
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