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イングリッシュ ローズ ガーデン 《詩》
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「イングリッシュ ローズ ガーデン」
長く続いた雨も止んだ
フロントガラスの枠から
雨漏りをしていた
バンデンプラス プリンセス
コーキング剤で漏れ箇所を塞いだ
小さな白い薔薇が
何かを思い出す様に咲いている
厚い雲間から太陽の光が溢れる
ほんの一瞬の事だ
わからないものは
永遠にわからないまま時は流れ
いつしか其の事自体も薄れ
記憶から消え去って行く
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簡単に読み飛ばせる文章の様な
過去の記憶ならば
風に流されて消えて行けばいい
あの読み捨てられた新聞紙の様に
僕の目に見えない所まで
飛んで行けばいい
歌える詩しか歌わない鳥が
同じフレーズを繰り返し鳴いている
僕は突然目の前に現れた
少女の手を引き
何処かへ連れて行こうとした
何故かだかはわからない
僕はそうしなくてはならない
少女は其れを望んでいる
漠然と感じたからだ
君の日常的にある残酷性に
指先で触れる
それが出来るのは僕だけだから
何も隠さなくていい 大丈夫だよ
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考え過ぎると魔法は解けてしまう
散文的で非整合的な世界
僕が描けるのは現実との乖離と落差
其処に本当の僕と君が
影となり存在している
僕は君の影に触れ
君は僕の影に触れる
重なり合わなくてはならない
危険な誤差を含んだ時計が
其の場所の時を刻む
僕はサリンジャーの小説を
読みながら
ジョンレノンを殺害した奴の
名前を思い出そうとしていた
少女は僕の手を取り
楽しい事だけ思い出して
そう告げた
バンプラのピクニック テーブル
サンドイッチとエスプレッソ
雨が降りません様に
そう君は僕の顔を見て笑った
薔薇が咲いている
イングリッシュ ローズ ガーデン
小さな白い薔薇が咲いている
何かを思い出す様に
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