依存症治療のキーポイント「友達」を作るための3つの秘訣
「依存症」の対義語は「つながり」と言われています。
英語で言えば、addiction⇔connectionとなります。
私自身、友達は少なかったです。
問題行動をしていた時は、定期的に食事に行けるような友達は皆無でした。仕事関係で話す人が少しいただけです。
そして、どこか寂しさを感じていました。
問題行動の直接の原因が友達の少なさにあったとまでは言いません。しかし、何らかの影響はあったのだと思っています。
そう考えると、依存症の治療はつながりを増やすことだといってもいいでしょう。依存できる対象を増やすといってもいいかもしれません。
現在、私も積極的に友達を増やしています。精神科で話すことができる人も多くなってきましたし、ジムでも挨拶をする間柄になった人もいます。
前置きはこのくらいにして、ここでは友達を作るための方法・親密になる方法について心理学者ハインツ・コフートの教えをもとに考えていきたいと思います。
ハインツ・コフートの自己心理学
心理学者ハインツ・コフートの提唱した自己心理学のなかの”転移”に友達と親密になる方法のヒントがあります。
”転移”は、自己の傷付きやすさを補填したり、自己を形成するために自然と発生する本質的なものとして捉えられています。
逆の立場から見れば、“転移”をうまく利用することで、相手の自己愛を満たすことができます。
「この人といると心地よいな」と思ってもらえるのです。
今回扱う”転移”は、3つです。
鏡転移
理想化転移
双子転移
それぞれを見ていきましょう。
鏡転移(鏡自己対象転移)
鏡転移というのは褒めてもらいたいという欲求です。
心理学の本を読むと上記のように書いてありますが、もう一歩追求したいと思います。
皆さんは褒められると嬉しいですか?
逆に、褒められて「ムッとする」時はありませんか?
人を褒めるのは実は難しいのです。
そのひとの容姿を褒めたときに、実はそれがコンプレックスかもしれません。
人は、結構いいところまで行った人、いわゆる1.5流の人ほどコンプレックスがあると言います。
何かのスポーツで県大会の1位の人に、「スポーツができてすごいね」と褒めても、本人は全国大会で勝てなかったことを悔いて、コンプレックスと感じているかもしれないのです。
つまり、「長所と思われるところ」を褒めればいいというわけではないのです。
他にも、嫌いな母親(または父親)に似ているから自分の容姿が嫌いという人もいるかもしれません。
さらには、性的な目で見られているという感じがして異性から容姿を褒められるのが嫌いな人もいるでしょう。
また、自分で気が付いている特技(何かで世界チャンピオンになっているなど)は褒められてもそんなに嬉しくないですよね。
褒めるのはすごく難しいのです。
ではどうすればいいか。
それは「私だけが知っているあなたのいいところ」を伝えてあげるのです。
とくに、「本人が知らない本人のいいところ」を指摘してあげると、相手は喜ぶと言われています。
例えば、
「声がすごくいいですね、落ち着きます」
「指がすごくきれいですね」
「話し方がすごく丁寧で分かりやすいです」
「姿勢が良くて素敵ですね」
など。
これらは自分で自覚することが難しい本人の側面です。
裏を返せば、褒めるためには相手を観察していないといけません。そして、「私だけが知っているあなたのいいところ」を探すのです。
褒めるには事前準備が必要なのです。
理想化転移(理想化自己対象転移)
理想化転移というのは自分の進むべき方向性を見出すことができるような他人を手に入れたいという欲求です。
完全でもあり、理想的な親となってくれるような他人を我々は求めます。
現代でいえば、「ホリエモン」とか「ひろゆき」のような方です。
この人についていけば、成功しそう・ためになりそう・自分が進化できそうといった安心感がありますよね。
では、私たちが誰かに対してそのような存在になるためにはどうしたらいいのでしょうか?
それは、他人がなかなかアクセスできない情報を持っている必要があります。別の言い方をすれば、「その道のオタク」になるとでも言いましょうか。
勉強する
突き詰める
努力する
といったところが、理想化転移のキーワードになってきます。
双子転移(双子自己対象転移)
自分と同じような他人を確認したいという欲求。
これは分かりやすく言えば、「似ている人が好き」ということになります。
もっと突き詰めて言えば、「自分の好きなものを好きな人が好き」とも言えそうです。
例えば、同じアイドルが好きな人同士で話が合うこともあるでしょう。
また、同じ食べ物を食べているときに、「おいしいね」と言い合うことで二人の距離は縮まるかもしれません。
つまり、「世界観が同じ」というのがキーワードになってきます。
しかしながら、無理に相手の世界観に合わせるのもつかれてしまそうです。
自分と他人は異なります。一方で、双子転移では「世界観が同じ」だと親密になれます。
このバランスが双子転移のポイントだと思うのです。
私が提案するのは、「わざと負けてあげる」ことと「自分を持つ」ことのバランスをいい具合に保つということです。
相手が「おいしい」と言ってカレーを食べているときに、「これはまずい。もっとおいしいカレー屋さん知ってるよ」なんて言ったら相手から嫌われてしまうでしょう。
ここは「わざと負けてあげる」つまり、「そうだね。このカレーはおいしいね。」と言ってあげることが優しさでもあり、双子転移を上手に生かした相手とのコミュニケーションだと思うのです。
一方で、「自分を持つ」ことも大切です。相手の言っていることにうんうんと頷いているだけの人生は疲れてしまいます。
先ほどの例であれば、「このカレーはすごくおいしいね。これと同じくらいおいしいカレー屋さんを知っているから、こんど行ってみない?」と相手が不快に思わないように工夫して(相手と自分の世界観を壊さないように工夫して)提案してみるのがいいと思います。
双子転移は諸刃の剣で、活用しすぎると、「自分を持つ」ことができなくなってしまいます。これに注意しながら上手に共通の世界観を創っていって欲しいですね。
さいごに
3つの転移を紹介しました。
今、あなたの友達を思い浮かべてみると、どの転移が関係していそうですか?
私は彼女に対しては「鏡転移」が関係していて、友人に関しては「理想化転移」や「双子転移」が関係していそうだなと思います。
皆さんも、親しい友人との間柄を今回の”転移”をキーワードに分析してみるのも面白いと思いますよ。