犯罪白書を読み解く 性犯罪者の再犯率
さて、今回のテーマは「再犯率」です。
今回は結論から先に書きます。
痴漢は5年以内に 36.7% が再犯する
盗撮は5年以内に 28.6% が再犯する
それでは、次のページから具体的な数字を見ていきたいと思います。
5年経過時点での性犯罪再犯率
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再犯調査対象者の総数1,484人のうち,裁判が確定してから5年経過時点での再犯ありの者は307人で,全再犯率は20.7%でした。この20.7%というのは、暴行とか万引きといった、性犯罪以外も含まれた統計です。
そのうち,裁判が確定してから5年経過時点での”性”犯罪再犯ありの者は207人で,性犯罪再犯率は13.9%でした。
しかし、これらの20.7%や13.9%という数字は、じつは実態よりも低く出てしまっています。
重い性犯罪を犯した者は、懲役5年以上となって、裁判確定から5年以内に再犯することはできないためです。再犯したくてもできない人が、この統計では「再犯していない優等生」として扱われてしまっています。
性犯罪者を全員懲役刑にしなければ、30~50%の再犯率になると思います。
その根拠として、次の図からは犯罪内容ごとに(類型別に)見ていきます。
性犯罪 類型別の再犯率
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性犯罪者類型別に再犯率を見ると,上のとおりです。
一見すると「痴漢と盗撮の再犯率が高い」と思うかもしれませんが、先ほど説明した通り、そういうわけでもありません。
これは裁判確定から5年以内での再犯の統計です。懲役5年以上になった場合、5年たっても刑務所の中にいるため、物理的に再犯不能なのです。
仮に懲役5年以下だとしても、懲役の期間は再犯ができないですから、再犯率自体は低く出てしまう可能性があります。
ですから、比較的実刑となりやすい、強姦、小児わいせつ、強制わいせつは、その点も考慮してこの図を判断しなければいけません。
つまり、強姦、小児わいせつ、強制わいせつは、刑事罰があるために、再犯率が低く抑えられているといっていいでしょう。
では、刑事罰が緩い、痴漢・盗撮の場合はどうでしょうか?
これが今回のブログの一番のポイントだと思いますが、痴漢・盗撮の再犯率は、
痴漢は5年以内に 36.7% が再犯する
盗撮は5年以内に 28.6% が再犯する
となっています。
かなり高い数字に驚きませんか?
痴漢や盗撮は、ほとんどが不起訴か執行猶予となり、実刑となっても短期です。
なので、この統計は実際の再犯率に極めて近いものが出ていると思います。
いつ再犯しているか(再犯期間)
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性犯罪再犯があった者について,再犯が可能となった日から再犯までの期間を類型別に見ると,6-4-4-5図のとおりです。
再犯が可能となった日から再犯までの期間というのは、執行猶予者については調査対象事件の裁判確定日から,懲役刑となり刑務所に入ってから出所した受刑者については刑事施設を出所した日から、それぞれ最初の性犯罪再犯の犯行日までの日数ということです。
図の見方ですが、
具体的には,性犯罪者類型ごとに,再犯期間の短い者から順に左から並べ,
全体の4分の1番目に当たる者の再犯期間がオレンジ色の箱の左端
真ん中に当たる者の再犯期間がオレンジ色の箱の中の太線
4分の3番目に当たる者の再犯期間がオレンジ色の箱の右端
で示されています。
オレンジ色の箱の中には全体の約半数の者が含まれます。
痴漢型の再犯期間は非常に短く,287日時点で半数の者が性犯罪再犯に及んでいます。
他の性犯罪者類型では,半数の者が性犯罪再犯に及ぶまでに500日程度が経過しています。
痴漢だけが早期に再犯してしまう傾向にありました。
どうして、痴漢だけは再犯が早いのでしょうか?
個人的には、痴漢は季節を問わないということも要因としてありそうです。
強制わいせつ、盗撮などは、女性が薄着である夏に多く発生します。
一方で、痴漢の場合は、根本的な原因が満員電車にありますから、一年中起きるのが特徴です。
そのあたりの違いが、再犯期間に影響しているのではないかと思います。
感想
痴漢の再犯率の高さには驚きました。
36.7%ということは、3人に1人です。
これほどまでに強い依存傾向を示すなんて…
また、再犯期間についても勉強になりました。
大体500日くらいで再犯する人は再犯するということです。
すぐ再犯しない理由は、やはり取り調べや刑事罰の苦しみが効いているのだと思います。
でも、500日経過すると、その苦しみも忘れてしまい、根本が変わっていない人は再発してしまうのでしょう。
まとめ
痴漢は5年以内に 36.7% が再犯する
盗撮は5年以内に 28.6% が再犯する
痴漢は 287日 時点で半数の者が性犯罪再犯に及ぶ
強制わいせつ、盗撮、小児わいせつは 500日 程度で性犯罪再犯に及ぶ
※すべての図は下記リンクから引用しています