POWERFUL WOMEN
まったく予期せぬ珍しい光景にでくわしたことがある。たぶん私にとって最初で最後の経験だろうと思っている。場所は近代的な横浜国際プール。当日はオリンッピック競泳メダリスト故木原光知子さん主宰の女性水泳大会開会式が行なわれていて、全国からおよそ3,000人の元気なスイマーたちが集まっていた。
この大会では毎年オープニング・イベントのスターター(よーいどんのピストルを撃つ人)として豪華なゲストをよぶのが恒例になっていて、その年はテレビでお馴染みの黒柳徹子さんが登場した。
『徹子の部屋』には同時多発テロから1年目にあたる今年9月11日に私も出演させていただいた(じつは合計3度出演させていただいた)ので、彼女とは控え室で話が盛りあがった。やがて時間となり、私は客席に座り、黒柳さんはプールサイドのスターター席にピストルを手に立った。「ピン!」という電子音とともに第1レースがスタート。
これで彼女の出番は無事終わったなと思っていたら、なんと次に黒柳さんが水中ヨガを披露するというではないか。もちろん水着姿で。さすがにビキニというわけにはいかなかったが、オリンピックで5つもの金メダルを獲得したオーストラリアのイアン・ソープ選手と同じ黒の全身タイツ水着を着た彼女は高齢者(失礼!)とは思えぬ見事なプロポーション!
プール中央で仰向けのヨガポーズでぷかりぷかりと浮かびながら木原さんと会話までこなした。この見事なまでのサービス精神に私も会場の参加者もすっかりあっけにとられた。21世紀はまさに元気な女性の時代だと実感させられた20年近くまえの出来事だ。
ちょうどその日、まるでタイミングを合わせたように届いた米経済誌「FORTUNE」10月14日号のカバーストーリーも偶然”The World’s Most Powerful Women in Business”(世界で最もパワフルなビジネス女性50人)。
さっそく読んでみると、女性重役の数はまだまだ国や地域によってかなりバラツキがあると指摘。例えば女性の7割が働いている北欧では企業の要職についている女性が多いが、西側先進国のなかでも伝統的な価値観が強いイタリアでは案外少ない。一方、フランス女性は仕事よりも全人格形成(developing their total lives)に重点を置いているという。
いかにもお国柄が出ていてなかなか面白い。男尊女卑の伝統が根強いアジアでも差がある。韓国と比べて香港、シンガポール、日本ではパワフルなビジネスウーマンが多いとあった。
それではいったい男の立場はどうなるのだと思っていたら、同日発売の米国版「FORTUNE」の表紙にあったのはなんと”The New Trophy Husband”(新しい理想的な夫像)という大きな文字だった! ひとことで言えば、米国では家事をしながら働く妻の帰りを待つ健気な夫が増えているという内容だ。
彼らは自分たちのことを”the domestic executive assistant”(家庭内重役補佐)と呼んでいるという。なんと軟弱なと思わず「渇」を入れたくなったが、近所の奥さんとトランプゲームをしているうちに浮気に走る不届き者もいるとか。思わずにやりとしたが、考えてみれば日本にも「髪結いの亭主」なんていうちょっぴり羨ましい「伝統」があるではないか。英訳すると”a good-for-nothing husband”(役立たずの亭主)となってしまって身も蓋もないが…。
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