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チョコレートの魅惑とダークサイド
ある時は貨幣、ある時は嗜好品、はたまたある時は薬として使われたものとは何でしょうか。答えはカカオ豆、そしてカカオが原料のチョコレートです。
自慢ではありませんが私は若い頃からチョコレートが大好物。今も糖尿病が悪化すると言われながら妻の目を盗んで食べています。きっかけは大学生の頃にカリフォルニアを訪れた際に初めて味わったシーズ・キャンディーズ(See’s Candies)でした。
今も変わらぬ白い箱に詰まったさまざまな形のチョコレートにすっかり魅了されてしまったのです。
シーズの歴史は1921年にカナダのオンタリオから渡って来たセールスマンのチャールズ・シー(Charles A. See)がロサンゼルスに菓子店を開店したところから始まりました。その後、サンフランシスコにも店舗を展開。1972年にはその味に魅せられた投資家ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャーハサウェイに2500万ドルで買収されて現在に至っています。
「(シーズは)私にとって夢のビジネスの原型だ。昔も今もシーズを愛しているよ」
バフェット氏は株主総会で当時を振り返ってうれしそうにそう話していました。それはそうでしょう。2500万ドルの投資に対してこれまでに30億ドル以上の収益をもたらしているのですから。さすが投資の神様です。
チョコレートといえば、やはりオーストリアやフランス、スイスなどヨーロッパの高級チョコレートを思い浮かべますが、シーズにも頑張ってもらいたいものです。
チョコレートの魅力はなんといっても一粒で世界の人々を幸せにできる不思議な力を持っていることです。映画『ショコラ』(2000年、ラッセ・ハルストレム監督、主演ジュリエット・ビノシュ)でもチョコの魔法が余すところなく描かれていました。
歴史も興味深い。紀元前2000年頃から中央アメリカで栽培されていた原料のカカオは、1492年にコロンブスによってヨーロッパに紹介され19世紀には現在のチョコレートの形になったといわれています。当初その苦みから薬として扱われましたが、砂糖を加えるこによって徐々に嗜好品へと姿を変えていったのだそうです。
1779年のある日、ルイ16世の王室薬剤師スピルス・ドゥボーヴが王妃マリー・アントワネットに薬を届けたところ苦くて飲めないと言われ、薬をチョコレートで包み込んだという逸話も残っています。
しかし、チョコレートの甘さの裏にはダークサイドがあることを忘れてはいけません。カカオ生産の現場で横行する児童労働や巨大企業・政府の腐敗です。西アフリカのカカオ農園で過酷な労働を強いられている子供たち先進先進国に住む私たちが食べているチョコレートの味を知らないのです。チョコレート好きのひとりとして、この状況は1日も早く改善してもらいたい。
ご興味のある方は、女性ジャーナリストのキャロル・オフが書いた『チョコレートの真実』をお読みになるとその現状が詳しく書かれています。
ちなみに、ちょっと古い2014年のデータですが、1人当たりのチョコ消費量で堂々の1位はドイツ(11.5キロ)、2位はスイス(10.8キロ)、3位ノルウェー(9キロ)とやはりヨーロッパ諸国が並んでいます。日本は2キロで番外。ああ、また一粒食べたくなりました。