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京大総長 ゴリラから生き方を学ぶ

受刑生活は日常からかけ離れた時間であり、自分自身と向き合い、内面的な成長を探る機会ともなります。そんな中で、私が心に深く刻まれた書籍の一つが『京大総長 ゴリラから生き方を学ぶ』です。この本は、京都大学元総長である山極寿一氏がゴリラを研究する中で見出した、人間社会に必要な生き方や哲学について語ったもので、単なる動物学の本を超えて、深い洞察と人間関係における大切な教訓を提供してくれました。以下に、私がこの本から学んだことを整理し、その影響について述べていきたいと思います。

ゴリラの社会に学ぶ共感とつながり

まず、この本が伝える最も重要なメッセージは、共感と思いやりの価値です。ゴリラは群れで生活し、リーダーシップは力ではなく共感によって築かれています。山極氏は、この事実を基に、人間社会においても、競争より協力、力による支配より共感によるつながりが重要であると論じています。受刑生活中、孤独や閉塞感が支配的でしたが、この教訓に触れることで、私は他者とのつながりの大切さを再認識しました。たとえ限られた交流の中でも、相手の話を聞き、共感する姿勢を持つことで、人間関係が和らぎ、新たな理解が生まれることを体感しました。

リーダーシップの新しい視点

受刑中において、リーダーシップという概念は一見関係が薄いように思われるかもしれません。しかし、『京大総長 ゴリラから生き方を学ぶ』は、リーダーシップとは単なる権力や命令ではなく、むしろ「弱さを見せる勇気」や「共に生きる覚悟」であることを教えてくれました。ゴリラのリーダーは他の個体を威圧することなく、その存在感と周囲への思いやりで群れをまとめます。山極氏のこの洞察は、刑務所の中で同じ境遇にいる他の人たちとの関わり方にも応用できました。状況を共有し、互いに助け合い、弱さを見せ合うことで、信頼関係が生まれることを学んだのです。

人間性を見直す機会

この本はまた、私に人間性の本質について考える機会を与えてくれました。人間は他者と協力して生きるように進化してきた生物であり、個人の利益よりも集団としての成功を重視する傾向があります。山極氏はゴリラの社会構造を観察し、その中に見られる助け合いや役割分担が人間社会の原点にあると述べています。受刑生活の中で、個々の利己的な考えが不和を生む一方で、協力や支え合いが状況を改善する様子を実感することがありました。ゴリラの自然な行動が教えてくれる「共存の美徳」は、人間が生来持っているものであり、それを忘れがちになっている現代社会への警鐘でもあると感じました。

孤独の中での自己発見

本書には、ゴリラの生態を通じて孤独と向き合うことの大切さも描かれています。ゴリラは群れの中でも一定の時間を一人で過ごし、その間に自分を見つめ直すことがあります。山極氏は、この行動が個体の心の安定や発達に寄与すると述べています。受刑生活では、孤独な時間が避けられないものですが、この本を読んでからは、その時間を自分を見つめ直す機会と捉えるようになりました。自分の弱点や、これまでの過ちを冷静に振り返り、どうすれば未来をより良いものにできるかを考える時間として積極的に活用しました。

「人間らしさ」とは何か

山極氏が繰り返し述べているのは、「人間らしさ」の探求です。ゴリラとの比較を通じて、彼は人間が他者を思いやり、共に生きることで本来の力を発揮する存在であることを示唆しています。受刑中、この「人間らしさ」を失わずにいることは非常に困難でしたが、この本の教えが心の中にある限り、私はその価値を忘れることなく過ごすことができました。些細な行動であっても、他人に優しく接し、自分を含めた全体を思いやることで、環境がわずかにでも良くなることを実感しました。

最後に

『京大総長 ゴリラから生き方を学ぶ』は、単なる動物学の知見を超え、深い哲学的な洞察を含んだ本です。山極寿一氏の研究を通じて学んだ「共感」「つながり」「人間らしさ」は、受刑生活という特殊な環境においても、心の支えとなり、自分自身を見つめ直す助けとなりました。この本を通じて得た教訓は、これからの人生でも大切にし、自分や周囲の人々とのより良い関係を築くために活かしていきたいと強く感じています。

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