BRCA陽性乳癌に対する対側乳房への予防的放射線療法に関する介入研究を研修医川端先生が紹介してくれました!
今週の総救カンファでは、2年目研修医川端先生がBRCA陽性乳癌の術後患者に対する対側乳房への予防的放射線療法の介入研究に関する論文を紹介してくれました。
スライドを抜粋して紹介します。
まずは背景知識について丁寧に説明してくれました。
アンジェリーナ・ジョリーがリスク低減乳房切除術を受けたことが話題になりましたね。
症例が重要ですがここでは割愛します。
BRCA陽性早期乳癌患者の健側乳房に対する予防的放射線療法に関する介入研究があることがわかりました。
いつもお世話になっているThe SPELLのはじめてシートを使って批判的吟味です。
ちなみに、日本のガイドラインでは乳癌の標準化学療法は下記のようになっています。
BRCA陽性乳癌の健側乳房に対する予防的放射線療法は過去に行われたことがなく倫理的懸念が大きいこともあり、今回はランダム割り付けではなく患者の意向に基づいて介入群と対照群の割り付けが行われています。
介入群でtriple negative型が有意に多く、ホルモン受容体陽性型やHER2陽性型が有意に少ないという背景の違いがありますが、これは介入群に不利になる違いと考えられるため、介入の効果を過大評価することにはつながらないと考えました。
結果
Primary Endpoint:対側乳癌の発生
HR 0.175 [95% CI 0.038–0.8011]
多変量解析は行われていません。
追跡期間の中央値が58か月という点は、より長期の追跡で発生する場合もありlimitationになるのではないかというディスカッションがありました。
非ランダム化、非盲検試験という研究デザインや長期成績がまだわからないこと等のlimitationはありますが、新たな有効な予防介入の確立につながり得るエビデンスを作ったという意味で意義の大きい研究だと思いました。
対側乳房切除に伴うQOL低下を回避できる予防方法はないのかという患者にとって切実な疑問を取り上げて、新しいエビデンスを紹介してくれました。
聞き手の基礎知識が乏しいことを前提に必要な情報を盛り込み、研究の意義を解釈するうえで必要となる背景情報もよく調べられていましたし、非ランダム化介入試験というやや難しいデザインについてもよく理解して解説できていたと思います。
まだ確立されていない治療や予防についても最新の情報をフォローアップしていくことは重要ですね!
当科では研修医のEBM教育に力を入れています。今後も成果を共有していきます。