❖読書:科学者とあたま(寺田寅彦)
私が尊敬する物理学者寺田寅彦氏が昭和8年10月に書いた随筆だ。
物理学者に共通して言えることなのだが、物理を極めようとすると最終的にある哲学に到達するようだ。
凡人の私には到底辿り着くことのできない境地なのだろうが、極めた人の言葉はそれを読む人の心を打つ。
科学技術の進歩とともに人は何もかもを制御できる能力を手に入れたと勘違いし始める。しかし、宇宙で起きている様々な事象について、人間が確立している物理学で説明できるのは5%程度だと聞く。
要するに残りの95%程度のことはわからない、知らないのだ。
宇宙には人類が知らない物質がある。
と言うか、人類は宇宙のことを殆どわかっていないし、知らないのだ。
そのような状態で人類は何でも知っているような顔をして地球上に存在している。地球から見ると、いつ絶滅してもいいような生物なのかもしれない。
以前、ある宇宙物理学の本を読んで驚いたことがある。
この世界の力は電磁気力・重力・強い力・弱い力に分類される(らしい)。
強い力?弱い力?素粒子物理学の話をしておいて、力の強弱か?
付け加えるように、暗黒物質?暗黒エネルギー?SFか?ダークマター???
私の頭脳は既にショートしている。
そんなことを考えていた時に思い出したのが、寺田寅彦氏の随筆だった。
「頭の悪い立派な科学者」、この言葉が全てを物語っている。
このご時世、何かと評論するのは学者の役割となる。そして、それを損得勘定で捌こうとするのが科学商人となる。
既得権益と損得勘定、それがある限り科学の発展はないだろう。
しかし、今の日本はそれとは全く逆のことをやっている。それが現実だ。
今後、人工知能が日常生活により身近となり、現実と仮想現実の境目が曖昧になる利便性優先の社会が到来するのだろう。
それが間違っているとは言わないが、人間のアナログな脳が騙されかねない事態が発生するかもしれないことを念頭に置いて、寺田寅彦氏の言葉を忘れないようにしなければならないと痛切に感じている。
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