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#出版社社員が選ぶ本 6月 桜桃忌「太宰治作品、私なら…」新人編集K編
こんにちは!
ご無沙汰しております、青月社です🌝
#出版社社員が選ぶ本
6月テーマは「太宰治作品、私なら…」です。
桜桃忌はもう過ぎてしまいましたが、
新人編集Kからのご紹介をお届けします。
Instagramもよろしくお願いいたします。(ほぼ同じ内容ですが…)
#📕📗📘📙
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鵜飼哲夫=編
春陽堂出版(2020)
『逆行』
著✒️太宰治
初出:「文藝」1935
「盗賊」のみ、初出「帝国大学新聞」1935
📕『芥川賞候補傑作選』
編/鵜飼哲夫
春陽堂書店(2020)
「蝶々」の中で主人公の老人は、死に際にあって「蝶々が見える」のだとうそぶく。何が食べたいかと問われて「あずきがゆ」と答えたのは、かつて自分がそんな老人の姿を小説で描写したことがあったから。
つくづく小さな男だなと思う。自分がほんとうに欲しいものなどわからないのではないだろうか。他人からどのように見られるかばかりを気にして、自分自身で自分が収まるための型を用意しておいてから振る舞ってみせる。
結局窮屈になるんじゃないの、そんなふうに思ってしまうのだが。
この「逆行」で第一回芥川賞の候補作となりながらも、ついぞ受賞することは叶わなかった太宰。
選考委員の川端康成の講評に対して「小鳥を飼い、舞踏を見るのがそんなに立派な生活なのか。刺す。そうも思った。大悪党だと思った。」この一節はとても好きだ。馬鹿馬鹿しくて、痛快で、そして、滅茶苦茶であることをわかっている。でも私だって、自分を真っ当に非難してきた人になど、その真っ当さゆえに腹が立って仕様がない。刺されても知らないぞ。刺されないだけよかったな。こんなどうしようもない私をさらに正論で責めたてるあなたは、大悪党に決まっているのだから。
読みすすめることをやめないようにと私の袖を掴むのは、いつだって太宰の、その人としての弱さゆえの色気だ。(新人編集K)