1.3 関数の連続性と変動性

後藤憲一『現代科学における数学概説』(共立出版、1981)の勉強ノート。

前回


[1] 関数

関数$${y=f(x)}$$
独立変数 $${x}$$
従属変数 $${y}$$
定義域 独立変数$${x}$$の取り得る範囲
値域 従属変数$${y}$$の取り得る範囲
実数値関数 値域が実数(定義域は問わない)
複素数値関数 値域が複素数(定義域は問わない)
実関数 定義域と値域が実数
複素関数 定義域と値域が複素数
1価関数 1つの$${x}$$に対し1つの$${y}$$
多価(n価)関数 1つの${x}に対しn個の$${y}$$
($${n}$$)変数関数 $${y = f(x_1, x_2, \cdots, x_n) = f(\bm{x})}$$

工学教程・微積分[1]の対応箇所では初等関数の一覧と各々の定義が書かれているが、数学概説ではまだ無限級数を扱っていない為か、書かれていない。初等関数の一覧は、代数関数、超越関数等の用語と共に複素関数の章で掲載される。折角複素数を第1章から導入しているにも関わらずそれを活かせていない構成だと感じる。

[2] 実数値関数の連続性

区間$${I}$$で定義された実数値関数を考える
$${x \to a}$$で関数$${f(x)}$$が極限値$${b}$$に収束する$${\lim\limits_{x \to a} f(x)=b}$$とは
$${{}^{\forall}\varepsilon > 0, {}^{\exists}\delta > 0   \mathrm{s.t.}   |x-a| < \delta \Rightarrow |f(x) - b| < \varepsilon}$$
左極限が$${l}$$に収束する$${\lim\limits_{x \to a-0} f(x)=l}$$とは
$${{}^{\forall}\varepsilon > 0, {}^{\exists}\delta > 0   \mathrm{s.t.}   0 < a-x < \delta \Rightarrow |f(x) - l| < \varepsilon}$$
右極限が$${r}$$に収束する$${\lim\limits_{x \to a+0} f(x)=r}$$とは
$${{}^{\forall}\varepsilon > 0, {}^{\exists}\delta > 0   \mathrm{s.t.}   0 < x-a < \delta \Rightarrow |f(x) - r| < \varepsilon}$$

$${x \to a}$$での極限値が$${x=a}$$での関数の値に等しい、$${\lim\limits_{x \to a} f(x) = f(a)}$$となる時、$${f(x)}$$は$${x=a}$$で連続
ある区間のあらゆる点で連続な関数はその区間で連続

Weierstrassの定理 有界閉領域で連続な実数値関数は有界で、その領域内に最大値と最小値を取る

中間値の定理 閉区間$${[a,b]}$$で連続な実数値関数$${f(x)}$$は、その区間内で$${f(a)}$$と$${f(b)}$$の間の任意の値を取る

関数の上極限・下極限が出てくるが、イマイチ説明が容量を得ない。$${\sin(\pi/x)}$$が$${x \to 0}$$で上極限が$${1}$$、下極限が$${-1}$$であるという具体例は分かり易いが。任意の$${\varepsilon}$$-近傍を考えても1つの値に関数が収束しないが、そこで関数が取り得る範囲の上限、下限ということだろうか?

区分的連続 区間を有限個の小区間に分割した時、各小区間の内部で関数が連続で、各分割点で右極限と左極限が存在すること。
区分的滑らかもここで定義されるが、$${C^n}$$級関数という概念が導入されるのは1.4で微分が導入されてからなので、構成がやや美しくない。

一様連続 連続の定義に用いた極限の式で、任意の$${a}$$に対して共通の$${\delta}$$が取れること。
連続の直後でもなく一様連続が必要になる場面の直前でもなく、ここで定義される理由はよく分からない。ただの連続ではなく一様連続が重要な役をすることについては1.8 [2]の最後の注とあるが、そこにあるのは関数の級数の一様収束の話であり、末尾で関数の一様連続の重要性も級数と同じくAbelが示したとあるだけである。一様連続の重要性はRiemann積分可能性を論じる上で重要になる為、本来ならRiemann積分を扱う1.7のどこかを参照するように書くべきである。

有界閉領域で連続な関数は一様連続

[3] 実数値関数の変動性

有界関数 値域が有界な関数 ←Weierstrassの定理より先に書け
(狭義、強い意味の)単調増加関数
(狭義、強い意味の)単調減少関数
単調関数

有界変動 区間を小区間に分割し、差分の絶対値の和を取った時、任意の分割に対し有界であること。即ち$${\sum_{k=1}^n |f(x_k) - f(x_{k-1})|}$$が発散しないこと。また、これの上限を全変動と言う。
有界変動な関数は有界
有界な単調関数は有界変動

Jordan分解 有界変動な関数は2つの有界な単調増加関数の差で表せる

$${x \to a}$$で$${f \to \infty ,  g \to \infty}$$の時
$${f}$$は$${g}$$より低位の無限大: $${f/g \to 0}$$
$${f}$$は$${g}$$より高位の無限大: $${f/g \to \infty}$$
$${f}$$と$${g}$$は同位の無限大: $${f/g}$$と$${g/f}$$がどちらも有界

$${x \to a}$$で$${f \to 0 ,  g \to 0}$$の時
$${f}$$は$${g}$$より低位の無限小: $${f/g \to \infty}$$
$${f}$$は$${g}$$より高位の無限小: $${f/g \to 0}$$
$${f}$$と$${g}$$は同位の無限小: $${f/g}$$と$${g/f}$$がどちらも有界

$${f}$$と$${g^n}$$が同位の無限大(無限小)の時、$${f}$$は$${g}$$について$${n}$$位の無限大(無限小)

Landauの記号
$${f=O(g)}$$ $${x \to a}$$で$${|f/g|}$$が有界、$${f}$$は高々$${g}$$の位数
$${f=o(g)}$$ $${x \to a}$$で$${|f/g|}$$が無限小、$${f}$$は$${g}$$より低い位数

[4] 複素領域と複素関数

領域という語はこれ以前に度々使われている為、この項はより前に配置した方が良いかもしれない。但し、$${n}$$重連結等は留数解析で重要になってくるので、より後の複素関数の章に配置するとしても、それはそれで合理的。

連続曲線 点集合$${z(t) = x(t) + iy(t)  (a \leq t\leq b)}$$
$${x(t), y(t)}$$は$${[a,b]}$$で定義された1価連続関数
閉曲線 $${z(a) = z(b)}$$
Jordan曲線(単一閉曲線) ($${a,b}$$を除いて)$${t_1 \neq t_2 \Rightarrow z(t_1) \neq z(t_2)}$$
Jordan弧 $${t_1 \neq t_2 \Rightarrow z(t_1) \neq z(t_2)}$$
連結 点集合$${D \subset \mathbb{C}}$$の任意の2点が、$${D}$$に属する曲線で結べる時
領域 幾つかの離れたJordan曲線を境界とした内部の連結した点集合
閉領域 領域にその境界線上の点を付加して得られる集合
単一領域 1つのJordan閉曲線に囲まれた領域
単連結(単一連結) 領域$${D}$$内にJordan曲線を描くと、常にその内部も外部も領域$${D}$$の内部
$${\bm{n}}$$重連結 $${n-1}$$個の互いに他の外部にあるJordan曲線と、それら全てを内部に含む1つのJordan曲線との間にある領域

その後、複素関数の極限や(一様)連続、有界関数等の定義が為される(大体が言葉の上では実数の場合と同じだと軽く流される)が、複素数の微積分を扱うのは複素関数の章になってからなので、ここに配置するべきかは謎。

参考文献

[1] 時弘哲治:東京大学工学教程 基礎系 数学 微積分、丸善出版、2015

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