1.2 極限と収束条件
後藤憲一『現代科学における数学概説』(共立出版、1981)の勉強ノート。
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[1] 数列
数列 自然数$${\mathbb{N}}$$から実数$${\mathbb{R}}$$や複素数$${\mathbb{C}}$$への写像、$${\{a_n\}}$$と表す。
部分(数)列 数列からその一部を選び作った数列(順序入れ替えはしない)
数列$${\{a_n\}}$$が極限値$${a}$$に収束するとは
$${{}^{\forall}\varepsilon > 0, {}^{\exists}N \in \mathbb{N} \mathrm{s.t.} n \geq N \Rightarrow |a_n - a| < \varepsilon}$$
となることで
$${\lim\limits_{n \to \infty} a_n = a}$$
と表す。
複素数列の場合、これは実部、虚部それぞれの収束と同値。
数列が収束しない時、その数列は発散すると言う。
定発散 $${ {}^{\forall}E>0, {}^{\exists}N \in \mathbb{N} \mathrm{s.t.} n \geq N \Rightarrow |a_n| > E}$$
不定発散(振動) 定発散ではない発散
点列 数列$${\{a_n\}}$$の各数$${a_n}$$に対応する点$${P_n}$$を並べたもの
極限点 極限値$${a}$$に対応する点$${P}$$
数列の収束・発散と点列の集積点の個数は対応する。これ故か、数列の部分列の収束する値を集積値と言う(1つとは限らない)。
数列が収束$${\Leftrightarrow}$$点列の集積点が1つ
数列が定発散$${\Leftrightarrow}$$点列に集積点が無い
数列が不定発散$${\Leftrightarrow}$$点列が複数の集積点
有界な無限実数列$${\{a_n\}}$$はBolzano-Wierestrassの定理より、収束する部分列を持つが、複数の部分列が存在し、それらの極限値が異なるということはあり得る(不定発散する場合)。この時、これら極限値のうち最大のものを数列の上極限と言い、$${\varlimsup\limits_{n \to \infty} a_n}$$や$${\lim\limits_{n \to \infty} \sup a_n}$$と表す。最小のものは下極限で、$${\varliminf\limits_{n \to \infty} a_n}$$や$${\lim\limits_{n \to \infty} \inf a_n}$$と表す。上極限や下極限は集合$${A_n = \{a_k | k \geq n \}}$$の上限、下限の極限値としても定義出来る。実数列の収束は上極限と下極限が存在し、かつその値が一致することと同値である。
数直線上の点集合で考えると、上極限は最も右の、下極限は最も左の集積点に対応する。
単調増加数列 $${a_1 \leq a_2 \leq a_3 \leq \cdots}$$
単調減少数列 $${a_1 \geq a_2 \geq a_3 \geq \cdots}$$
狭義単調増加数列 $${a_1 < a_2 < a_3 < \cdots}$$
狭義単調減少数列 $${a_1 > a_2 > a_3 > \cdots}$$
数学概説で実数について述べられた時に実数の連続性としてDedekindの公理とCantorの公理の何れかを仮定し、数列の収束関係のものは定理としてのみ扱われたのは、数列に関して言及するのが1.2節になってからで、1.1節段階では数列が導入されていなかったからであろう。
[2] 収束の判定条件
Cauchyの判定条件
実数列$${ \{ a_n \} }$$が収束する
$${\Leftrightarrow}$$ $${{}^{\forall}\varepsilon > 0, {}^{\exists}N \in \mathbb{N} \mathrm{s.t.} n,m \geq N \Rightarrow |a_n - a_m| < \varepsilon}$$
この条件を満たす数列をCauchyの基本列、Cauchy列、基本列と言う。
前回書いたように実数の連続性を示す公理の1つとしてArchimedesの公理+Cauchyの収束条件という設定の仕方があるので、これは特に目新しいことではない。
数列の収束はここで扱われるが、級数$${\Sigma_n a_n}$$の収束は1.8 無限級数になってからである。級数の収束条件は正項級数の収束(一般の級数の絶対収束)で7つぐらい出てくるが、数列の収束判定はこれ以外に特に無い。大学の講義では数列の収束と級数の収束が連続して扱われることもあるが、数列と級数は異なるので、混同しないようにする。例えば$${a_n = 1}$$は数列としては収束しているが級数としては$${+\infty}$$に定発散している。
参考文献
[1] 時弘哲治:東京大学工学教程 基礎系 数学 微積分、丸善出版、2015