逆風を追い風に――「アンダラらしくなった」29thアンダーライブ
乃木坂46、29th「Actually…」のアンダーメンバーによるアンダーライブ@ぴあアリーナMM。
何かと雑音がうるさい中での久々のライブだったが、終わってみればメンバー・観客共に充足感に溢れていた。
前々回@武道館は4期合流前、かつとにかく曲をかけるだけ。
前回@立川はややキャパが狭く(わずか2000人の立川ステージガーデン)、卒業の蘭世が主役だった感覚もあり。
そして今回である。約1万人のぴあアリーナMMにて久方ぶりのフルキャパ開催となったものの、チケット余り気味。コロナ以降場を盛り上げていたスティックバルーンもなくなっていた。前日にはアンダーメンバーにもいい影響を与えたであろうきぃちゃん(北野)が卒業。
はて、例のスキャンダルでもしやボイコットが?大丈夫か乃木坂?との不安もありながら迎えた初日だったが、
「アンダラらしいアンダラ」
となったことでとりわけ、メンバーの楽曲やグループへの感情がパフォーマンスで、MCで直に伝えられたのが、月並みだけどエモい。
加入直後にコロナに見舞われレギュラー番組で覚えてもらうチャンスも少なかった新4期もガンガン目立つポジションに立ち、それらをまあやが柔らかく、ザキさんがしっかちとフォローしてまとめ上げる。
「思い出セレクション」で各人思い入れのナンバーで全員センターを演じる機会もあり、3日間でメンバー・観客ともボルテージを上げに上げてこられたのが、最終日の異例のダブルアンコールにつながったのだろう。セトリは以下の通り。
楽曲 センター
M1 狼に口笛を 佐藤楓
M2 自惚れビーチ 弓木
M3 My rule 金川
M4 13日の金曜日 佐藤楓
(MC、思い出セレクションへ)
M5 命は美しい 向井
M6 マシンガンレイン 矢久保
M7 Route246 金川
M8 その先の出口 吉田
M9 何もできずそばにいる 山崎
M10 三角の空き地 黒見
M11 サヨナラの意味 北川
M12 女は一人じゃ眠れない 和田
M13 自由の彼方 佐藤璃
M14 何度目の青空か 中村
M15 君の名は希望 林
M16 制服のマネキン 弓木
M17 世界で一番孤独なLover 松尾
M18 ガールズルール 伊藤
M19 Sing Out! 阪口
M20 帰り道は遠回りしたくなる 佐藤楓
MC
M21 不眠症(楽日は行くあてのない僕たち) 和田・阪口
M22 Against(楽日はWilderness World) 佐藤楓
(VTRと衣装替え)
M23 届かなくたって 佐藤楓
M24 ここにいる理由 弓木
M25 嫉妬の権利 金川
M26 あの日 僕は咄嗟に嘘をついた 和田
M27 口ほどにもないKiss 阪口
M28 風船は生きている 佐藤璃
M29 錆びたコンパス 山崎
MC
M30 新しい世界 佐藤楓
アンコール(1日目から順に)
M31 シークレットグラフィティ―/人間という楽器/人はなぜ走るのか?
M32 春のメロディー/涙がまだ悲しみだった頃/扇風機
M33 乃木坂の詩(千秋楽だけ直前に即興アカペラで「きっかけ」)
M34 (千秋楽だけダブルアンコールで「ハウス!」)
◆つめ跡残したメンバーたち
1・2期は2人だけ、いつの間にか期別だど4期が最多の8人になっていたアンダラ、3期はもちろん4期の進化も著しい。
とりわけ、やんちゃん(金川)である。
My ruleでセンターに立ったかと思えばRoute246でも持ち前のスタイルが映えるパンツ衣装でクールに踊りぬき、嫉妬の権利でもアンニュイな表情を見せつける。届かなくたって…でもフロント位置にいるし、思い出セレクションでセンターのバックで踊っている機会が多い。彼女のスタイルの良さと、ソツのないダンスに惹かれた観客、多かったと思う。
昨年某誌に何やらをすっぱ抜かれたり、同期の選抜組とはかなり差がついてしまったのも事実だが、選抜メンに及ばなくとも彼女のスタイルとパフォーマンスは信頼を回復するに申し分ないのは間違いない。
やんちゃんの他にも、松尾・中村・弓木・黒見とスタイルに恵まれたメンバーがかなりいいポジションをもらっていると感じられた。
命は美しいなんか、カバーした葉月は頑張っていたが後列で松尾・金川・中村・黒見が踊っていては前3人(向井・矢久保・璃果)とのプロポーションの差が可哀想なほどだった…
その中の1人の麗乃ちゃん、思い出のナンバーには「何度目の青空か」を選んでいたが、上手い。掛け値なしにこのメンバーの中で一番歌える。彼女に歌唱メンのイメージが全く無かったのでこんな武器を隠していたなんて!と耳福の「何青」ソロだった。
他にも研修生時代にセンターで披露させてもらった経験から選んだという弓木の「制服のマネキン」、ファン時代に神宮球場で見ていた「三角の空き地」のダンスに挑戦したくろみん、加入後初の配信ライブでまいやんのバックに立てた美佑ちゃんの「世界で一番孤独なLover」どれも解釈一致すぎた。特に美佑ちゃんのポテンシャルは末怖ろしい。これでまだ10代であるが、映像の仕事も増えてくれば選抜常連も夢ではないのではないか。
あるいはあやティー(吉田)が選んだ「その先の出口から」もよかった。表題曲でもアンダー曲でもない、デジタリックなサウンドのこういう曲最近あんまりなかったので嬉しい!3日目のWilderness Worldもこの系譜で、ちょっと懐かしい。同じデジタルサウンドでもActuallyみたいなのの方が最近は流行るんだろうが、こういうのの方がアイドルらしい。
◆適材適所
ダンス、生歌、MCでの場のさばき…それぞれのメンバーの得意がよくわかる「適材適所」目立ったな…とも思ったのが今回のアンダラ。
思い出セレクションでセンターでなくても出番があったり、曲のフォーメーションを見るにかなりスキル適材適所で持ってきたなという印象。
まずバリバリダンサーとして活躍していたのが座長のでんちゃん、それに珠美・やんちゃん・まあや。でんちゃんは「届かなくたって」だけでなくAgainstにWilderness worldでもセンターで、憂いを込めた表情の見せ方も巧み。
でんたままあやの3人はアンダラ終わった翌日にはCDTVで欠席メンバーの代打を務める程信頼されている。最高のユーティリティープレイヤー達だ(だからこそ便利屋扱いで終わらせず彼女たちの努力に報いたまえ事務所よ)。
一方、歌の方は主に矢久保ちゃん・葉月・瑠奈ちゃんが担っていただろうか。矢久保ちゃんはもともと声がキュートだし、MCでもたまにボケつつ、利発に場を回してくれていた。小柄だけど全力でぴょんぴょん跳ねているので、双眼鏡で見なくても彼女だとすぐわかる。意外にできるじゃんと思ったのが北川悠理ちゃん。正直言うとあまり歌・ダンスができるイメージが無かったのだが、「サヨナラの意味」もしっかり歌えていたし、踊りも丁寧で横着してそうなとこが全くなく、ほわほわした言動の裏にある真面目さを再認識させていただいた。
こんな下級生たちを適切にフォローしてまとめていたのがまあやとザキさん。MCで誰かがグダッたところにザキさんが的確にツッコミを入れてフォローするのは最早漫才の如くだし、初日のMCでグダらせておいて千秋楽には「アンダーライブで東京ドームに行きたい」と名言を残したり、「これ以上時間押すとアフター配信の時間が足りなくなるから怒られる」と楽屋ネタを交えながら客席からのリクエストでアカペラで「きっかけ」を歌う流れを作ったりしてしまうまあやの頭脳センスも天才的ではないか。メンバーにつられてザキさんが涙ぐむのも珍しい。
昨今の不祥事もメンバーの耳に入っていない訳はないだろう。ファン側もアンダラに通う程のコアなファンなら当然知ってるはずで、アンダーメンバーの境遇を考えると彼女達のファンこそボイコットに走りそうで、初日に空席が目立ったのもそのせいか?との不安もよぎった。
それらネガティブな逆風を追い風に変えて、3日間をやりきったメンバーへは素直に称賛を。ありがとう。スティックバルーンも無くなってたけど拍手だけでダブルアンコールまでにこぎつけたのもこの16人のおかげだ。
スタ誕祭は延期になっちゃったけど、その後のバスラ、そして30th…と次のステージへ坂道は続いていく。