アメリカ日本酒輸出に重要なプレイヤー「ディストリビューター」の役割と特徴
前回、アメリカの酒類の流通規定である、Three-Tier System(スリー・ティア・システム)についてまとめました。
Three-Tier Systemにおいて、つまり、アメリカへの日本酒輸出において、重要なプレイヤーである、卸売業者(ディストリビューター)の役割とその特徴をまとめてみようと思います。
ディストリビューターの役割とは
アメリカ国内での流通は大きく以下の流れです。
①輸入業者または製造者
↓
②卸売業者(ディストリビューター)
↓
③小売業者(販売店やレストラン)
Three-Tier Systemにより、
原則、①は②のみ、②は③にのみ販売ができます。
つまり、酒造メーカーがアメリカの消費者の元に日本酒を届けるためには、ディストリビューターの力なくしては届けることができないため、どのディストリビューターと契約を結ぶかが、アメリカマーケット開拓において大変重要であると言えます。
Three-Tier Systemについて詳しくはこちら↓
ディストリビューターの種類と特徴
ディストリビューターは大きく、
1. 日本食卸
2. 日本酒専門卸
3. ワイン・スピリッツ卸
に分けられます。
それぞれの特徴と主要ディストリビューターを挙げてみます。
1. 日本食卸
このカテゴリの主要なディストリビューターとして、JFC, Mutual Trading, Wismettac Asian Foodsが挙げられます。
これら日本食卸の特徴としては、日本食レストランや小売店へのリーチのしやすさと考えられます。アメリカのほとんどの日本食レストランや小売店は、この3社のどこかとは必ず日本食の取引があると言っても過言ではありません。その販路を頼り、日本酒を販売するという方法があります。
しかし、日本食卸の営業からしたら、日本酒カテゴリは数ある内の日本食の一部でしかなく、さらにその中の特定ブランドを売る、となると営業のマインドシェアを上げることに苦労します。また、ロサンゼルスのようなアメリカの中でも日本食が流通している地域の話にはなりますが、日本食レストランや小売店には日本酒は当たり前のように置いてあり、そのポジションの奪い合いとなっているのが現状です。
2. 日本酒専門卸
このカテゴリの主要なディストリビューターとして、World Sake ImportやSake Tengokuが挙げられます。
これら日本酒専門卸の特徴としては、営業が日本酒専門で営業をするため、知識もあり、リソースを割くことができます。そのため、日本食卸と比べるとレストランや小売店への具体的な提案やサポートも可能になります。
一方で、まだ日本酒専門卸は中小企業が多く、スケール化は難しい部分はあります。
3. ワイン・スピリッツ卸
このカテゴリの主要なディストリビューターとして、Southern Glazer's Wine & SpiritsやWinebowが挙げられます。
これらワイン・スピリッツ卸の特徴としては、日本食マーケット以外のレストランや小売店に展開できる可能性があることです。西洋文化、東南アジア文化など、まだまだ日本酒が開拓しきれていないマーケットに展開ができる、まさにブルーオーシャンです。
一方で、ワイン・スピリッツ卸の営業にとっては日本酒は未知なことも多く、営業しやすい商材ではないと考えられます。そのため、営業の教育に時間をかける必要があります。
今回は、卸売業者(ディストリビューター)の役割とその特徴をまとめてみました。
アメリカの酒類市場における日本酒の市場規模は0.2%程度という調査もあります。個人的な見解としては、その狭いパイの中で酒造メーカー同士がポジションの奪い合いをしていては、今後の日本酒業界に明るい未来はないと考えています。そのため、今後、日本酒業界は、1社1社でアメリカ市場で戦うというよりは、業界全体で戦い、パイを広げることが重要であると考えています。例えば、日本食レストランで競合メーカーの日本酒が取り扱われていたら、スイッチを積極的に狙いに行く、というよりは、別のカテゴリの日本酒を提案することにリソースを割くべきだと思います。または、まだ日本酒自体が扱われていない日本食以外の文化に提案しにいくべきだと思います。
もちろん、すでに開拓されているところから開拓する方が簡単です。ゼロから開拓することは時間もお金もかかると思います。ただ、上述の通り、パイを奪い合うのではなく、パイを広げることをしないと、酒造メーカー同士が共倒れになると思っているので、そこは私も考え抜き、できることからやっていこうと思っています。
最後までお読みいただきありがとうございました!
参考:
chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.nta.go.jp/taxes/sake/yushutsu/chosa/pdf/r03.pdf
↓続編「ディストリビューター調査」もぜひ↓