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憎しみの先に/散らかる文 青紗蘭
憎しみというのは、一時的に爆発的な力を与えることがある。人によってその力の出方は様々だが、確実に何らかは与えられる。
しかし、その手招きに応じてしまえば、自身の一番、悍ましい姿を見続ける中で生きていかねばならない。
良心だけが、人間であることを思い出させてくれる。
研ぎ澄まされた殺意。
憎しみは喜んでそれを目覚めさせる。
家族や仲間が痛めつけられる姿に泪を零す。
震える拳から血が滴り落ちる。
人質にとられたものために何も出来ないでいる私を。
憎しみは歓喜する。もっと染まれと。
私は、そんな場所で生まれ落ち生きていたことがある。
罪悪からのもっともらしい理由をかき集める私の姿をみて。
憎しみは強く頷き味方だという。
しかし、激しく増していく憎悪は、一番大切なひとを失ったときどうでもよくなった。
ずっと一緒にいたかったひとの悩みに気が付けなかった。
憎悪なんてものに囚われていなければ、わかったはずだ。
優しさとは何か教えてくれた、あなたのようであったなら。私は、あなたを死なせずに済んだかも知れない。
この世で憎しみに囚われて生きても荒み、
ほんとうが見えなくなるだけだ。
過去に起きたことは今ではないのだ。
それに囚われているうちに、最も大切なものを失う。
私は、憎しみと対峙した。
私は、自身が成そうとしていたことを隠さず認めた。何の理由も付けず。ただ、静かにそうした。
憎しみは、あらゆる手段で私に揺さぶりをかけた。今まであったことをぶちまけはじめ、憎しみの顔は怒気に満ちていた。
憎しみよ、すまなかった。
私の意図を汲んで、お前は産まれた。
全てを引き受けてくれたね。
お前は、私の醜さすらも抱きしめた。
私は、お前がいてくれたから良心を失わずにすんだんだ。ありがとう。
私が産んだ憎しみよ。私と生きよう。
だが、しばらくお眠り。
随分辛い思いをさせてしまったから。
憎しみの連鎖は私が断ちきったから。
もう、お眠り。
私の中でそうであったものが、微笑み眠りに落ちた。
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