夏の美術室
ここは、とある高校の部室内。
俺が今いるこの空間には。俺しかいなくて1人の世界だ
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椅子に座り、出した絵の具に俺が持っている筆を付けて。
目の前にある真っ白なキャンパスに色を塗る。適当に自分が好きな色を何も考えず
塗られていく真っ白だったハズのキャンパスは色を得る。でも、テーマも無ければ形にもならない。
『……ふぅ』
描き終えた作品を見て。俺は、額に流れた汗を袖で拭う。
今は8月。とても、熱気だっていて。もう半分もないペットボトルに入った水を飲んだ
「あーー!!また、描いてる……」
耳元で叫んできたのは、俺の先輩で。
綺麗な黒髪の、笑うと可愛くて。俺とは友達とかって関係ではなくて。
ただ、描いてるといつの間にか現れて。初めて部室内で勝手に描いていたら。俺の絵を見て、褒めてくれた先輩だ。
その先輩に俺は、ハハッ。見て下さい。と先程描き終えたものを見せた。
先輩は「おお〜!!流石だね。」なんてキラキラした目で褒めてくれる。
作品を見れば黒、赤、青、オレンジと主張の強い色ばかりが塗られている。
それを見た先輩は俺の顔を見たあと。
先輩の額に手を指さして
「色、付いてるよ」
と指摘された。「えっ!?」と声に出しながら。美術室にある鏡を確認すれば。右目の下頬に、黒の絵の具がビッシリ付いていて
『うわっ。恥ずかし。』
ゴシゴシと、持っているタオルで拭いた。
そんな事をしていれば
キーンコーンカーンコーン とチャイム音が鳴り響く
「あー。鳴っちゃったねー。また、明日だね。後輩くん」
笑顔を向けられる。そんな笑顔に鼓動の高鳴りを覚えながら
『そ、そーすね!!』
俺は先程の恥ずかしさで、たどたどしくそう返す。でも先輩は変わらず笑っていて。また明日ね。と言ってくれた。
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今日も、学校へ向かう。
『おはよーございまーす』
そう言いながら門をくぐって向かう先は美術室で。
また、何も無いキャンパスの前に座って。今日は久しぶりに人でも描こうかと。思う。
鉛筆を持って、描いていけば……
「綺麗な女性だね」
『うわっ!?』
右隣から聞こえてくるのは、先輩の声で。俺はビックリして思わず椅子から転げ落ちた。
『イタタ……』と言いながら椅子を戻せば
「いやー。熱心に何を描いてるかと思えば、綺麗な女の子だったから。……ふふっ。声かけるのも忘れちゃって」
外を見れば夕焼け時で、俺は汗がガンガンと出ていた。
暑いなぁ……と思いながら持参している水を飲んで。先輩と話す
『いつの間に居たんですか……いつも突然現れるので・・・』
そう聞けば、ごめんねー。驚かせるつもりは全くないんだけどね。と言われた。
相変わらず可愛いらしい笑顔を見せてくる先輩。
「これって、誰なの?もしかして好きな人??」
と絵を指されながら質問された。キャンパスを見れば。真っ黒な髪の女性で……
先輩を見た瞬間。今でも暑いというのに。自分の中から熱が上がってくるのが分かる。
「ん?」
なんて頭に”はてなマーク”を浮かべる先輩に。俺は滝のような汗と。無意識に先輩を描いていたという恥ずかしさからか。顔を背けて
『いや、アハハッ……誰ですかねぇぇ……。』
と、言ってしまう。先輩はすっっごく気になる!!という興味津々の顔をした後
「えーだれだれぇぇ??」
なんて面白がって聞いてくる。
『なんでもッ……』
”ないです。”と言おうとした時。
キーンコーンカーンコーン とチャイムが重なる。
今日がまた1日終わる。だから、俺は荷物をまとめて。
面白がった先輩も。
「じゃあ、また明日ッ!!」
と微笑みながら手を振ってくれる。俺は手を振った後、美術室を出た。
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