1週間

「君は誰だ?」

顔の見えない誰かが窓の外で僕を見つめていた。
見知らぬ人にその問いかけをするものの、その人はその声が聞こえてなかったのか無視をする。

「・・・お前こそ……誰なんだ?」

やっと返事が帰ってきたと思えばソイツは質問をしてきた。
顔は見えない。その問いかけをしてきたやつは少し不思議そうな顔をした後。僕を見つめどこかに消えてしまう。

「なんだったんだ・・・。」

ぼーっとヤツがいたハズの窓を眺める。
次の日になると窓から視線を感じた。窓に目を向けると昨日と同じヤツなのか顔は見えないがソイツはそこにいた。

「そんな所で何してるんだい?」

今日はソイツが僕に問い掛けてきた。
何をしているか?と聞かれ僕は少し戸惑った。

「・・・なぁ、そんな所に居ても楽しくないぞ。
ベッドの上なんかに居るんじゃなくて、外へ出よう」

そう。僕の居る所はヤツが言う通りベッドの上だ。
気付いたらベッドの上に居た。どうして自分がここに居るかも覚えていない。

「外へ出たくても身体が重くて動かないんだ」

精一杯足を動かそうとしても動かせない。ソイツはその言葉を聞いて微笑みながらこう言った

「可哀想になぁ。じゃあ、お前は一生そこにいろよ。
俺はお前とは違う。あははっ!!!」

急に馬鹿にしたような態度をとったソイツは、その後すぐに消えてしまう。
指を指しながら僕をバカにしてきたヤツはまた次の日もやってきた。

「また来たのか?」

それだけ聞くと「憐れんでやろうと思ってな〜」と意気揚々に伝えて来る。
そんな時間があればどこかへ消えうせて欲しい。僕はそんな事を思った。

「足があるのに動かないなんて、あーーー、なんて可哀想なんだ!!」

ソイツは嫌味ったらしく僕にそう言った。

「怠慢なんじゃねーの?ほんとは動かせるのに動かさない。」

馬鹿にするような言い方でそんな事を言われ、流石にカチンと頭に来る

「なッ!?動かそうとしても動かせないんだよ!!!」

大きな声で叫べば。ソイツは馬鹿にした態度から一転して、急に動かなくなったかと思えば

「ならよ、動かせるようにしてやるよ。」

真面目な声と共に、ソイツは膝にまず意識を集中させて。ゆっくりと身体を動かしてみろ。と僕に指示をだしてきた。
一瞬、その変わりように驚いたがソイツの言う通りに足を動かしてみれば本当に少しだが身体が動いたのだ

「う、動いたッ!!」

それだけ言えば「そうだろ〜?」と自信満々気にソイツは言うんだ。
その次の日から足を動かす特訓が始まった。
1日1日と、時間が過ぎて。アイツと出会って6日目になった頃には
順調に身体を動かせてベッドから起き上がり立てる所までになっていた。

「やったぁぁぁ!!!立てた!!!」

2人でガッツポーズをしながら大いに喜んだ。
ソイツはまだ窓の外で。

「僕も、窓の外へ行きたい」

そんな事を言えば、ソイツは少し黙った後

「・・・ダメだ。」

首を振りながら断ってくる

「なんでだよ」

黙ったまま、ソイツは消えてしまった。
どうして?なんでアイツは消えてしまったんだ?僕は立ちながらそんな疑問を残して。次の日になってしまう。

アイツは相変わらずいつものようにやって来た。

「昨日はどうして僕に何も言わずに行ってしまったんだ?」

昨日の疑念をぶつけると。ソイツは何も言わずにこの部屋にある扉を指さした。

「昨日、外へ行きたいと言っただろ。
その扉の先だ。お前が1人で歩いて来い」

扉には少し距離がある。昨日頑張って立てるようになった僕には歩くというのはキツい距離で。
扉を見つめ、少し歩く練習をしてからの方がいいんじゃないか?と思った

「難しいな・・・」

少し弱音を吐けば。ソイツは僕を見損なったような目をして見てきた。

「弱音なんて吐くな。立って、お前の意思で歩け!
ゴールは見えてる。早くしろ!」

この時、初めてソイツの顔が見えた気がする。
怒りに満ちたような顔で怒られた。
なんなんだ……と思いながら重たい体を無理矢理起こし壁伝いになんとか扉の前へ行く。
先程まで話していたアイツの顔も遠く。窓も遠くに見えている

「扉を開け。そこがゴールだ」

ソイツはそれだけ言うと僕の前から消えてしまった。
物凄く重たい扉を精一杯押して開けば

「っ……目を覚ましたのね!?」

そこには見知った女性。母親が居た。
呼吸はしづらく、上手く焦点が合わない。

「あぁ……良かった。ほんとに良かった・・・」

涙を流す母親に理解が追いつかないまま、視点をズラすと。
看護師や医師がその後やってきた。
落ち着いてから、母親が話をしてきた。

「貴方は、寝てる時に火事に巻き込まれたのよ。
その時にね、消防員の方が救助に入ったの。貴方がまだ家に居たから。
貴方の救護に駆け付けてくれた消防員の方は無事に貴方を見つけて火事の中から助けようとしてくれた。
そんな時に、運悪く家の柱が彼の足に倒れてきて・・・そのまま火傷を負って動けなくなって死んでしまったと聞いたわ……。」

【この人にお礼を言いましょうね。】そうやって見せてきたのは。
僕が夢の中で最後に怒鳴りつけた彼の笑顔の写真だった。

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