第20話 自称やくざの方に連れてかれる【夢夢日本二周歌ヒッチ旅 回顧小説】
新潟西インターまでちあきに送ってもらった。料金所の手前で降ろしてもらう。ここでヒッチハイク。
198台中29台目。
栄パーキングエリアまで。学生の時自転車で東北をまわったことがある方。新潟は0m地帯が多いという。—50cmのところもあるという。
新潟の地名に「潟」が多いのは、新潟は海抜が低くて湿地が多いという証拠でもある。
「旅をするのはいいことだよ。社会人になっても役に立つから。順応できるんだよ。」
という言葉をいただいた。
30台目。東京の大泉の方。36歳小島さん。栄パーキングから高崎まで。
(この辺りだと東京の人も仕事に来てるんだな。)
営業でまわっている途中だという。お仕事は下水道とかの機械のオーバーホール(点検)。
小島さんもやはり旅をしたことがある方で、岐阜から青森まで行ったことがあり、15年前にバリにサーフィンしにいったこともあるそうだ。かっこいい!
出身は宇都宮で、なんと宇都宮の藤原さんが働いているミラノ食堂に行ったことがあるそうだ!縁があるなあ。それだけ有名な店なんだな、「ミラノ」は。
また、小島さんはプロミスのCMの音楽を作っている友達がいるそうだ。ああいうCMのメロディづくりを専門の仕事にしている人がいるということを改めて知った。
それも大物ミュージシャンとかじゃなく、一般人に近い人がやっているということが意外だった。
なかなか話していてあきない。
それに、なんと小島さん、高崎でいったんぼくを降ろすと、
「仕事終わったら上里まで送っていくよ。」
と約束してくれた。
なんて優しいんだ!ということで小島さん2ラウンド目は、上里サービスエリアまで。
31台目。トラック。上里から諏訪湖まで。
「嫁さんはナンパでゲット。」という大阪出身の新川さん。
新川さんはトラックの排気ブレーキの仕組みを教えてくれた。新川さんが教えてくれるまで知らなかったが、トラックは重いので排気ブレーキを使うそうだ。
排気を抑えてエンジンの回転を抑えるという。知らなかった!
新川さんは下仁田インターで一般道に降りると諏訪湖に行く途中温泉に連れて行ってくれた。
これで温泉6回目。その後結局松本まで乗せて行ってくれた。
すごい地味な情報だが、新和田トンネル脇に湧き水が出ていて、その自然水をよく汲んで持ち帰るそうだ。
松本に着くともう空は暗くなっていた。もうここで寝る場所を探すしかない。
ぼくが着いたのは、どこかの無人駅だった。いや、もう暗くなっていて本当はどんな駅なのかわからない。そんなところだから街明かりだってないから周りの様子もあまりわからない。
木のベンチがある小さな駅の入り口にぼくは寝ることにした。木のベンチに荷物を降ろしていると、
「おう、兄ちゃん!何してんだ?」
駅前に止まったバンから降りて、おっちゃんがこちらに声をかけてきた。
(ん?呼び止められたぞ。なんかやばい雰囲気がしないでもない。)
「ここで寝ようと思って。」
「ここで寝るのか?なんだったらおじさんについて来なよ。」
(・・・。どうしよう。安全なのか、安全じゃないのか、微妙なところだな。でも、これも神様のお導きだな。行ってみよう。)
「い、いいんですか?」
「おう、乗ってけよ。」
ぼくはバンに乗せてもらった。仕事の後輩の方をおろしたついでにぼくを乗せた形だ。
「にいちゃん、どっからきた。」
「東京です。」
「何で旅してるんだ?自転車か?」
「ヒッチハイクなんですよ(自転車ここにないんですけど)。」
「そっか、そりゃすごいな。おじさんな、やくざんなんだよ。」
「は、はあ。そうなんですか。」
(これはまずいな。でも悪い人じゃなさそうだな。どっちかっていうとチャーミングなおっちゃんという感じがする。それに自分からやくざって言う人がいるのか?)
そしてこの夜はそこからものすごく長い夜となるのである。
つづく