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第140話 初めてのライブハウスでのライブと学祭でのライブ【夢夢日本二周歌ヒッチ旅 回顧小説】

11月初旬のイベントは、まずは夢有民牧場の奴隷仲間などを集めた飲み会だった。

「奴隷仲間」とは、牧場でただで働かされていたスタッフという意味だ。

奴隷仲間だけでなく、沖縄で仲良くなったメンツのうち、東京で会える人達を集めて、しかもぼくのホームの酒場、teteで飲み会。

翌日は、teteでライブ。

日本中を回ってきたうえでのteteでのライブだ。

二日酔いでのライブなのでだいぶチャレンジングだったが、当時は飲みながら歌うなんてこともざらだった。

そもそも旅先では「昨日飲んだので歌いません」とか「飲みながらは歌いません」とか、そんなこと言ってられない。

全てはその場その場の流れに委ねていかねばならない。

そういったことが普通だったから、前日に飲み会が入っていたとてライブがあることに特に違和感は持たない。

しかもteteはホームだから、顔なじみの人向けのライブになるという安心感もある。

そしてその3日後には大塚のライブハウス「CAVE」でのライブだ。

teteでのライブはCAVEに備えてのリハーサルにもなる。

ライブハウスでのライブはこれが初めてと言ってよい。そこは慎重に行きたい。

来るお客さんは、日本二周の前まではぼくの歌を聴いたことがないような人たちばかりだから、初めて聴くという人が多い。

どうしても力が入る。

ぼくが歌ってきたのは居酒屋やカフェ、ゲストハウスなどだから、ライブハウスというものがよく分かっていない。

(こういうところで人気が出てくるとビッグになっていけるのかな。)

ライブハウスには楽屋というものがあった。楽屋というものにちょっとあこがれもある。

そこに入るというだけでなんだか特別感がある。

この日は4バンド出演で、そのうちぼくを含めた2組は弾き語り。

(こういう時ってどうふるまえばいいんだろう。)

挨拶だけはとりあえずちゃんとして、さぐりさぐり、周りの人たちの様子を見ながらの他の出演者と会話をする。

他にもリハーサルでの音チェックなど、新鮮でたまらない。

転換込みの1組60分の持ち時間。

けっこうたっぷりある。

でもぼくはそれなりにライブ活動をしてきたから、小さくなってしまうということはなく、むしろ、「ぼくはそれなりにやってきてます」感を出していたと思う。

空気に飲まれてはライブにならないから、その為に気を張っていたというのもあるが、実際大きな会場でライブをしたことがあったから、ライブハウスだから困ったということはなかった。

ロケットさんがブッキングしてくれたから、ロケットさんに委ねておけば安心というのもあった。

ぼくにとって一番気がかりだったのは、「東京で初めて聴く人たちがどうぼくの歌を聴いてくれるか」ということである。

さらに、あえてライブハウスでやるということは、それなりのパフォーマンスがあるのだと聴き手には期待されるだろう。

ハードルが上がり、ぼくの鼓動はバクバクしていた。

高校の同級生や学生時代の友達も来てくれた。

歌を通してぼくを知り、ファンになってくれた人たちと違い、同級生などは歌を歌う以前のぼくを知っている。

「あいつが歌を歌っている?そういうやつだったっけ?どんな歌やってるんだろう。」

そんな思いを持ちながら聴いてくれたと思う。

それは何ともやりにくい。

音楽をやっているぼくだけを見て、「いまいちだな。」「おれの趣味じゃないな。」と思われるならそれでおさらば、仕方のないことだが、以前からの友達ならおさらばとはいかない。

ぼくへの評価はプライベートを通してもついてまわることになる。つきあいは続く。

(どうかぼくの歌が心に響きますように。でも、やるべきことをやるしかない!今の自分を精一杯表現するしない。それがぼくなのだから!ベストを尽くして響かないなら、それは仕方のないことだ!)

いつものことだが、そんな風にぼくは自分を鼓舞した。緊張する自分をなだめた。

そして本番は緊張しながらもちゃんと歌い切り、初めて聴いてくれた人たちにもよい感想をもらえた感じだった。

しかし、ライブハウスで歌うというのは何ともやりにくい。

お客さんとの距離がすごく遠く感じるし、すごく無機質に感じる。

四角くて黒くて無機質な会場、無機質なステージ。

フロアとの高さの差。

照明もまぶしい。

そういうことも緊張に拍車をかけた。

歌もしゃべりもかたかったと思う。

(やりにくいけど、こういうのに慣れていかないといけないんだよね。)

こうして初めてのライブハウスを終えた。

その翌日には宇都宮にある大学の学祭でのライブがあった。

宇都宮のユニオン通りで歌っている時に聴いてくれた学生が、「ぜひ今度の学祭で歌ってください」と言ってくれたことが本当に実現したのだ。

時期的にきっとすでに学祭のプログラムはできあがっていただろうに、よくねじ込んだと思う。彼の実現力はすごいなと思った。

実際、プログラムにはのってない、ほんの2,3曲を歌わせてもらう即席のライブだったが、ぼくとしては学祭に招待させて歌わせてもらうということは、かなり嬉しいこと。

そして、野外ステージで100人ほどの前で歌うのは心地よかった。

こうしていくつかのライブを終え、ぼくはひと段落した。

(バイトしなきゃな。)

つづきはまた来週

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