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スポーツを止めるな! サッカー選手たちのスポンサーシップアクティベーション

球団やクラブ、リーグなどのスポーツ団体の収入源は、入場料収入や放映権収入、スポンサー収入、マーチャンダイジング収入、会員収入、スタジアム飲食の手数料収入などに分けられるが、その中でもスポンサー収入は、非常に大きな収益源とみなされている。あるチームでは、クラブの収入の6割を占めているほどだ。

「スポンサー」の2面性

スポーツチームやリーグは、自らの持つ資産を活用しスポンサー企業に対してマーケティングの場を提供してきた。この場合の「スポンサー」はいわゆる広告主としての意味合いが強い。

一方、チームやリーグだけでなく、スポーツ選手たちも、自らの活動を継続していくために、企業や個人などのスポンサーからサポートを受けてきた。この場合の「スポンサー」は支援者として扱われることが多い。

このことから「スポンサー」とは「広告主」と「支援者」という2つの側面があると言えるだろう。

今回は、その2面性から、スポーツ選手と企業とのスポンサーシップの特性に触れてみたい。

スポーツ選手と企業の契約

スポーツ選手と企業がスポンサー契約を締結する場合、企業はスポーツ用品のメーカーであることが多い。その契約内容はさまざまだが、基本的には、練習や試合で使う用具類の提供を受け、さらに場合によっては契約金として金銭の提供を受ける。また人気選手であれば、イメージキャラクターとして採用されテレビCMに出演したり、オリジナルの商品が販売されるケースもある。※選手と企業との契約は、個人とチームとの選手契約内容と抵触しないように配慮する必要がある。

サポートを受けるスポーツ選手の主な義務は、物品や金銭の提供を受ける対価として、その企業の商品を露出することである。選手自身がメディアとなり、試合を観戦するファンの前でプレーしたり、メディアに出演することで、その企業や商品をアピールし、また自らのSNSを活用してその商品を紹介する活動を行っている。

しかし、現在は新型コロナウィルスにより、スポーツイベントは、中止・延期を余儀なくされており、選手は自らがメディアとなる主要な機会を失い、広告主であるスポンサーは、そのメリットを享受することが難しい状況にある。選手たちは、サポートしてもらっている企業に対して、自らの義務を果たせないことに心苦しさを感じているはずだ。

危機の中で生まれた現場からのスポンサーシップアクティベーション

そんな中でTwitterで始まった面白い取り組みがある。

FootballBootsChallenge」だ。

サッカー選手をはじめとする関係者たちが、普段着用しているスパイクを紹介し、「FootballBootsChallenge」というハッシュタグとともに、次の選手を指名していくリレー形式のされていくというもの。

4月5日に、現在JFLに所属するヴェルスパ大分の用具係の阪本遼太さんから始まったと思われるこの企画は、アマチュアからトップカテゴリーの選手に至るまで、数多くの選手が思わぬ形で商品を露出する機会を得て、瞬く間に広がりをみせている。

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選手とスポンサー企業との関係性を、ビジネスライクに説明しようとすると、「広告主」という側面だけの契約書上の話にとどまってしまう。しかし、実態はそうではない。スポーツ選手と企業のスポンサー契約には、明文化されていない「支援」「応援」という側面がある。スポンサー企業は「選手を応援」し「選手の人柄や出身地や生い立ち」なども加味してサポートすることが多い。また、選手たちもその気持ちに応えようと、企業のサポートに報いる姿勢を持ちながら、相互に関係性を構築している。

このような契約書上には表出することのない「人情」で関係が作られている側面があるのがスポーツ界におけるスポンサー契約なのだ。「コロナに負けるな!」というアスリートたちの叫びは、もしかしたら、「人情の関係性だけは絶対に崩さない」という意思表示を込めているかもしれない。

試合を開催できないことにはビジネスが成立しないという弱みが露呈したスポーツ界。しかし裏を返せば、このような人と人、人と企業の強い結束が、いま試されているのはないか。弱みが強みに変わった時、それは日本のスポーツ文化は、地面に強固な根を張ったと言って良いのかもしれない。

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せがわたいすけ(瀬川 泰祐)/久喜市議会議員・スポーツライター・編集者ほか
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