【漫画レビュー】むっつりのためのバラード。『生徒会にも穴はある!』
あらすじ
まずは本作のあらすじを紹介しようと思う。
1話完結型の4コマ漫画なので、あまり必要ないとは思うけれど。
あらすじはいたってシンプルだ。基本的に4コマギャグ漫画なので、大事なのはストーリーよりもキャラクターだろう。早速主要キャラクターを見ていきたいと思う。
主要キャラクター(生徒会メンバー+僕の好きなキャラクター1名)
水之江 梅
本作の主人公。
国語バカで小説など国語に関わることを話し始めると少しキモくなること、理系科目が壊滅的なこと以外はかなりマトモ寄り。しかし行動力があるため、たまに突き抜けた行動に出る。
これは梅くんがメスガキ系後輩男子に座薬を入れようとしているシーンである。決してやましいシーンではない。ほら、医療行為だから。
古都吹 寿子
むっつりスケベ系生徒会長。
学業では学年一位だが基本科目のどれも学年1位ではないなど、大体何でも80点~90点でこなせるオールラウンダーとして描かれており、本人は他の生徒会メンバーのように尖った能力がないことを気にしている。ただし、保健体育は100点満点を取っている。むっつりだもの、当然だわな。
内心がエロなだけできわめて善性の人なので、普通にかわいいし真っ当に主人公とラブコメをしている。……してるよね? できてるかなぁ……?
あと実は結構重めな女。
そんな彼女のエロスの理は「背徳」。
善性であるがゆえに妄想に対して罪悪感を抱き、性欲を抱く自分に対して自罰的になりながらも欲望を抑えきれない。というか、自罰の感情すら性欲をブーストさせるガソリンにしてしまう。
色欲四神の一角「背徳のウロボロス」とは彼女のことである。
尾鶏 たん
メスガキ系男の娘。オスガキと呼ぶにはあまりにも可愛すぎて困る。
生徒会での役職は広報。コンピュータ関連に強く、SNSで多くのフォロワーを持つインフルエンサーでもある。
男だから良いだろって作者が開き直ってるのか、全力で乳首を描写しにくる※。あの……ちょっと膨らんでるんですけどほんとに男ですか……? 筋肉がなくてふにょってしてるだけだよね……?
メスガキ系というだけあって周囲を煽り散らかす癖があり、そのせいでよく照井さん(次に紹介する生徒会メンバー)にぶっ飛ばされている。ぶっ飛ばされると分かっていても煽るのをやめないのは、もはや狂気と紙一重の信念を感じる。
ところでこいつ、中等部なのがあまりにも欲望すぎる。欲望に正直で大変よろしい。
そんな尾鶏のエロスの理は「嗜虐」と「被虐」。
もはや説明するまでもないだろう。
わからせ!
色欲四神の一角「虐の陰陽」とは尾鶏のことである。
照井 有栖
恐ろしい番長系かつ純真清楚(系)ガールな先輩。生徒会での役割は会計。
普通この見た目で「怖いキャラ」ってなったら腹黒いとかそういう方向性を想像すると思う。しかしその実「怒ると怖いだけで、ちょっとコミュ障だが根はまっすぐでかわいい人」である。
照井さん本人はこれを「威厳と親しみやすさを両立した良い先輩ムーブ」だと思ってやっている。普通に怖いよ。
コミュニケーションの齟齬で相手を怖がらせてしまうだけの可愛い先輩だったら良かったのだが、普通にちゃんと怖い人でもあるのが話をややこしくさせる。「怒ると怖い」の「怖い」が尋常ではないのだ。その恐ろしさたるや、本気になった時には脅迫などのアウトな行為も辞さない程。
また、煽り屋の尾鶏が関わるとシンプルに暴の化身となるため、余計に怖いイメージが蓄積されていってしまう。
照井先輩の可愛さはどんどん掘り下げられていくので、ぜひ皆さんの目で確認していただきたい。本当なんです、とても愛らしい人なんです。信じて。信じてない人は黙って22話まで見て!!!!!!!!!
彼女はなんとなく色欲四神という感じはしない。エロくはあるけど。
なんとなく眷属っぽい。
陸奥 こまろ
不憫ロリ巨乳。作中一の純真。会長とは違う意味で(境遇的に)重い女。
警戒心が薄く、小動物のように梅に懐く。
数学の能力がずば抜けて高いが、それ以外はかなりポンコツであり「あまり大事なものを扱わないから」という理由で庶務に割り当てられている。
この作品はカバー裏の表紙で各キャラクターの性事情(主に自慰)を掘り下げて描写するという、冷静に考えれば狂ったことをやっている(ほんまに少年誌か……? 性教育だからオッケー!)のだが、こまろだけは風呂事情の描写に留まっている点は特徴的だ。
こまろの描写が風呂に留まっているということは、キャラクターを立てるために自慰シーンを考えるほど性に忠実な作者が真剣に考えた結果「こまろはそういうことをしていない」という結論を出したと推測できる。「そういうエロス」に対してもストイックだ。
つまり、彼女の理は「無垢」なのである。
各キャラクターの性事情を赤裸々に描く漫画だからこそ、彼女の無垢性は強調・証明されている。この点において、こまろはその他の一般的な清楚系ヒロインとは一線を画している。言ってしまえば清楚系ヒロインの清楚さはブラックボックス、証明されていない闇の中なのだから。
色欲四神と同等の力を持ちながら、その土俵に上がることなく別次元に引きずり込む……それが陸奥こまろという女の異能なのだ。陸奥こまろは絶対に汚してはならないエロスの聖域として屹立しているのだ。
エロによって汚された瞬間にその輝きを失う、しかし汚したくもあるという、非常に脆いエロの矛盾螺旋。その渦の中に、我々は閉じ込められてしまった。もう逃げられんぞ逃さんぞ。
それはそれとして。エロとか恋愛を一切抜きにして、ただただ幸せになってほしい。お前のおかげで優しい世界が作られているんだこまろ……。
平塚 敏深
欲望に正直な先生(29)。
酒とタバコはもちろんやってる。主人公を生徒会に誘った理由も「留年されると自分のボーナスに影響が出るから」。……見た目通りやな! ズボラで色々なことに手を抜きがちだが、生徒の事に関してはちゃんと仕事をしているし、めちゃくちゃ生徒のこと好きなのが分かる。特にこまろとの関係性は非常に良いのでぜひその目で見てほしい。
そんな平塚先生のエロスの理は「退廃」。
なんというかこの人に「大人のエロス」みたいな言葉は似合わない。そんなに上品ではない。この人を表すには1文字で事足りるのだ。それ即ち、
「性」
これである。上品とか下品とかではないのだ。芸術というわけでもない。ただただ性がそこに在る。興奮するしないの向こう側、虚空の彼方に佇む「性」に、我々の時間は静止するのだ。
色欲四神「退廃の偶像」とは彼女のことである。
個人的に好きな子:鳳条 鷹香
生徒会メンバーではないが、個人的にとても好きなキャラなので少しだけ触れたい。私は高身長女性フェチなところがある。呪術の東堂のようにケツに拘るわけでもなく、胸の大きさにも拘らず、ただただ背の高い女性という属性を好む。
そしてこの鳳条さん、なんと驚異の身長193cm。もう好き。
彼女は子供好きであり、マスコットキャラなどのかわいいもの好きでもある。しかし、その外見が影響して子供に怖がられてしまうというかわいそうな一面をもつ。かわいそうでかわいい。
お化け呼ばわりされる(学校の七不思議にもなっている)のはかわいそうだけど、この身長差で話しかけられたら普通に怖いと思う。背だけでなく全体がデカいため、威圧感が凄いのだ……。
そんな「怖い」彼女の可愛いところを語りたいと思う。
それは髪留めだ。花の髪留めをしているのがあまりにもポイント高い。
キリっとした顔立ち、がっしりめの肩幅など「かっこいい・強い」イメージの中に咲く一輪の花。この髪留めは一にして全。彼女の「それでも可愛いものが好き」という心がたった一つの髪留めの中に燦然と輝いているのだ。
この髪留め一つで彼女の全ての要素がキュート属性に反転していると言っても過言ではない。なんという恐ろしいキャラデザか。もう完全に一目惚れだった。
ニコニコ漫画の最新話をチラ見した時がちょうど鳳条さんの話で、それが一気買いのきっかけになったので、生徒会メンバーではないが紹介させてもらった。
作品の読み味・魅力
下ネタ、生徒会要素、4コマ漫画であることなどの共通点から『生徒会役員共』を連想する人も多いだろう。実際、最初の読み味は割と似ている。
しかし、上記2作品は全くの別物だ。似ているのは上澄みの読み味だけ。読み進めていけばいくほどこの2作品の歩む道は分かたれていく。
そもそもの大前提として、この2作品はジャンルからして違うと言える。『生徒会役員共』は下ネタエロギャグ漫画(+青春漫画)、『生徒会にも穴はある!』はギャグエロ漫画(+青春漫画)というのがしっくりくる。
つまり『生徒会にも穴はある!』はあくまでもエロ漫画なのである。
『生徒会役員共』の下ネタはあまり性欲を感じさせずに、笑わせることに特化しているシーンが多いのに対し、『生徒会にも穴はある!』は笑わせつつも興奮させに来ている、そんなイメージだ。
『生徒会役員共』は会長がオープンな思春期エロガールだったが、『生徒会にも穴はある!』の会長はむっつりだ。
諸君に問いたい。あっけらかんと下ネタを叫ぶ女子をエロいと感じるか? 君の股間は反応するか? 見方によってはエロいだろう。そういう女子によって性の地平が開拓された過去を持つ者も少なくないだろう。
だが……!
下ネタに内心では過敏に反応しつつ、悶々と顔を赤らめ、体温の上昇を感じている少女。この方が性的ではあるだろ(個人の感想です)。
「恥」というのはエロにおいては最上級の重要問題である。この差が読み味に与える影響はあまりにも大きい。
……と。「エロ」を散々強調してきたが、実のところ『生徒会にも穴はある!』に対して私の体はそこまで反応しない。
たまに反応するけど。1枚絵とか、単行本おまけページに描かれている作者の欲望全開のイラストとか。
僕自信の年齢が上がったことが影響しているのだろうか。私の中で本作は「スケベだけど、劣情には至らないギリギリのライン」を綱渡りしているという良い塩梅の作品になっている。このギリギリが癖になる。定期的にラインを越えるが、それはそれで癖になる。エロのマインスイーパー。
ただし、これは「大人の私」の楽しみ方だ。
この作品の本質はそこではない。大事なことを忘れてはいけない。
「心に住まう中学生」の存在を。
「心に住まう中学生」はいつだって発情しているということを。
大人になって変わったからといって、中学生の自分が完全にデリートされたわけではない。ヤツは心の片隅で目立たないように潜みながら、今か今かと大人の私に刃を突き立てんと機を伺っている。
『生徒会にも穴はある!』を開く。
今だ! と中学生の自分が私を刺す。
ああ、あの頃が蘇る。
深夜アニメのお色気に心震えたあの頃が……。
大人の僕の股間は相変わらず反応していない。
だが、心。心の
心に住まう中学生と大人の僕の間という、ふくよかな胸の谷間にも似た心地よい空間の中で、エロに揺蕩う。それがこの作品の持つ真の破壊力なのではないかと思う。
そんな『生徒会にも穴はある!』は現在7巻まで好評発売中。週刊連載なだけあって、割と短めのスパンで続刊が出てくれるのもありがたいポイントだ。皆もぜひ買って読んでくれよな!
ちなみに、このリンクから買ったとしても私には一切お金は入ってこない。気軽に自分の好きなサイトで購入いただければと思う。
一人でも多くのむっつりが性の地平線の向こうにたどり着くことを祈って、このレビューを締めたい。鳳条さんサイコー!