WizダフネCβTレビュー
FinalFantasyやドラゴンクエストといったRPGは、実はWizardryというゲームがその開発のキッカケになっていることは、RPG好きにはご存じの方も多いと思う。
ドラゴンクエストの生みの親とWizardryの生みの親の歴史的対談はこちら。
そのWizardryシリーズの最新作が、今年スマートフォンでリリースされる。
「Wizardry Variants Daphne」だ。
伝統的なWizardryらしく、一人称視点のダンジョンRPG。基本無料でプレイできる。
そのクローズドβテストに参加できたので、所感をメモしておきたい(製品版リリース時には変更されている点もあると思います)。
公式ページはこちら。
◆まずは総評。
めちゃくちゃ面白かった。
「あの有名ゲームの完全新作が基本無料ゲームとしてスマートフォンに登場!」って聞いたらほぼほぼ「何だソシャゲか……解散!」ってなるこの時代に、よくぞここまでのクオリティでWizardryをスマートフォン向けの基本無料ゲームに落とし込んだものだと感動するレベル。
スマートフォン向け基本無料ゲームのお約束(ガチャとかキャラを重ねて凸とか)を踏襲しつつも、「WizardryというダンジョンRPG」の雰囲気を極力崩さずに作ってくれたことに、愛を感じている。
シナリオについては公式から言及を止められているので何も言えないけど、そりゃあ止められるよね、というシナリオと演出だったのでローンチがめちゃくちゃ楽しみ。
DRPGが好きなら、リリースされたらぜひやってほしい。
ここからは細かな点についての感想。
◆難易度調整が絶妙。
Wizardryというと、
「最初の敵が出てくる部屋でPTキャラのレベルを3くらいまで上げれてからがダンジョン探索開始ライン」
というくらい序盤の難易度が鬼なことで有名なんだけど、そこは現代のWizardry。
「敵の攻撃はめちゃくちゃ痛いけど全力で立ち向かえばなんとか勝てる」という敵の強さのバランス、道中のレベルデザインが、終始絶妙だった。
20数時間のプレイ時間のほとんどを、どっぷりのめりこめるプレイ体験にしてくれた。
常に緊張感を持って、敵をよく見て戦略を考えないとあっという間にボコボコにされる。
Wizardryってそういうゲームだよね、ということを知っている人には楽しくもあり。
自キャラが死んだ時点で即ゲームオーバーという一方で、死亡ペナルティもそんなに重くはないので、「危険-リスク-を味わえ。」という公式の煽り文句通り。
Wizardry感を味わいたいけど難しすぎるのもやだな〜ってライトな感じの人にもオススメできる。
自分が死んだら3回まで無条件で死んだ戦闘前に戻してくれる(しかも謎に回復するときもある)ので、Wizardryではご法度の「ボスにはとりあえず突っ込んで敵の強さを見る」が、気軽にできるところがいい。
◆ガチャについて
・武器ガチャは基本的には課金必要なし
基本無料のスマートフォン向けゲームに欠かせないのがガチャ。
Wizardryダフネも類に漏れず、「キャラガチャ」と「武器ガチャ」を採用している。
Wizardryはダンジョンに潜る→宝箱を開ける→武器・防具を手に入れる、というトレジャーハント(トレハン)が楽しいゲームでもある。
今作では武器や防具は「ガラクタ」として手に入る。このガラクタが、いわゆるガチャ券というわけだ。
街に戻ってから、このガラクタ一つにつき、一つの武器や防具がランダムで手に入るという仕組み。
もちろん、ガラクタの種類は階層によって変化し、品質や強さも上の物が出るようになる。
武器や防具については、そもそものWizardryがトレハンを魅力の一つとしていたこともあり、ダンジョンに潜ればガンガン手に入る。
基本的に武器や防具に課金を強いられるバランスではないし、一応初期装備課金もあるが、βテストの範囲では買う必要はなかった。
・キャラガチャは課金もアリ(初期配布石で十分)
今作では冒険者キャラもガチャになっている。
Wizardryでは自分で冒険者を作成する、ということが一つの魅力だが、今作はゲームシステム上キャラもガチャで排出される。
キャラは「骨」アイテムからガチャ排出されるが、ダンジョンでも拾えるし、ダンジョン内の行商人みたいな人からも1000G(ゲーム内通貨)で買える。
自分は早めにPT6名を揃えたかったので初期配布石で10連分を購入したくらいで、課金しなくてもPT6名を揃えるのは全く大変じゃないと思う。
キャラにはノーネーム(コモン)、ネームド(アンコモン)、伝説級(レア)の3種に分けられていて、ネームド以上のキャラにはボイス付きセリフが用意されている。
伝説級には特殊スキルが付いており、冒険を楽にしてくれる。
しかし、排出時に金のエフェクトが出るだけで、その後の画面でレアキャラである表示はどこにも出てこない。背景が虹色になるわけでもなければ、SSRみたいなレア表示が常時出たりしない。
あくまで冒険者の一人としてパーティに組み込まれるのみである。
この仕様は大変良い仕様だと思う。
個人的な意見になるけど、ゲームで進行が難しい場面にぶち当たった時、
「やっぱりレアキャラ引かないと(課金しないと)クリアできないじゃん」
と思ってしまうところこそ、ソシャゲが一番ゲーム体験を損なっている部分だと思う。
でも、今作はWizardryが培ってきた「キャラメイクの楽しみ」を損なうキャラガチャの導入を許した反面、レア度をゲーム内表記をしないことや絶妙なゲームバランスなどにより「このキャラはレアである」をほとんど意識せずにプレイができることで、プレイ中にこれが基本無料ソシャゲ/ガチャゲーであるということを忘れさせてくれる。
レアキャラだからと言っても内部パラメータがちょっとだけ有利になる(常時MP増加とか回避アップとか)だけなので、キャラ間のレアリティ差を気にせずに冒険に集中できるのがいい。
ここにも、これまで買い切りゲームであったWizardryを愛する人々への配慮が行き届いているように見える。
・キャラガチャの残念な点
ただ、仕方ないとはいえ残念だったのは、キャラの種族・職業・性格は自分では選べない仕様になっている。
一応ネームドキャラも含めて名前を変更することができる。
また、ボーナスポイントを自由にステータスに割り振ることはできる。
これはガチャでレアキャラを出すというシステムである以上は、仕方がない妥協点だと思う。
ただし、キャラごとにバックストーリーが付いているのでそれを読むのが面白い。バックストーリーを読むと、そのキャラのセリフへの理解度が高まるので、これはこれとしてアリかなと個人的には感じた。
◆「冒険している感」の演出
Wizardryは元々一人称視点でのゲームで、没入感がすばらしいゲームでもある。
パーティを組み、ダンジョンに潜り、強敵をなんとか倒しながら、宝箱から出てくるアイテムを必死にかき集め、強い装備を手に入れて、少しずつ深部に進んでいくあの冒険感が、一人称視点によって強化されている。
今作独特の、この冒険している感とも言える演出を二つ紹介すると、
・戦闘終了後にキャラの掛け合いやパーティメンバーと一緒に歩きだすカットが挿入される
・ダンジョンに長く潜っているとキャラのグラフィックが汚れていく
という2点がすごくよかった。
・戦闘終了後にキャラの掛け合いやパーティメンバーと一緒に歩きだすカットが挿入される
Wizardryのバトルはいつだって死闘だ。
一歩間違えれば大ダメージを食らってあっさりキャラが死ぬ。
でも、だからこそ全力でぶつかって敵を倒しきれた時の高揚感が素晴らしいゲームでもある。
今作は従来のWizardryから見れば、難易度としては高くはない。
しかし歯ごたえのある戦闘のあと、こうやって手を肩においてくれる演出(しかも毎回キャラが変化する)は、一人ではなくパーティみんなで冒険をしているという感覚を演出してくれて大変良かった。
・ダンジョンに長く潜っているとキャラのグラフィックが汚れていく
ダンジョンに潜ると、キャラクターのグラフィックがどんどん汚れたものに変化していく。特に前衛職が顕著だ。
確認できただけでも3段階に分かれている。
これもまた「冒険をしている感」の演出として秀逸だと思う。
ちなみに馬小屋で泊まると体の汚れを落とせないのでどんどん汚れるが、グレードの高い部屋で休息をとると一発で綺麗になったりする。
「汚れちゃったな、一緒に頑張ってくれたもんな」と思いを重ねつつ、冒険が一区切りしたときにはグレードの高いスイートルームに泊まってキャラを労わる、そういう没入感もあるのはすごく新鮮だった。
◆マップについて
Wizardryと言えば、初っ端からピット(ダメージ床)やらワープ(別の場所に飛ばされる)やらシュート(下の階に落とされる)やらと凶悪な罠が満載のゲームだが、今作は序盤にはそういうものはない。
敵の強さはしっかりと調整されており歯ごたえがある一方で、ダンジョンRPGとして導入は優しい造りになっていて、地下2階まではチュートリアルのような感じである。
なお、ダンジョン1~2階層ごとに「ハーケン」と呼ばれる町へすぐに戻れる/町からダンジョン内にワープできるショートカットポイントが設置されており、毎回地下1階から降りていく、ということはしなくてもいいようになっている。
敵が強いので攻略したい階層に到達したころにはいつもパーティがボロボロ……なんてことがなく、スムーズに進行できたのは良かった。
◆宿屋での回復
冒険感の話でキャラのグラフィックが汚れる、という話をしたが、宿屋の話をしたい。
今作の驚くべきことは、
・タダで泊まれる馬小屋でもHP/MPが全快する
ということである。
ただし、キャラの汚れは取れないし、「虫がいた」「なんでこんなところに寝るんだ」「私にはこのような扱いがお似合いってことね」みたいな苦情をパーティメンバーから聞かされたり、たまにお金を盗まれたりする。
お金はけっこう潤沢に入っては来るものの、武器の強化などにガンガン飛んでいくので、持ち金が空っぽの時にはデメリットは何もないので活用しよう。
◆キャラ・武器の強化要素
基本無料スマートフォン向けゲームにあるあるなのが、ガチャで引いたキャラがダブった場合、これを重ねて強化する、いわゆる「凸させる」システム。
今作にもこれはあり、キャラの場合は「克己」という項目で採用されている。
冒険者酒場の訓練室で凸させると、キャラの固有スキルが解放されたりする。
また、武器の強化も同様に、ダブった武器は「合一化」という項目で凸できる。こちらはパラメータが強化されるのではなく、強化できるレベル上限が上がるシステム。
初期状態だと+5まで(つまり五回まで)強化できるのだが、ダブった同名の装備2つを消費すると、強化上限を+10に引き上げることができるようになる。
ちなみに武器の強化にはお金のみが取られる形。強化に失敗するときもあり、その時はお金が虚無に消える(パラメータは変わらず)。
◆「メンタル」パラメータが実質スタミナ扱い
今作にはいわゆるスタミナシステムがない。
いくらでもダンジョンに繰り出していくことができる。
実際序盤ではほとんど気にしたことがなかったが、キャラクター一人一人に「メンタル」という項目がある。
このメンタル、宝箱の罠の解除に失敗したり、毒沼を通過したりすると下がるシステムなのだが、序盤はほとんど下がることがない。
なぜなら宝箱の解除をするのは盗賊職のキャラばかりであり、解除に失敗してメンタルが下がりきるまえに、「もう宝箱は開けたくない」とかほざいて「宝箱の罠を恐れるようになった!」というデバフが付く事がある。
それでも盗賊か。
リリースされた際にはこのデバフは是非削除していただきたいが、それはそれとして、メインシナリオダンジョンのとある階層では、次の階層に進む道に連続で毒沼があり、そこを通過するだけで全員のメンタルが15~20ほど持っていかれるのである。
メンタルが下がるとどうなるか?「キャラを蘇生するときに失敗する確率が上がる」のである。
これはめちゃくちゃリアル感がある。ただ、これを利用し、他のサブダンジョンでは入口で20ほど持っていかれる謎の霧が設置されているし、50を切ると「もうだめだ」「無理です」とキャラがメンタルブレイクした悲鳴を上げ始める。
いちいち心を揺さぶってくる今作、マジでWizardryしていますね……。
ちなみにこのメンタルは時間経過でなければ回復しない。
クローズドベータ時点で12分で1回復なので、1時間で5回復。メンタルを半分回復するのに10時間かかる。遅すぎやしないか。課金アイテムとしてメンタル回復アイテムを売るべきだと思う。
というのも、これが実質スタミナ扱いなのかと考えると合点がいった。
これにより、メインパーティキャラだけでなく、セカンドパーティキャラも育成するという必要性も強化されていて、キャラガチャで大量の冒険者が余っている状態に意味を持たせてくれている。
「他のキャラも同時並行で育てようね」と言うことだ。
◆リリースされたときの攻略メモ
ここにはクローズドベータ時点での「これは事前に覚えておいた方がいい」ことをメモっておく。
・初回で伝説級冒険者を一人ピックアップでゲットできる際は、騎士の女王(ラナヴィーユ)がおススメ。スキルは戦闘後HP回復するやつがいい。
・できるだけ早くパーティは6人そろえるのが理想だが、途中でキャラを入れ替えても、敵とのレベル差で取得経験値が上下するので、後から加入したキャラのレベルはすぐ追いついてくれる。
・ダンジョンでNPCが死んだ際はちゃんと死因を調べる。
・主人公の戻す力は回数制限はない(たぶん)。使いまくろう
・地下2階の入ってすぐの右の部屋に居る敵は、Wiz1でいうところのマーフィさん。ここでレベル10まで上げれれば後々焦らなくていい。
・対不死系の武器は「冥刻」のガラクタから出る。それで前衛職が使い物になるまでは魔術師を多めにパーティに投入して乗り切る。
・宝箱からは武器だけではなく換金アイテムもたくさん出る。お金がない時にはそれを狙って宝箱を開け、武器のダブりは売らずに合一化に回そう。
最後に、こんな素晴らしいWizardryを開発してくれたドリコムに最大の感謝と賛辞を。
リリース、楽しみにしています。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?