「Spotifyで月間リスナー1000人を達成する方法」
ビートメーカーseekxです。
今回はコラボ回です。
コラボしていただくのは、メタルコアバンドSailing Before The Windのベーシスト/コンポーザーであり、バンド/音楽活動を行う上での有益な情報を発信されているビトクさんです。
ビトクさんも僕と同じくnoteでSpotifyや音楽配信に関する情報を発信されています。
Nevrnessというベースインストのプロジェクトでも活動されているため、ソロアーティストとしての一面も持ちつつ、バンド活動を精力的に行っています。僕とは違った観点で音楽活動の指針となる記事をたくさん投稿されています。
このnoteではこれまで、インディペンデントアーティスト向けに「音楽サブスクでの再生回数の伸ばし方」や「レーベルからのリリース戦略」といった記事を書いてきました。
ただこれは現在の僕の数字、Spotifyの月間リスナー数万/月間再生回数50〜60万回をもとに書いています。
そのため、「これから音楽活動を始めたい」「数曲リリースしたけど数人にしか聴かれない」といった活動初期段階のアーティストにとっては、参考にしづらかったかもしれません。
僕も活動開始当初は、リリースした曲が1ヶ月経っても再生回数10回のままとか、月間リスナー5人とか、悔しい経験もたくさんしました。
活動開始当初、一番リスナー数が多いタイミングで撮ったスクショ。
この後すぐに2桁台に戻ってしまいました。
当時は「Spotifyで再生回数100万回達成した方法」や「無名だけど月間リスナー10万人行った話」といった記事を見ても、自分の現在地と乖離しすぎていて、あまり参考になりませんでした。
だからこそ今回は「Spotifyで月間リスナー1,000人を達成する方法」と題し、ビトクさんと私seekxという全く別ジャンルで活動する2人の対談形式で、その方法をまとめていきます。月間リスナー100人を目指す方にとっても、参考になれば幸いです。
千里の道も一歩から。
では行ってみましょう!
リリース数を増やす
seekx:まず一番大事なことは、曲をできるだけたくさんリリースすること。曲数を増やせば、公式プレイリストへのサブミット(後述)の回数も増やせます。「どの曲がリスナーからの反応がよかったか?」という分析も正確に行えます。
ビトク:とにかくリリース数が大事なのは、間違いないです。僕のバンドSBTWは、2022年にシングルを数ヶ月おきに5曲リリースしてから、月間リスナー数が安定し始めました。それ以前のリスナー数が少なかった時期を振り返ると、単純にリリース数が少なかったです。例えば2020年は、シングル1枚しか出していませんでした。
seekx:僕も年に2〜3曲しかリリースしていなかった時期は、リリースの都度リスナー数が若干増え、またすぐに下がるサイクルでした。「このままじゃダメだな」と思い、2021年は12曲リリースしました。するとリリースして1〜2週間経っても、リスナー数が大きく下がらなくなりました。
ビトク:やはりシングルリリース連発は効果的ですよね。
seekx:考えられる要因は2つあります。1つ目は、リスナーが「このアーティストは頻繁にリリースしてるからこまめにチェックしておこう」と思うようになってくれたのかな?ということ。そして2つ目は、僕の体感ではあるのですが、Spotifyのアルゴリズム的にリリース数の多いアーティストのほうがリスナーへのオススメに表示される可能性が高い。アルゴリズムプレイリストの解説はこちらの記事が詳しいです。
ビトク:Spotifyもビジネスですから、アクティブなアーティストが優遇されるのは、当然の仕組みかなと。
seekx:単純に"曲を完成させる"という場数を多く経験したことで、曲のクオリティが上がったのも要因としては大きいですね。
リリースペースを上げる
ビトク:リリース数を増やすためには、リリースのペースアップが不可欠。例えば5年間のうち1日だけ20曲発表しても、ストリーミングでの数字は出しにくいです。
seekx:僕と同じように1人で楽曲を完成させるタイプのアーティストの場合、1曲を完成させるまでの時間や労力・費用が、バンドやグループに比べると少ないです。バンドだと、曲が完成するまでの工程が多いですよね。メンバーのスケジュール調整、レコーディングスタジオの確保、エンジニアとのやり取り等。
ビトク:バンドは工程が多い分、楽曲の別バージョンを出してペースを保つのが、効果的だと思います。SBTWの場合は、インスト音源やリミックス集▼、ライブ盤を出して、完全新曲リリースまでの間を埋めるようにしています。
seekx:1曲の様々なバージョンが聴けるのはファン目線からすると嬉しいですし、バンドとしても話題を切らさず活動できるのでwin-winですね。
僕のような活動の場合、1人で曲を完成させられるというのはメリットでもありデメリットでもあります。
ビトク:デメリットというと…?
seekx:なぜなら、完成したかどうかも自分で判断しないといけないからです。ケツを叩いてくれる人がいない分、「この曲はまだリリースする時期じゃない」とか「(漠然と)もう少し経験を積めば更にクオリティを上げられるはずなので一旦寝かせよう」とか、謎の温存をやってしまいがちです。正しく曲作りを行っているなら今この瞬間が一番アーティストとしての能力が高いはずなので、先延ばしにした曲を数か月後に聴いたところで、曲そのものに物足りなさを感じてボツにしてしまう可能性も増えます。
ビトク:理由もなく寝かせるのは、マジで良くないですね。僕もそれは経験があって、めちゃ反省してます。ちなみにバンドだと外部的要因でリリースペースを上げやすいので、そこは違いかもです。「次のツアーで新曲を発表しよう」とか「次の主催でアルバム制作をアナウンスしよう」みたいな。ソロだとそもそもライブをやらない方も多いですし。
seekx:僕のように1人で活動しているアーティストがリリースペースを保つコツとしては、"細かいこだわりは捨ててリリースせよ"ということですね。キツい言い方をすると、細かいこだわり=逃げと捉えることもできます。当然ながら手を抜いても良いと言っているわけではありません。
ビトク:「月間リスナーを増やす」という目標にフォーカスするなら、数こそ正義ですね。シングル連発によって、リリース一覧のごちゃつきが気になる場合、「アルバムリリース時に、(アルバムに収録されてる)シングルの配信を停止する」というやり方もあります。ISRCコードを設定すれば、該当楽曲の再生回数はアルバムへ引き継げますし。
複数プロジェクトを立ち上げる
seekx:同じ月間リスナー数1,000人でも、曲数の多い方がハードル低そうですよね。あくまでも考え方の例ですが、リリース1曲で1000人獲得するより、リリース10曲で100人獲得、リリース100曲で10人獲得、的な。
ビトク:その考え方は僕もしています。アーティスト名義を増やすのもアリですよね。同じ1,000回再生を目指すにしても、1プロジェクトで1,000回再生目指すより、2プロジェクトで500回再生ずつ達成する方が難易度は低い。もちろんたくさん名義(音楽性)を立てるのは別の大変さがありますけど。seekxとは別で、アンビエントをやるためにwidx.を作ったのは、そういう背景もあってのことでしょうか?
seekx:仰る通りで、seekxとしての活動で少し行き詰ったというか、思い通りに数字が伸びていないタイミングがありました。別の可能性も探ってみたいと考えていたところ、音楽的に好みかつ今まで培ってきた能力も活かせそうなアンビエントというジャンルに出会い、そこでも勝負してみようと思ったんです。
ビトク:実際やってみて、どんなメリットを感じますか?
seekx:2名義あることで、達成すべき数字を低く設定できるというのはもちろん、プレッシャーも分散されたのが意外なメリットでした。
何か1つに絞って活動していると、どうしても失敗したときのショックが大きくなってしまいます。
2つ名義があるだけで、こっちは思ったようにいかなかったけどもう1つで成功すればいいやとポジティブに考えられるようになり、精神的に楽になりました。
ビトクさんも昨年、ベースインストのNevrnessというプロジェクトを開始されていますよね。
ビトク:あー!その精神的なメリットはめちゃくちゃ分かります。僕の場合は、お蔵入りのアイデアがだいぶ減りましたね。ソロプロジェクトとバンドの2名義で、構造自体が別なので。今までは「これはバンドではやれないな~」と断念していたアイデアも、使える場所ができました。Nevrnessのデラックス盤リリース(フルアルバムにボーナストラックを加えてリリース)▼などは、その典型です。
曲をサブミットする
ビトク:月間リスナー数を増やすのが目的なら、サブミットは必須ですね。そもそもサブミットとは何かというと、自分達の新譜リリースを「プレイリストに入れてください」と提出する工程です。Spotifyの運営側が気に入ってくれれば、公式プレイリストに入ります。ほとんどの公式プレイリストは万人規模のリスナーがついているので、プレイリストに入ればリスナー数は跳ねあがります。
seekx:配信手続きは余裕をもって行い、Spotify for Artistsからサブミットしましょう。この記事でも書いた通り、公式プレイリスト入りするのはなかなか難しいですが、可能性はゼロではありません。
ビトク:公式プレイリスト以外にも、サブミットできる場所はありますよね。
seekx:リリース後は、SubmitHubやDaily Playlists等のサービスを使ってプレイリストキュレーターに向けて楽曲をサブミットしましょう。プレイリストの制作者に自分の楽曲を提出し、気に入ったらそのプレイリストに入れてもらえます。上記以外にもさまざまなサービスやサブミッション方法があります。
ビトク:SubmitHubは僕も前まで使っていました。「プレイリストに入るとどうなるのか」が、体感しやすいと思います。まずは手を出してみて、向き不向き(自分達のジャンルに合う合わない)を、判断するのが良いかなと。ジャンルによっては、そもそもサブミットできるプレイリストが少ないので。
seekx:自分の活動に適したサブミットの場所・サービスを見つけることが重要ですね。
僕もビトクさんも、色々な場にサブミットした経験から、「どこが効果的でどこがそうでないか」の判断ができるようになっていると思います。
ビトク:プレイリスト系サービスは他にもMusoSoupとかINDIEMONOとかあるので、ジャンルに応じて一度調べてみるのがオススメです。
seekx:サブミットのコツは、いきなりフォロワー数万人規模のプレイリストに提出するのではなく、数百や数千といったプレイリストに提出することです。フォロワー数万人のプレイリストに入ればもちろん再生回数は稼げますが、その分競争率も高いです。もう少しハードルを下げて、小さくても成功体験を積んでいきましょう。
ビトク:同意です。メタルコア系に関しては、万人規模のプレイリストにはほぼ通らないと思って良いかと。僕がよくやるのは、Daily Playlistsでプレイリストをフォロワー数順に並び替えて、小規模なプレイリストへアプローチすること。
seekx:僕のケースだと、SubmiHubを通してchill with taikiのプレイリスト▼に入ったことで、初めて月間リスナー1,000人を超えました。このプレイリストは今でこそ7万人のフォロワーがいますが、僕の曲が載っていた当時は1万人にも満たなかったと記憶しています。
ビトク:ちなみに世界には、上述したようなサービスには所属していない、野良(?)のプレイリスターもいます。「プレイリストに1週間入れてあげるので〇〇ドル送ってください」みたいな。そもそも金銭と引き換えに再生数をやり取りする行為は規約違反▼なので、要注意です。
リリースの方法を変える
seekx:少しハードルが上がりますが、レーベルからリリースするのも一つの方法です。
メリットは、レーベルがプロモーションもやってくれることです。レーベルのプレイリストに入れてくれたり、他のプレイリストに売り込んでくれたり。基本どのレーベルも、リリースした楽曲をまとめたホームページまたはプレイリストを公開しているので、「そのレーベルからリリースしたらだいたいどの程度再生されるか」を確認できます。こちらもいきなり大きなレーベルを狙うのではなく、手の届きそうなレーベルを目指してみましょう。
ビトク:実際レーベルからリリースする前と後で、どれくらい変わりましたか?
seekx:seekx名義ではレーベルから2〜3曲リリースした結果リスナー数は1万人ほど増えました。
アンビエントのwidx.名義では全曲レーベルからのリリースです。現在月間リスナーは7万人ほどで月間再生回数は50万回ありますが、すべてレーベルのおかげです。
ビトク:すさまじい成果ですね! 手の届きそうなレーベルを見つける方法を知りたいです。
seekx:僕はSpotifyのリスナー数や再生回数を参考にしています。
具体的な手順は、
①自分と同じジャンルで、自分より少し数字が上のアーティストを探す。例えば自分の月間リスナーが50人だとすると、100〜300人くらい。
②そのアーティストがリリースしているレーベルを調べる。
③レーベルにデモを送る。
詳しくはこちらの記事に書いてます▼
ビトク:レーベルやプレイリストとは異なりますが、YouTubeでキュレーションチャンネルを使うのもアリかなと。特定ジャンルの音楽をアップしている、いわば”ハブ”のようなチャンネルですね。直接Spotifyに送客できるわけではありませんが、外部露出は確実に増えるので。
seekx:lofiやアンビエントの場合、レーベル/プレイリスターがキュレーションチャンネルの上位を占めている印象ですが、
それらに属さない個人キュレーターもいますね。
"このチャンネルが取り上げてくれたよ!"と自身のSNSでお知らせすることで話題作りもできるので、効果的な方法だと思います。
ビトク:自分がSBTWでやった手法だと、今年リリースしたシングル”Vanishing Figure”のPVはバンドのチャンネルからアップして、オーディオストリーム動画をキュレーションチャンネルからアップしてもらいました▼。もちろんPV自体をアップしてもらうこともできます。
seekx:バンド・キュレーションチャンネルの双方が新規視聴者(リスナー)にリーチできる最高の方法ですね!
seekx:というわけで、ストリーミング回数を伸ばす方法について、5項目にわたってビトクさんと対談させていただきました。
このnoteではインディペンデントアーティスト向けの作曲方法やリリース戦略について発信していますが、コラボという形は今回が初めて。
ビトクさんはバンドとしても個人活動としても様々な活動で成果を出したうえで発信されているので、非常に説得力のある濃い内容になりました。
活動しているジャンルは違いますが、二人とも共通してるのは"リリース回数を増やす"ということ。試行回数を増やすと言い換えることもできます。
ここで挙げた方法をいきなり全部やらなくてもいいので、一つずつトライしていきましょう。
ビトク:ぶっちゃけ細かい理論が分からなくても、リリースペースを上げて適切なサブミットを行っていれば、リスナー数は上がっていくはず。もしモチベーションが上がらない時は、seekxやwidx.のSpotifyページ▼を見るのがオススメです。「こんなハイペースで出しているアーティストがいるんだ」と、自分的には相当刺激になります。
seekx:ビトクさんのnoteは、アーティスト活動において必要なことが惜しげもなく記事になっているので必見です。テクニカル的な部分からメンタル的な内容まで、いろいろな角度から切り込まれていて読むたびに背筋が伸びます。
ビトク:僕のnoteは毎週更新しているので、ピンと来た方はぜひチェックしに来てください。ありがとうございました!
seekx:是非またコラボさせてください!ありがとうございました!
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