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iOS版『Goat Simulator』は謎の大型アップデートを経て何がどう変わったか
2021年12月7日。今年も残すところ3週間といったときに、それは何の前触れもなく訪れました。
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iOS版『Goat Simulator(Pocket Edition)』、約1年ぶりのアップデート。
パッチノートを見ると、どうやらさまざまな新機能が追加されたかなり大規模なアップデートのようです。
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さらにその翌日、iOS版『Goat Simulator(買い切り版)』にも約4年ぶりのアップデートが配信されました。
こちらもパッチノートを見る限り、なかなか大がかりな改修が行われたようです。
いったいどうして? 何故今になって? ヤギサンタさんからの一足早いメェェェリィクリスマスプレゼント? それとも半月ほど前にフルリリース版が発売されたばかりの某鹿のゲームへのライバル意識? それより何でモバイル版だけ?
謎が謎を呼び混乱する最中、私の指は自然とアップデートボタンへ伸びていました。
突如配信されたこの謎の大型アップデート、自称『Goat Simulator』愛好家としては絶対に見逃すわけにはいきません。
……たとえそれがバーチャルパッド操作が大の苦手故に見て見ぬふりをしていたモバイル版であっても。
ゲーム概要とモバイル版について
もはや知らない人などいないはずの世界的メェェェ作ゲームですが、一応簡単に説明を。
みなさんもご存じのように、『Goat Simulator』はスウェーデンのゲーム会社Coffee Stain Studiosが制作した「ヤギになって人間をお休みしたい」というストレス社会に生きるすべての現代人の夢を叶えた次世代ヤギシミュレーターです。
しかしシミュレーターといっても『Microsoft Flight Simulator』のようなリアル系シミュレーションソフトや『Farming Simulator』のような職業体験型ゲームとはまったくの別物。どちらかというと『Cooking Simulator』のように荒ぶる物理演算を楽しむことがメインの箱庭アクション――まあ俗に言うバカゲーです。
もともとは社内のプログラマー訓練の一環として開発されたソフトのため製品化の予定はありませんでしたが、YouTubeにアップされたα版プレイ動画の反響からPC版の発売が正式に決まり、今日ではPC・家庭用ゲーム機・スマートフォンとさまざまなハードで配信されています。
ただし一概に『Goat Simulator』といってもゲーム内容は配信プラットフォームごとに最適化されているため、どのハードでプレイしてもまったく同じ体験ができるという訳ではありません。
特にモバイル版は、マシンスペックの都合からPC版やコンシューマー版と同じ広いマップを完全再現できない反面、他機種では配信されていない新規マップなどモバイル版限定要素を取り入れることで付加価値を高めています。
各プラットフォームごとの特色については、以前書いたこちらの記事内で簡単に取りまとめてありますので、興味があれば読んでいただけると嬉しいです。
さて、話を戻しまして本稿で取り上げるのは、その中でも独自色がひときわ強いモバイル版です。
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モバイル版『Goat Simulator』は現在、Android版とiOS版の2種類があり、それぞれGoogle Play(Android版)とApp Store(iOS版)にて配信されているのですが、その中でもiOS版には買い切り版と基本無料版(『Goat Simulator: Pocket Edition』)というふたつのバージョンが存在します。(※Android版は買い切り版の販売)どちらのOSにも買い切り版と基本無料版という2種類の『Goat Simulator』が存在します。
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【追記(2022/3/26)】
本記事の公開時点では無いものだと思っていたAndroid基本無料版ですが、『Goat Simulator Free』というタイトルで存在を確認しました。それも4年以上前から配信されているアプリのようです。(確認できた最古のAPKが2017/12/19のVer.1.4.19)
買い切り版はその名の通り、最初に料金を支払う一般的な購入形態です。一度買ってしまえばDLCマップ購入以外での追加料金は発生せず、3つのマップが収録された本編を制限なく楽しむことができます。
一方の基本無料版はダウンロードこそ無料ですが、プレイ可能なマップはGoat Villeの1種類のみ。それ以外のマップを解禁するには別途課金が必要、ただしCMを視聴することで1度だけ制限時間付きで試遊が可能になるという体験版のようなアプリです。
そんな似て非なるふたつの『Goat Simulator』に突如配信されたのが、今回の大型アップデートことバージョン2.0.4(iOS買い切り版)とバージョン2.7(iOS基本無料版)です。
パッチノートには「(ほぼ)ゼロから作ったユーザーインターフェース」「ガラッと変わったGoat Simulator!」などと書かれており、相当気合の入ったアップデートであろうことが文章の節々から伝わってきます。
はたしてそんな超ド級アップデートを経てiOS版『Goat Simulator』がどれほどの進化を遂げたのでしょうか。早速見ていきましょう。
ユーザーインターフェースの一新
起動直後、まず目につくのがメインメニュー・ゲーム画面・その他諸々のデザイン。パッチノートに記載された「(ほぼ)ゼロから作ったユーザーインターフェース」という謳い文句に嘘偽りなく、UIデザイン全般が一新されています。
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旧バージョンのスクリーンショットと並べれば、その差は一目瞭然です。仮想ボタンのデザインやアイコンのイラスト、クエストやスコアの表示位置、フォントの種類にサイズなどなど……全体的にシンプルかつ高級感あるUIに仕上がっている印象を受けます。
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もちろんデザイン性だけでなく利便性や快適性もアップ。特にミューテーター選択画面はスワイプ中心のUIになったことで、よりスムーズに目当てのミューテーターを選択しやすくなりました。プレビューの邪魔にならないよう、DLC購入を促す広告の位置が見直されたのも嬉しいですね。
グラフィックの強化
UIの次に目を引くのがグラフィック。ライティングの調整やテクスチャの描き込みが行われたことで、ヤギの世界がより鮮やかで美しくなりました。
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スタート地点のすぐ近くで塀越しにヤギを眺めているオレンジジャージの彼もご覧の通り。アップデート前は全体に陰が落ちていたこともあって心なしか浮かない顔をしていたのに対し、アップデート後は「君、整形……というか人種すら違わない?」と言いたくなるほど別人のように満面の笑みを浮かべています。
またフィールド上には新たに大量の草オブジェクトが追加され、より細かくなったテクスチャの描き込みと相まって、ヤギの世界に一段と深みを与えています。草。
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さらに約4年ぶりのアップデートとなった買い切り版では、これまで約1334×750pxまでしか表示されなかった画面解像度が大幅に引き上げられ、現行機種でもフルスクリーンでヤギを堪能することができるようになりました。
新通貨:ヤギドルの導入(基本無料版限定)
基本無料版ではこれまでDLCマップやミューテーターアンロック権といった課金コンテンツを購入するには日本円や米ドルなど現存する通貨が必要でした。しかし今回のアップデートでそれが廃止され、新たに登場したヤギドルという独自通貨での支払い方法に変更されました。
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1ヤギドルは日本円にしておよそ0.87〜1.16円。全DLCマップをアンロックしようとすると6690ヤギドル必要です。
そう考えるとセール頻度の高いPC版や『The GOATY』(DLCマップ全収録済みバンドル)のあるコンシューマー版と比べるとかなり割高な印象を受けます。
ところがこのヤギドル、実はゲーム内で特定のアクションを起こすことで無料で手に入れることもできるのです。
無償ヤギドル入手手段の常設(基本無料版限定)
前述のヤギドルはリアルマネーで購入する以外にも、下記の方法から無料で手に入れることも可能です。
広告動画を視聴する
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メインメニュー右側にある緑のバナーを押すと、怪しくて胡散臭い他のゲームやアプリのCMが流れ、それを飛ばさずに最後まで試聴すれば10ヤギドル入手できます。
ギフトを受け取る
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ゲーム本編をプレイせずとも、4時間ごとに配布される無料ギフトを受け取ることでヤギドルを手に入れることができます。入手ヤギドル額は10→20→30→10→20→30→10→……というように受取回数に応じて変動。受け取るための条件やデメリット等はないので、気軽に請求しましょう。
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【追記(2023/6/6)】
バージョン2.16.4時点において、無料ギフトの項目が削除されている様子を確認しました。(久々に起動したため、いつのアップデートで削除されたか特定できず)
チャレンジを達成する
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毎朝9時(JST)に更新されるチャレンジ(デイリーミッション)を達成すると、難易度に応じて10・30・50ヤギドルを入手できます。中には特定のミューテートを使用しないと達成できないものもありますが、基本的にはDLCマップを購入せずともGoat Ville内で十分達成可能なミッションばかりです。
冒険エリアを訪問する
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ゲームを開始すると1日に2~3カ所、Goat Villeのフィールド上に冒険エリア(光の柱のようなもの)が出現することあります。そこへ近付くと「ここではどういったアクションが起こせるか」というヒントが表示されると同時に5ヤギドルが手に入ります。
新ミューテーターの実装(基本無料版限定)
基本無料版限定ではありますが、新たに2種類のミューテーターが追加されました。
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白衣がよく似合うドクターヤギは有償ヤギドル購入時のオマケでアンロックされるという特殊なミューテーター。DLCコンテンツ以外でリアルマネーを要求するとは何ともがめつ……いえ、商魂たくましいヤギですね。
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某ファストフード点を彷彿とさせるMCヤギ(マクヤギルド)のアンロックはさらに特殊で、ヤギドルでもリアルマネーでもなくMCトークンというアイテムを必要とします。しかし肝心のMCトークン入手方法が現時点では不明のため、実装直後にも関わらずすでに幻のヤギと化しています。
その他変更点
上記のように目に見えてわかりやすい追加・改修要素以外にも、細かい部分でアップデートされている点がいくつかあります。
一部翻訳の変更
買い切り版のパッチノートに「全言語でローカライズの質を向上」とあるように、一部日本語表記に若干の変更が見られました。
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ただ私自身が旧バージョンをやり込んでいないため、どこがどう変わったかがほとんど把握できていないのですが……少なくともガソリンスタンドを破壊すると表示される「MICHAEL BAY!」の擬音が「ドッカーン」から「KABOOM」とアメリカンな感じに変更されていた点だけは確認済みです。
ミューテーターの個別購入が可能(基本無料版限定)
従来では「ヤギパック」というセット単位でしか販売されていなかったミューテーターアンロック権ですが、新バージョンでは1匹単位で購入することができるようになりました。
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ただし購入できるのは、6時間毎に更新されるデイリーオファーにピックアップされた6匹のみ。販売価格は1匹20~250ヤギドルとレアリティに応じて変動します。またデイリーオファーにはミューテーターだけでなく、10ヤギドルのギフトがピックアップされる場合もあります。
まとめ
さて、駆け足ながら確認していった今回のアップデート内容を簡単にまとめるとこんなところでしょうか。
UIの大幅変更
グラフィックの強化
通貨単位が日本円からヤギドルへ変更
無課金でもDLCコンテンツをアンロック可能
中でも最大の特徴は基本無料版のヤギドル経済体制。
ソーシャルゲームでおなじみの「石」に相当する課金アイテム制度を導入し、またそれを無償で配布する機会を設けたことで、無課金者でもDLCコンテンツに触れやすい――言わばモバイル版『Goat Simulator』のすべてを無料で遊べちまう可能性を秘めた実質無料の基本無料ゲームアプリと化しました。
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【追記(2024/12/4)】
本記事の公開時点では無償ヤギドルでもDLCマップやミューテーターパックがアンロックできたのですが、現在はデイリーオファーのピックアップ対象ミューテーター以外でしかヤギドルが使えない使用に変更されています。
そんなこと言って悪質なポイントサイトみたいに全然貯まらなくて無償ヤギドルだけでDLCコンテンツ購入なんて夢のまた夢じゃ……と思いきや、意外とヤギドルの入手機会は多く、チャレンジやギフトなど意識してプレイすると1日で簡単に100ヤギドル以上手に入るバランスになっています。
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実際に私も今回のアップデート以降、コツコツと無償ヤギドルを貯め続け『GoatZ』『PAYDAY』『Waste of Space』の3マップをアンロックしました。
無論、毎日がっつりやり込んだわけではありません。チャレンジを達成したり無視したり、ギフトを受け取ったり忘れたり、そもそもアプリ自体を起動したりしなかったり……そんな風にプレイ頻度にムラがあった私ですらDLCマップに易々と手が届いたぐらい、本当にヤギドル入手機会が多いのです。
一方で特に追加要素の無かった買い切り版は、正直なところ基本無料版のついでに行われたおまけのアップデートという印象が否めません。
といっても『Goat Simulator』というゲーム自体が既に完成された作品ある以上、これ以上手の加えようがありません。むしろ現行機種向けにアップデートがあっただけでも御の字でしょう。
UI・グラフィック・翻訳・ヤギドル……全体的に見れば今回のアップデートで大幅なクオリティアップが行われましたが、逆に改悪と感じた点もあります。
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私が思う最大の改悪点は仮想パッドの表示方法でしょうか。
旧バージョンでは一定時間操作しなければ左下に位置する仮想パッドが非表示になったのですが、新バージョンでは一定時間操作しないと半透明になるだけで完全に消えてくれません。
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それ以外にも「一度ゲームから離脱してメインメニューに戻らないとチャレンジ報酬が手に入らない」「何をすればいいかチャレンジの文言がわかりにくい」「他言語でプレイできない(オプションに言語設定の項目自体が無い)」「リスタートするたびにNPCが改名する」など細かい不満はいくつかあります。
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しかしこれらの不満を踏まえたところで、全体的に良アップデートであることに変わりありません。
特に基本無料版はヤギドルの仕様から、アイテム課金制のソーシャルゲームに慣れ親しんだスマホユーザーにもとっつきやすい新時代の『Goat Simulator』として劇的な変化を遂げました。
さて、これを機にみなさんもお手元の端末にヤギを入れてみてはいかがでしょうか。少なくともレンガやフラフープを買うより安く、レンガやフラフープを買う以上にファンタスティックでゴートフルな体験が味わえますよ?
注意点
本記事に記載された情報は2022年1月時点のiOS版の情報となります。Android版とは異なる場合がございますので御了承ください。
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なおGoogle Playストアページやヤギニュースによると、Android版はすでに上記アップデート内容(買い切り版)が2021年7月時点で適応されている模様です。ふーん。
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