トライブ紹介 おてんばマダム【1/2】
私たちSEEDERは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブレポートの詳細については、まずはこちらの記事をどうぞ!
トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。
今回はおてんばマダムをご紹介します。
1. シニアであることを肯定的に受け入れる女性の登場
一般的に女性は年齢を重ねるにつれて若返りを目指すアンチエイジング行動をとりますが、60歳に差し掛かってなお、歳をとることに否定的でなく、むしろシニアならではの美しさや暮らし方、余暇の使い方を楽しみ、自然体な生き方を追求している人々が存在します。彼女たちはシニアになってもファッションへのこだわりを失わないばかりか、より大胆に服を着こなすようになるなど、加齢を魅力として捉えて、シニア女性としての美を在り方を模索しています。
シニアであることを肯定的に受け入れ、シニアだからこそ可能なライフスタイルを実現する彼女たち「おてんばマダム」に注目し調査したのが本レポートです。
そもそも、人は何歳までアンチエイジングし続けるものなのでしょうか。アンチエイジングとひと言でいっても20代、40代、60代のそれは異なりますが、人生100年時代に突入し、これまで割と着目されてこなかった60代以上の女性の美やエイジングに対しての価値観が、どう変わっていくのか見ておく必要があると考えました。
シニア向け商品を考える上で重要なポイントとして、50代を過ぎたあたりからエイジング・シフトというタイミングが訪れます。
多くの女性は50代くらいまでは老化に抗い若さを求めることが一般的です。もっといえば50代であれば40代くらいに見られたい、40代であれば30代、30代は20代くらいに見られたいという風に、実年齢マイナス10歳くらいを目指すという方が多く存在します。
ところが、われわれが調査した結果、その感覚が50歳から60代の中盤にがらっと変わる瞬間を誰しも経験するといいます。これをエイジングに対しての価値観がシフトする期間=エイジング・シフトと名付けました。
加齢による心身の老化を自覚することで、多くのシニアは一瞬であたかも10歳年をとったかのように感じ、加齢に向き合う価値観が「抗い」から「受け入れ」へと代わる瞬間があります。また、エイジング・シフトを経験したこれまでのシニアは、老いを受け入れるとともに、「美」や「身体機能」の向上は諦めてしまっていました。
つまり、一般的なこれまでのエイジング感からシフトして、「歳をとることを肯定して受け入れて歳相応に見えるようにすればいい」というのが肯定型エイジングフリーです。
一方、そもそも50代、60代といった年齢など関係ない、むしろ「老いは魅力である」と完全に逆の考え方に転換し、100歳になっても自律していることを目指して日々さまざまな活動に打ち込んでいるのが自律的エイジングフリーです。
この自律型エイジングフリーが今後増えていくというのがSEEDERの見立てです。そして、この自律型エイジングフリーをバリバリ実現しているマダムの高齢者を、まだまだ青春を謳歌している人たちというニュアンスを込めて「おてんばマダム」と名付けました。
おてんばマダムを考えるうえではライフ・シフトという考え方を理解しておく必要があります。
2016年に発売されベストセラーとなった書籍『ライフ・シフト』は健康寿命が延伸し、人生が100年になる時代において、引退後に余暇を楽しむという人生は終わると宣言しています。
人生は教育・仕事・引退という3ステージから、マルチステージへと移行し、今まで老後と一括りに捉えられていた60歳以降の過ごし方にも変化が表れています。
たとえば予防医学研修者の石川芳樹氏は「人生を『0~25歳、25~50歳、50~75歳、75~100歳』という4つのパートに分けて考えると、50歳はまだ半分、多くの人が仕事でいちばん輝けるのは50~75歳ということになり、キャリアや人生設計もそれを念頭においてすべき」といいます。
長寿化で人生100年時代が当たり前になってくれば、50歳、60歳で「年を取った」といっていてもしょうがありませんし、人生100年時代の人生戦略としてエイジング・フリーという考え方が支持されるのも納得です。
また、50代には更年期などのさまざまな体の変化があり、一瞬悲観的になりますが、そこから抜け出る手段として、老いを魅力として考えていこうという大きな流れがあり、そのひとつがおてんばマダム化といえるでしょう。
2. おてんばマダムたちの行動
おてんば化の現象としてはグレイヘア、シニアファッションの写真集の出版、シニアの東京ガールズコレクションが開かれるなど、老いをむしろ魅力として捉えようということの提案がさまざまな形で登場しています。
ここでシニア女性の美と健康意識の変化や趣味や活動の変化行動の一部をご紹介します。(トライブレポートからの抜粋です)
白髪を魅力と捉えるグレイヘアマダムたち
これまで白髪といえば老い、老化の象徴ととらえられ、とくに女性にとっては隠したいものであり、頻繁に白髪染めをしているという方が大半だった。しかし、グレイヘアの女性たちを載せた『パリマダムグレイヘアスタイル』(主婦の友社)には、さまざまな理由で白髪染めせず、ありのままを受け入れることを選んだ女性たちのいきいきとした姿がある。また、昨年アナウンサーの近藤サトさんがグレイヘアを披露し、話題と大きな共感を呼んだ。
注目を集めるシニアファッション
60歳前後のシニア女性の美、特にファッションに関する作品がここ数年で人気を博している。もともとはニューヨークでおばあちゃん子だった編集者が、シニア女性のストリートスナップを載せるブログを作り人気が出たため、アメリカで2012年に書籍化。その書籍が映画化された影響もあり、世界中で注目を集めた。
日本でも、2014年に日本人シニア女性に絞ったファッションストリートスナップ集である「Over60StreetSnapいくつになっても憧れの女性」が発売されると人気を博した。1年半後の2016年には待望の第二弾が出るに至っている。これ以外にも、パリ、ロンドンやミラノのシニアのスタイルを扱った書籍が国内でも多数出版されている。こうした書籍が人気を博していることを考えると、60歳前後の女性は自分たちシニアの美の在り方を探していると言えるだろう。価値観を持っておしゃれを楽しんでいるおてんばシニアの調査を通じて、シニア女性の美のあり方に関する兆しを得ることができるだろう。
ファッションショーを開くアクティブ・シニア
ファッションは自分の見た目や好みに合わせ、それぞれこだわりがある。たとえば、白髪が美しい青木良子さん(76)は、「鮮やかな色の服を着ること」。「白髪は、ダークな色を合わせると老けて見えてしまうけど、鮮やかな色を合わせると、白と調和してより明るくなります」「ブティックの洋服も、お手頃価格のものも着ます。年齢を重ね、自分の好みや体形に合うものがわかってきたので、高いものも安いものもうまく組み合わせています」とのこと。
増加する踊るシニアたち
踊るシニア女性、シニアダンサーズが増えているという。2016年の行われたスポーツ庁の調査によると、70代女性が行っている運動ランキングでダンスが5位にランクインしたという。伝統的な社交ダンス、フラダンスだけでなく、チアリーディングやヒップホップダンスなど若者顔負けのダンスに挑戦する人も多い。「社交ダンスをしていたら身支度をきちんとするようになった。高齢になって1人暮らしをしており一日中パジャマのような服装で過ごすこともあった。しかし、社交ダンスの練習の日だけは、組む相手が不快にならないように化粧して、おしゃれして出かけるようになった。それが日常生活の中での良い刺激になっている。」といった発言もある。
過酷なトライアスロンに挑むシニア
過酷なスポーツとして知られるトライアスロンにハマるシニアが増加している。日本トライアスロン連合によると、愛好者は2000年の約29万人から2015年は37万5千人に増加。年代別の詳細なデータはないが、2014年の世界トライアスロンシリーズ横浜大会の出場者のうち、約3割が50代以上。70代以上も10人以上いたという。過酷な練習に耐え、記録に挑み続けるといった目標を抱えているシニアだけではなく「勝てなくても完走できればいい。それだけでもすごい達成感がある」という、自分のペースで競技を楽しんでいるシニアもいる。ただ、いずれのシニアも競技をきっかけに日常に運動を多く取り入れるようになったという声からもわかるように、日々の練習や、レースを完走するためには日常生活の健康管理が必須となるはずだ。スポーツの中でもとりわけ体力が求められるトライアスロンに挑戦するシニア女性、アイアン・マミーを調査することで、老いつつある体をいかに手入れして記録に挑戦し続けようとしているのか、彼女らなりの健康観を明らかにできると考えられる。
次回はおてんばマダムの2. おてんばマダムたちの行動(続)、3. おてんばマダムの3つのアプローチについてご紹介します!お楽しみに!
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