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トライブ紹介 ソーシャルパトロン【2/2】

前回に引き続き「ソーシャルパトロン」ついて、5. トライブが生まれた社会背景から考えられること、6. ソーシャルパトロンのトライブプロファイル③、7. プロファイルを踏まえた生活者変化行動仮説についてご紹介します!


5. トライブが生まれた社会背景から考えられること

ソーシャルパトロンのような行為が生まれた大きな社会背景に、リキッドコンサンプション(消費の液状化)があげられます。

シェアリングエコノミーやAmazonなどのインフラが整い、消費者は以前に比べ自分の欲しいものに出会いやすくなり、アクセスもしやすくなったため、ブランドスイッチが早くなっています。

たとえば、以前は50000円出して購入しなければ手にできなかったものが、サブスクリプションで月500円で体験できる世界にわれわれは生きています。

消費の液状化はこれまで日用品や耐久財で近年、言われ始めてきたことですが、この現象はアイドルやクリエイターの世界にも共通することで、これまではひとりの人やコンテンツを深く応援してきましたが、テクノロジーの発達により、noteやSHOWROOMのような投げ銭プラットフォームが登場し、自分が知らなかったアイドルやクリエイターがどんどん登場し、出会えるようになったのです。

だからこそ、50000円でひとりを長期間応援するよりも、100円、500円と少額でライトに応援しながら、違う人やモノも応援できる余力を残し続けているというのが重要なポイントになります。

これまでアイドルやクリエイターを応援する場合、ライブに行く、個展に行く、グッズを買うなどしか応援の仕方がありませんでしたが、SHOWROOMなどの登場により、100円投げ銭して、ライトに応援しながら記憶に残そうという行動がでてきています。

アイドルもAKBグループのように多様なニーズに対応するアイドルが次々登場し、コモディティ化してきていることからも分かるように、象徴的なひとりを応援するのではなく、多くのアイドルやクリエイターを応援し続けるような、固定化された消費ではない液状化された消費、流れゆくようにアイドル / クリエイターを応援していく人びとが今後ますます増えていくでしょう。

6. ソーシャルパトロンのトライブプロファイル③

もうひとつご紹介するトライブプロファイルが、ファンとの関係性の関わり方の変化です。

これまではファンクラブやSNSなどを通じ、ファンの人たちとコミュニケーションをとる方法が主流でしたが、ソーシャルパトロンは「ファン同士の関係は瞬間的なつながりだけでいい」と発言していました。

たとえば、投げ銭をする人たちは、ランキング投票などのイベント時のみ一致団結して、その後の継続的な関係性を求めないといいます。これは分人主義と深く関係しているのではないかと考察してます。

分人主義とは、“一人の人間は、複数の分人のネットワークであり、そこには「本当の自分」という中心はない。平野啓一郎(2012)『私とは何か「個人」から「分人」へ』(講談社現代新書)”という考え方です。

どんな人でも、仕事での自分、家族との自分と公私の顔を持っていましたが、SNSの発達によりさらに細分化され、Twitterの自分、Instagramの自分、Facebookの自分と分人化が進んだことにより、「これ以上継続的な関係を求めたくない」という考えが広がっていくのではないでしょうか。

アイドル / クリエイターのコモディティ化だけでなく、分人化が進んだことが、リキッドコンサンプションの要因、つまり流動的に応援する対象を変化させる行動につながっていると考えられれます。

このように、ひとりの人やモノをずっと応援し続ける時代ではなくなってきているからこそ、ポップアップ的なコミュニティが大事になってくるという大きな示唆を得ることができました。

7. プロファイルを踏まえた生活者変化行動仮説

これらを踏まえた生活者変化行動仮説が、「同じ目的を達成することを求める集団において継続的ではなく瞬間的な関係性を求める」というものです。

期間限定ショップのことをポップアップストアと呼びますが、SEEDERではコミュニティにおける同様の現象をポップアップコミュニティと名づけました。

先ほどご紹介した、

①分人化している

②応援するものが増えている

➂アクセスが容易になった

という3つの背景を踏まえ、コアなファン以外は継続的な人とのつながりではなく、ポップアップストアのように一定期間だけコミュニティが形成され、終わったら別のポップアップコミュニティに移動するというのが、今後考えられる生活者行動変化です。

さらに、ここから考えられるビジネスチャンスは、アイドルやクリエイターだけでなく、ブランドにも応用できます。

D2CやDNVBにおけるビッグファンは、ポップアップ型ではなく、定住型のコミュニティといえます。ビッグファンは当然重要ですが、それだけでは収益が頭打ちになってしまうため、ビッグファンの周りには、流動的な一般層、つまりポップアップコミュニティの人たちを都度都度引き入れるブランド戦略が、事業やブランドの拡大には必要になります。

ポップアップコミュニティの人たちは、つねに応援してくれる存在ではなくとも、たとえば新商品が出た際には必ず戻ってきてくれる存在となり得ます。そんなポップアップコミュニティを指標としてブランド戦略を考えていくことが、リキッドコンサンプション時代のユーザー獲得においては重要だと考えます。


トライブレポート本編の内容につきましては、information@seedata.jpまでお問い合わせください。

<参考文献>

久保田進彦(2020)「マーケティングジャーナル Vol. 39 No. 3 』<https://doi.org/10.7222/marketing.2020.007>(p.52-6, ).


今回は「ソーシャルパトロン」についてご紹介しました!
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