永久の君〜St. Valentine's Day〜
忙しない木曜日の
いつもの表通り
行き交う人々は
いつもとは違う
みな
一様に微笑みを湛え
足早に帰路に就く
二月の風が強く吹き付け
マフラーを巻き直す
煙草屋の路地から
ひょこっと顔を出して
悪戯っぽく笑う君
今日の日をとても楽しみにしていたんだね
高い空は雲もなく
広がる無限の空間
この中空に君を浮かべて
コーヒーを啜りつつ
もがく君を眺める
そんな場面を想像して
ひとり含み笑い
怪訝な表情の君に
笑顔を崩さず冗談を言った
夢の様な逢瀬
束の間の天国が
夕刻の喧騒に
蹂躙される前に
僕は君の唇を
そっと唇で塞ぎ
時間はその刹那に止まった
恋人達の持つ時間は
どれも短くて
密度の濃い液体のようで
時計塔の長針が
短針と重なって
なにが現実で
なにが想像か
脳も判別出来ず
夜の帳は
ついにやって来ない
良かったね
僕は君と
ずっといられるよ