四国八十八ケ所 約1200km通し歩き⑪通し歩き断念?温泉で一時療養? 9日目
痛む足を、だましだまし歩く。
多分、痛いってことは、炎症を起こしているんだろうし、この足首は前にも何度も痛くなった場所で。気が付かない振りしていたけど(してない)、痛みは強まるばかりだった。
次の23番薬王寺まで、たった20km歩くのが辛い。でも歩く。今は歩く。
それで、明日、もっと足が痛くなっていたら、どうする?
もう、家に帰ろうか?歩けないんだったら、今回は歩き遍路あきらめて、もう帰ろうか?
あっ!いや、今日の目的地の薬王寺には、確か温泉があったはず。
考えてみたら、9日間毎日歩き続けているし、そろそろ休んでもいいんじゃ?そして、温泉でゆっくり療養したら、足も良くなるかもしれんし。
薬王寺に到着すると、昨日の宿で酒飲んで盛り上がった遍路仲間、大阪のおっさん2名が、隣の宿にチェクインしており再会。
「私、足痛めちゃって、お遍路最後の夜になるかもしれないんで、今日も飲みましょう!」と居酒屋へ行く。(痛む足に酒は絶対に良くないんだけど、やむなし!)
「若い外人の遍路にぎょーさん会うんやけど、あいつら大体“ここへは、自分との闘いに来た”って言うんや。俺らみたいに、背負っているもの無いんや」とおっさん1。
「うん。そこに、何か背負ってますもんね? 何だろうこれー、確かに見えますよ!」
私は思わず、ニヤニヤしながら、おっさん1の左肩から背中をじーっと見てしまう。
「えっ?やっぱ見える?黒いやつ?おれら、皆んな背負ってるもんなー!ぎゃははは!」
酔っぱらうと、何話してもおかしくて、ゲラゲラ笑い続けるが、本当は私に見えないだけで、私も何か黒いもの背負ってたらどうしよう…。こわー!
おっさん2曰く、「おれがここに来たのは、娘が〇〇して〇〇だったんで、女房が〇〇した時、〇〇しようかと思ってきたんや!」
すいません、ほとんど覚えていませんが、あんまり深刻な事情じゃ無くて良かった。
お遍路している人は、実際いろんな思いを背負っている方がたくさんいらっしゃるので、来た理由を聞いても良いか確認したり、いつもは気を使いつつ話しているんですが、大酔っ払いへべれけで大笑いしていると、全然気が使えんわー。
翌日、二日酔いよれよれで朝起き、当然足首は激しく痛み、これ歩けないわ今日。さて温泉へ、と行ってみると、本日休業日?。
えええええーっ!宿のオーナーさんに、この近くに温泉が無いか尋ねると、無い。
じゃあ、私今日歩く?いや無理、温泉休暇のつもりだったし、で、ここにもう一泊する?いや、ここに一日いても、つまんなさそうだし。というか、じゃあ、これから先、歩き遍路をどうするか問題に直面する。
歩き通し遍路、あきらめて、家に帰るか?
でも、今回私は、ご朱印帳ではなく、白衣にご朱印をいただいていた。それは死装束にしよっかなー、とか、軽い気持ちで始めたのだが。ここで帰ってしまうと、いざ死んでこれを着たとき、ばれてしまうんじゃ?
「あら、この人、23番までしか行って無いわー、かわいそうに。お遍路くじけちゃったのねー!」と。
うおー!恥ずかしー!この、このご朱印約1/4の未完の死装束を、私着せられちゃうの?
ここで、私の意識が切り替わる。
私、もうこれ以上歩けないかもしれない。そして、お遍路猛者の方々は、歩けなくなったら、そこで帰宅した人も多いみたい、けど、私の下した決断は…。
ただ、死んだとき笑われないために!88ケ所のスタンプ(ご朱印)だけは、何としても、もらって帰ろうっ! だった!!!
でも悔しかった。寂しかった。悲しかった。
くそー温泉めー!なぜ営業しとらん!(涙)