四国八十八ケ所 約1200km通し歩き⑩歩けなくなった時どうする?怪我、体調不良時の対応は?8日目
数々のお遍路猛者に会ってきた。何度も四国を通し歩きしてきたという彼らも、時として、歩けなくなった事があったと聞く。
そんな時、どうしたのか?
「僕ね、大雨の日に山道が川みたくなって、その中を歩いていたら、足が真っ白でブヨブヨになっちゃって、痛くて歩けなくなった事があってね。でも、高知で入院して3日たったら歩けるようになって、歩き続けられたんだー。」
「私、膝が痛くて歩けなくなっちゃって。高知へ行って、毎日図書館に行っていたの。帰りたくなくて…。」
なるほど、体調不良時には、大都市、高知へ行け、とな。
「僕の友人は、10日目くらいだったかな?朝起きたら、“俺、もう足が駄目だから帰るわ”って言って、いきなり帰ってたなー。」
歩けなくなった時、どうしたか聞いたら。
一、歩けるようになるまで治療(入院?)する。
二、歩けるようにならない場合、気が済むまで都会でウロウロして帰る。
三、すぐに帰る。
歩けなくなったら、お遍路を止める人多くない?
気持ちはすごくわかった。歩き通すために来たんだもん。でも私は、私はもし歩けなくなったら帰るの?どうする?
足が痛くなった翌日、そうっと歩いて見ると、痛いけど歩けなくもない。
今日の日程としては、23番薬王寺まで約20kmで宿泊予約済み。その先24番最御崎寺(室戸岬)までは約76km。海岸線を歩き続ける厳しい行程だ。宿はまだ予約出来ない。だって本当に今の私の足で歩ききれるのか?
いやー、もう足痛いという事実は変わらないし、どうせ駄目になるんだったら、さっさと駄目になればいい。しゃーないやん。歩ける所まで歩こう!
とか、威勢の良い事考えつつも、おっかなびっくり、そーっとそーっと歩き出してみる。
おや?これ、ゆっくり行けばいけるんじゃ?
せっせと歩いていると、軽トラが追い越してきて、目の前に止まる。
「お遍路さん?この道、多分違うと思うでー!このもっと手前の道を右に曲がらんとー」(方言はいいかげんな記憶によります)
「はー?右へ曲がる道なんてありましたっけ?」全く記憶に無い。
「じゃあ、まあ右へ曲がる所まで送るわー。車に乗んなー」
よく見ると、70代半ば?後半の、おじい様で、助手席の扉を開けてくれた。
ここで歩き遍路の私は考える。これは不正じゃないか?お遍路の本を読むと、地元の人に“送ってくから車に乗りなさい”と言われる事が結構あるらしい。しかし、本気の歩き遍路の方は、自分の足で全部歩き切る事を大切にして、断るべきと考える人も居るらしい。
いやしかし。今の私は、遍路道では無い道へ踏み込み、歩き続けているようで、この親切なおじい様は、正しい遍路道の入り口まで、連れて行ってあげよう!と言っているのだからセーフなんじゃね?しかも私、足痛いし、間違えた道を何キロも引き返してる場合では無い!
「よろしくお願いします!」
元気よく返事をして、助手席を見ると。そこには、1.8Lの焼酎の紙パックが転がっていた。
む、むむむ。高知のジイさん(すいません)って大丈夫なんだっけか?確か、誰しも朝から酒を飲んでいるって、何かに書いてなかったっけ?しかもこの方、ちょっと目が赤い?いや、いや、偏見はいけないけど。ちょっとだけ酒臭くないか?
心は揺れに揺れつつ、でも楽がしたいの私。だってだって、私足が痛いんだもん。
さっと焼酎を足元に置き、助手席に座り、シートベルトを締める。
頼む、ジイさん!事故らないでくれ。飲酒してるって知ってて助手席に乗って事故ったら、私、何かの責任に問われんのか?頼む、ジイさん!何とか無事に私を届けてー!
この必死な願いは、無事叶った。良かったー(泣)