見出し画像

北朝鮮、新型中長距離弾道ミサイルを発射 極超音速飛翔体が目標に着弾 

北朝鮮のミサイル総局は1月6日、新型極超音速中長距離弾道ミサイルの試験発射を行い成功した。金正恩国務委員長、娘のジュエ氏、張昌河ミサイル総局長がモニター越しに発射を確認した。朝鮮中央通信が7日伝えた。

今回発射された弾頭ミサイルは、エンジン胴体部分に新しい炭素複合素材が使われ、飛翔及び誘導制御システムで蓄積技術に基づく新しい総合的・効果的な方式が導入されたという。他方、弾道ミサイルの名称については言及されなかった。

娘・ジュエ氏と発射の模様を「参観」する金正恩国務委員長(労働新聞)

同紙は極超音速兵器について、「保有した国は世界で数か国しかない」と指摘。保有の目的を「誰も対応できない兵器システムを戦略的抑止の中核軸にして、国の核戦争抑止力を引き続き高度化する」としながら、国防力強化は「一層加速する」と結んだ。

弾道ミサイルは平壌市郊外の発射場で東北に発射され、HGVはマッハ12で1次頂点高度99.8キロ、2次頂点高度42.5キロを記録し、予定された軌道に沿って飛翔して、1,500キロ離れた日本海の公海上の目標水域に正確に着弾したという。

平壌直轄市三石区域広徳里付近にある発射場所。現在は建物など撤去され、発射場として整備されている。(Google Earth)

北朝鮮の極超音速飛翔体の経緯

極超音速兵器とは、マッハ5以上の極超音速で飛翔する兵器のうち、飛翔行程の大半で弾道軌道を描かず高度数十キロ以上の大気圏中層部を飛翔するものを指す。

推進装置を持たず滑空により飛翔する「極超音速飛翔体(Hypersonic glide vehicle, HGV)」と、推進装置の推力により飛翔する「極超音速巡航ミサイル(Hypersonic glide Cruise Missile, HCM)に大別される。北朝鮮はHGVを開発している。

今回発射された新型中長距離弾道ミサイル。弾頭部に搭載されたHGV(労働新聞)
昨年4月に発射されたHGV。今回と外見が近似している。(労働新聞)

北朝鮮がHGVを発射したと公表しているのは、21年9月28日(火星8)と昨年1月14日(名称不明)、4月2日(火星砲−16ナ)で今回が4度目だ。

昨年4月の発射では、個体燃焼を用いる新型の火星砲−16ナから切り離されたHGVが1次頂点高度101.1キロ、2次頂点高度72.3キロを経て、約1,100キロ飛翔したとされる。今回はより大きくスキップし、飛翔距離は1,500キロと1.36倍に達したことになる。

しかし、防衛省と韓国・合同参謀本部が公表した飛翔距離は1,100キロと短い。いずれの数値が正確か不明だが、北朝鮮の数値が正しいのであれば、HGV探知の困難さを物語る。

防衛省が公表した今回の飛翔経路。北朝鮮の発表が正しければ、着弾地は南樺太周辺から稚内沖となる。(防衛省)

北朝鮮は今年、第8回党大会(2021年)で決定した国防5か年計画の最終年を迎える。来年の第9回党大会開催に向けて、弾道ミサイルの発射をはじめとして、未達成目標である戦略ミサイル潜水艦の就役、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の実戦配備などにむけて注力するとみられる。


経済安全保障ニュースポータル「Seculligence | セキュリジェンス」は2025年1月1日からニュース配信を開始しました。WEB版のローンチまでnoteにて配信いたします。