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バチカン公認祓魔師のオンライン講座

祝!「ヴァチカンのエクソシスト」続編制作決定!👏

人気が日本に限定していたので正直続編は難しいかと思っていましたが、ファンの底力はそんなものではなかったですね。
楽しみにしていた皆様おめでとうございます。アモルト神父たちの次なる戦いがどんな風になるのか楽しみですね。


さて3月某日、某カルチャーセンターにて一風変わった講座を見かけました。

朝日カルチャーセンター

映画の人気によって企画された講座だと思いますが、田中昇神父と言えば映画のパンフレットに寄稿され、映画メディアからも取材されていたバチカン公式資格(的なもの)を持つ現在(たぶん)日本唯一のエクソシスト。

<参考記事>
「日本で祓魔式を行う本物の神父さんに『ヴァチカンのエクソシスト』を観てもらって、感想を聞いてみた ─ 現実の悪魔祓い儀式はどう行われる? (THE  RIVER)


そのご本人のお話が聞けると。

神父の講座に有料で参加?と思われるかもしれませんが、たとえ信徒でも祓魔式なんてふつう縁がなく知る機会もなくてですね。
そしてもし田中神父とどこかで会う機会があったとしても、お会いしていきなり根掘り葉掘り聞く話題でもなく…

という事で好奇心に素直に従って受講してきました。


田中神父はローマンカラーの黒シャツに黒ジャケットという神父の一般的な平服。
大学で教鞭をとっていらっしゃるとのことで、話し方も平坦真面目な大学の授業といった印象です。

講座は2コマで「歴史」と「実践」に分かれ、
基本的には下記に公開されている田中神父の論文をなぞっていく流れ。

「カトリック教会の祓魔式」 田中 昇 南山大学 人文学部キリスト教学科

<南山神学46号> p. 97-211, 発行年 2023-03-31

まだ論文全部は読めていないのですが、聖書における悪魔の登場箇所や悪魔という言葉が指す対象の変化など、歴史としてのお話が興味深かったです。


曰く

旧約聖書
には現代でイメージするような悪魔という単語や概念はない
人を悪へと誘惑し、取り憑き、病にかけるような悪魔が登場するのは新約聖書から。

そして

クムランの「死海文書」では新約聖書と同質の悪魔に。
イエスは新約聖書で何度か悪魔祓いをする。


 …ん?…これはエッセネ派??

当時クムランにはクムラン教団というユダヤ教のエッセネ派の人たちが住んでおり、その人たちが死海文書を書いたのですが、
実はイエスがエッセネ派に属していた説がありまして。
そしてクムラン教団には病人のための癒しの習慣があるとのこと…

自分が以前旅行で見たクムランの洞窟群とエッセネ派の慎ましい共同生活跡が目の前によみがえり、点と点が繋がってテンション上がってしまいました。(個人の感想です)

クムランのエッセネ派住居跡


2コマめの「実践」では、門外不出?のラテン語の儀式書を見せていただき、
その内容を田中神父が訳されたものをザッと見せていただいたり。

前のnoteで「祓魔式のラテン語の祈りは知らないので各自ググってください〜」なんて軽く書いてしまいましたが、エクソシズムを専門に学ばれた神父さんだけが儀式書を持つそうで、信徒どころか一般の方には知りようがないものでしたね。貴重でした。


一通りの儀式の流れを聞いていて、
祓魔式というのは「信仰の再宣言」。もともと洗礼を受けて神の側にいた信者だったけれど、弱って悪魔の誘惑に負けそうになっている人が、神父とレスバという形の自問自答を繰り返しながら、寄り切って神の側に立ち戻る儀式なんだなとぼんやり思いました。

現代でも大人が受ける洗礼式の場合、式次第には
「あなたは神を信じますか」「悪を退けますか」
と問答する定型文があるんですが、あれはエクソシズムだったのかと。アハ体験。
「あなたは神の陣営に入り光の道を歩く覚悟がありますか?」
「どんな悪の誘惑も退ける気概が待てますか?」
という問いだったんですね。
歴史が長いと誤解しがちな意訳も多くて大変です。


そのほか
・聖水は、の生き返らせる力、清める力を強化するため神父が神からの祝福を込めたもの
・保存や清め作用から、古今東西、悪を退ける
・悪魔のを訊くのは対象者の潜在意識から原因を垣間見る要素もあるのかも
などなど

知らなかった事も多く勉強になったな、という楽しい講座でした。
ただそれは私にカトリックの基礎知識があり、文化人類学的な興味があったからだと思うので、
これ信者でない受講者さんからしたら聞いた事もない専門用語や概念がぽんぽん出てきて大丈夫だったのかな…という心配がちょっと心残りです。


映画の解説講座ではないのでヴァチカンのエクソシストの映画の話はそこまでしなかったのですが、いつかどこかの教会とかで、映画から入った人がもっと気軽に参加できる田中神父のエクソシズム解説講座とか出来たらよいかもしれませんね。

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