深夜に焼くバナナケーキ
唐突にお菓子作りがしたくなる。
お菓子づくりが趣味ってわけではない。
習慣でもなければ、その意欲が湧く周期が一定というわけでもない。
得意なお菓子があるわけでもない。
理由は特に無い。全く無い。
それでもある日突然、作りたくなってしまうのだ。
その日の私は、もう夕飯も風呂も済ませ、寝る準備は万端という状態だった。
でも何故かある瞬間、台所の熟れたバナナが頭をよぎった。
朝食用に買ってあったバナナが、結構、いやかなりやばいくらい黒ずんでいる。
買っても、朝食べることが少ないから、ついついいつも腐らせてしまう。
その夜は何故か、その熟れたバナナに思いを寄せてしまった。
「(熟れたバナナ2本、このままじゃ腐るな…)」
「(明日の朝もどうせ朝ごはん食べないだろうしなぁ…)」
「(しかも2本って数が微妙…)」
ふわふわと布団の中で考えて、眠れなくなった頃、
「あ、バナナケーキでも焼くか。」
思い立ったが吉日と言いますし。
深夜23時からお菓子を焼くことに全く抵抗なく、布団から抜け出し台所へ向かった。
材料は案外あるもので、無いものは何かで代用すればいいやと、レシピを見ながらもそれに従順に作るわけでなく、バナナケーキを焼いた。
そういえば私はシェアハウスに暮らしているから、今からお菓子作ってたら匂いが他の住人さんのところまで届いちゃうかも…。
そう思ってももう遅かった。
オーブンに入れて焼いてるものを今から出すわけにも行かない。
みんなごめんね、夢にバナナケーキ出てきたら私のせいだよ。
そんなことを考えながらオーブンの前で膨らむバナナケーキを観察し続けた。
この膨らんでゆくお菓子を見る幸福たるよ。
焼けた頃には眠くなり、「おやすみ〜」と焼きたてのバナナケーキに話しかけ夢の中へ。
1時過ぎてて、明日も早起きだけど、憂鬱じゃ無い。
朝が楽しみだ。
おはよう、深夜のバナナケーキ。
起きてから、なんでよなよなお菓子づくりなんてしたんだろう、と不思議に思う。
でもバナナケーキを食べる朝って幸せじゃん。
最高。
優しい甘さが口に広がって、なんかどうでも良くなった。
今でも私は唐突にパンを焼いたりお菓子を作ってみたりしているよ。
理由は特に無い。