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長男失格男の人生再生記
前回の続き
資料を持ち帰った失格男
両親の老後資金の予算設定のために、帰る道すがら
サ高住とグループホームを一件ずつ周りパンフレットをもらう
それらを元に一晩かけて、確定申告やら固定さんやら家賃収入やら年金やら
入ってくるお金と出ていくお金を整理する
入ってくるお金の記録はあるのに
出ていくお金の記録はさっぱりない
でも貯金もない
親父に思わず
「もう一個忘れている口座ない?」
と聞いてしまうほどに、残高が少なすぎるのだ
もしくはタンス預金???
父も母も若干痴呆が始まっているから
まさかのほんとに忘れている可能性も完全には否定できない・・・
とは言えないものはない
そして今ある収入も、建物の老朽化を考えると
持ってあと数年、半分はよくて5年
新しいのも10年持てば御の字か・・・
まったく状況を理解できていない親父に説明するために
失格男はほぼ徹夜の勢いで
年表と収支の予測グラフを作成し
翌日のプレゼン(両親用)に備えた
そして翌日、再び実家に向かう
親父とお袋を前に
徹夜で作った資料で今の状況を説明した
現在の年収と可処分所得を説明し
本来なら毎年手元に残っている金額が
銀行口座には全く見当たらないこと
老後の資金も概算で算出して例えば5年後に怪我をしたら
10年後に痴呆になったらと、いくつかのパターンを作って説明した
話を聞き終えた親父は涙ながらに言った
「やっと合点が言った、今まで体は衰えていくばかりで
貯金もなかなか増えず、でもどうしてなのか考えることもできず
ただただ途方に暮れている毎日だった・・・」 と
おかげでこのままだとどうなるのかがわかってスッキリしたと
涙ながらに話すのだった
正直、言葉に詰まった
父親はもともと技術者で、とても大きなお金を動かす仕事をしていた
引退後もほんの数年前まで、コンサルタント業で稼いでいたのだ
だから当然、家計の管理くらいは
朝飯前にやっていると思い込んでいたのだが・・・
実際は違っていた
失格男は言う
「これ全部俺がやるかい?」
父は答える
「 そうしてくれ、もうそんなことを考える気力がないんだよ」と
そこではたと気がつく
3ヶ月前の失格男だったら
おそらくこうはなっていないと思う
金の管理をしていない父を罵倒し
「なにやってるんだ、こんなの俺面倒見ないからな
自分でなんとかしろよ」
くらいのことを言っていたと思う
ただ、今の失格男は違う
自分が鬱になって、何も考えられない
何にも手が付けられないという現実を
つい2ヶ月前に自分自身で経験した
父の涙と、途方に暮れた心情が、失格男には理解できたのだ
同時にそれを高齢の父に要求しても
ここからのリカバリーは難しいことも理解した
とはいえ事は急を要する
入ってくるお金の整理はついた
あとはどこへ消えたかだ
もう答えは決まっている
弟家族だ
いったい何に使っているのか
恥ずかしながら
若かりしき頃悪事の限りを尽くした弟は
今だに切れやすい性格で、何かと暴力に訴えがちだ
失格男に歯向かうことはここ数年はないが
親父やお袋は弟に対して恐怖感を抱いているのは事実だ
話し方を間違えると厄介なことになるのは明白だ
色々考えた結果、まずは両親を失格男の自宅に避難させることにした
弟夫婦に連絡し、翌日の夜
私と3人で少し話をしないかと
持ちかけ了解を得た
続く