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【ゆる説】戦略をつくるときには、常に“Plan B”必要説

注意:【ゆる説】は、日頃「実は、こうなんじゃないか」と感じた説を、備忘録的にゆる〜く書き留めたものです。真偽は皆さんで確かめてください。

先日、とあるブランドのマーケティング戦略の壁打ちをしていたときのことだ。

非常に高い売上目標を達成するために、誰をターゲットにするのか、どんな価値を提供するのか、その価値をどのように伝えていくのか、をディスカッションしていたのだが、久しぶりに議論に参加したメンバーが異議を唱えた。

○○に注力することで、本当に目標を達成できるのか?

極めて、正論だった。そして、それは参加メンバーが薄々感じていたことであった。

マーケティング戦略の議論に伴走し、壁打ち相手になるのは、実はとても難しい。

普通のコンサルティングファームであれば、コンサルタントが戦略のドラフトを作成し、適宜クライアントのフィードバックを得ながら、資料を最終化し、納品する。

正直コンサルタントの腕にもよるが、多面的な観点で検討がなされ、かつ膨大なデータ分析やベストプラクティスに基づく客観性や合理性の高い戦略ができるため、経営陣の合意は得られやすい。

一方で、戦略策定プロセスにおいてコンサルタントへの依存度が高くなるため、実際に戦略を推進する現場メンバーの想いがこもっていなかったり、論理的には正しいが、実行の難易度が高すぎて「いざ実行」となったときに頓挫したり、とコンサルティングの負の側面も実は多い。

それが嫌で、自分はあくまでも壁打ち相手として、事業会社側の現場リーダー(例:ブランドマネジャー)に戦略の検討を主導してもらい、検討内容で不足している観点や参考になる事例などを提供することに徹する。そうすることで、より現場がオーナーシップを持った戦略づくりができるのだ。

当然、先ほどの指摘は、これまで何度も指摘してきたが、「この方向性で行くと決める」という決断を尊重し、それは与件として検討を進めてきた。

詰まるところ、戦略は「決め」の問題なので、実際に推進メンバーが腹決めできているなら究極それでいいと思う。

しかしながら、戦略を考えるうえで、もし最初の案(Plan A)がうまくいかないとしたら、どんな一手が考えられるだろうか、という代替案(Plan B)があるに越したことはない。

とりわけ、差別化が難しいコモディティの場合、何が人々の心を動かし、行動を変えるのか、その解を探り当てるのかは難しい。

仮に事業戦略をつくる段階で、どのマーケットのどのセグメントを狙えば、事業目標を達成できると明らかになったとしても、そのセグメントに該当する人が具体的にどんな人で、普段何を考え行動し、何に葛藤や喜びを感じているのか、といった粒度まで分析できているケースは多くない。

なので、戦略方向性として○○に注力する、と決めたとしても、どこまで本当に人々の態度行動変容を起こせるか、というのは別問題だ。

特に会議室の中で検討をして、ロジックと数字上は正しいのだが、実際にターゲットに会っていなかったりすると、自分たちが考えたことがターゲットの箸にも棒にもかからない、ということは珍しくない。

コンサルタントがつくる戦略は、その負の側面はあれど、最初から取りうるオプションの全体像が描かれることが多い。そして、いくつかのオプションの中で、市場性や実現性などの観点で有力なものがいくつか絞り込まれる。

その過程の中で、仮にこれがうまくいかなったらどうするか(= Plan B)は常に考え、どういう条件のときに何をするのか/やめるのか、が定義されていることが多い(これをCriteriaと呼ぶ)。そのため、仮にプロジェクトの途中で、初期仮説が間違っていたとしても、何をどこまで引き返せばいいのか、わかっているので、ちゃぶ台がひっくり返されることはあまりない。

複数の会社でいくつかのブランドを伴走支援していて気づくのが、このPlan Bを最初から考えながら検討を進める、という行為がマーケティングの現場ではあまり実践されていない、ということだ。そして、今回のケースは、私自身が現場のイニシアチブを重視し過ぎて、Plan Bの観点をやや蔑ろにしてしまったわけだ。反省である。

このPlan B、ないと後々苦しむことが多い。

最初の考えがそのままうまくいけばいいが、仮に途中で反証されてしまえば、それまで投下したヒト・モノ・カネが無駄になってしまうし、もし反証したとしても往々にして「時間切れ」となって生煮えのままPlan Aが実行されることもままある。当然、成功の確率は高くない。

もし、自分たちのマーケティングが思ったよりうまくいかない、ということで悩んでいる方がいたら、次の戦略を練るときは、常に「Plan Bは何か」を考えながら検討を進めるといいかもしれない。

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