バカンス忙しのフランス人(7/29)
おでこやら顎やらに吹き出物などを作りながら、ようやく夏らしくなったパリで夏を迎えている。パリにいると肌が荒れるが、根気強く水や空気などとの対話を続けていけば落ち着くだろうと、特に何もせずに放置している。
オリンピック選手にとって肌寒いのと暑いのはどちらの方が競技がし易いものなのだろう。
開催年には必ずぼんやりと考えることだ。
鍛えたことのない肉体を持った凡人には分からない世界の話だが、セーヌ川を泳ぐ人は暑い方がいいのかな、心臓発作起こしたりしないのかなとか、自転車の人は涼しい方が良さそうとか、一日のうちに一体どれほどの時間をこういう無駄な思考に費やしているだろう。改めて恐ろしいものだ。
フランスのバカンスは、がっつり一ヶ月超の長期的な旅に出るものという認識でいたが、結構そうではないことがわかってきた。だいたい皆んな二部制をとっている。少し遠いところへ行く(外国を含む)タームと、フランスの田舎に家を借りたりキャンプしたりするターム。
7月後半の1, 2週間は⚪︎⚪︎、8月前半に一度パリに戻って、8月にまた2週間ほど△△へ。みたいな感じか。どちらの期間に長めの休暇に出るかが皆んなバラけているので、7月や8月に友達と会うのはなかなかパズリングが大変。
いつ空いてんの?
私はこの日とこの日が行けるよ!
あ、そこはイタリアにいるわ
じゃあこの期間だったらどう?
そのあたりはノルマンディーだから、じゃあこの日は?
ああ、私はその期間は南フランスなのよ
こんな具合で、皆んなバカンス忙しでスケジュールが空いていない。「休暇で忙しい」なんて人生で言った事がないが、良くも悪くも「仕方がない思考」がみるみる間に身につき、あっさり仕方がないからと水面に浮かぶ葉のように軽やかに人間付き合いをするようになった。上野公園の池みたいな感じのやつ。イメージ的に。
奇跡的に、元同僚のバカンスとバカンスの間のバカンスと、私のバカンス前のバカンスがフィットしたので昼食にでかけた。
「こんな人のいないパリって変だよね。今年はオリンピックのせいで外国人しかいないよ。そりゃそうだよ、そんな時にパリにいたくないから」
と、皆んなコピペしたように同じことを言うが、おかげさまでカフェも空いているし、のんびり歩けて良い。オリンピックの会場となっている名所や商業エリア以外は非常に長閑。
うちの近所のパン屋さんも「7月23日から8月30日までバカンスです。またね!」と手書きの張り紙をしていたし、レストランも「7月22日から8月23日までお店を閉めます。8月24日から開けますよ!皆さんも良い休暇を!」と、これまた手書きの貼り紙を出していた。
手書きの張り紙は、いかにも勤務中にレジ横で書いたのだな丸出しの雑さで、これがまたフランスぽいし、どの程度休もうが苦情の電話がかかってきたり近所の噂になったりしないので、このあたりが「個人主義」の真骨頂かなと思う。何も、個々人が好き勝手することだけが個人主義ではない。好きなようにしている人を尊重することもセットだ。他人のやり方を自分のやり方に合わせようとしないことだ。日本人気質もしっかり心身に染み込んでいる私にとって、それなりに学びのある生き方だ。