【Covid Quarantine Birding <ホウロクシギ>】
野鳥のドイツ語名や英語名のことを書くことが多いのですが、日本語名で以前から気になっていてどうしても分からない鳥がいるのです。
ホウロクシギの"ホウロク"。漢字では焙烙(ほうろく)。
そもそも"焙烙"って知らないのでネットで調べてみたら、素焼きの平たい土鍋のこと。画像を見たら「なるほど、これが焙烙か」と納得。
しかし、この土鍋がどのようにホウロクシギの名前になったのかイマイチ分からない。
江戸時代後期の人がダイシャクシギと区別するためにホウロクシギと名付けたらしいのですが、なぜ土鍋の焙烙を鳥の名前にしたの?
羽衣が焙烙 ほうろくで炒ったような色合いだからという説。腹の色が焙烙(ホウロク)に似ているからだという説。はたしてどれが真実なのでしょう?
そのホウロクシギ(Far Eastern Curlew)ですが、ダイシャクシギ(Eurasian Curlew)、アメリカダイシャクシギ(Long-billed Curlew)と並んでシギの仲間では最大級の体の大きさ。長さは60〜66 cm、翼全体は110 cmの大きさ。クチバシの長さもこの3種が一番長い。
これらダイシャクシギの仲間は、英語でCurlew (カーリュー)と言います。これは鳴き声が「curloo-oo(カールーー)」と聞こえることに由来します。
ホウロクシギは、日本ではダイシャクシギと共に渡りの季節に干潟で観察されます。しかしダイシャクシギに比べて生息域が限定的。ダイシャクシギがユーラシア大陸全般に生息するのに比べて、ホウロクシギの方は極東のみ。なので英語名がFar Eastern Curlew(極東のダイシャクシギ)。シベリア・中国東北部で繁殖し、越冬地である東南アジアやオーストラリアに渡りを行います。
個体数は減少傾向で、世界で推定38,000個体しかいません。オーストラリアや日本では絶滅危惧種の一つとして扱われています。
この土鍋の色をした、長ーーいクチバシの渡り鳥は、この春も渡りの途中で東京湾に立ち寄ってくれました。
そして僕らは、このキュートな鳥のエサを採る仕草を楽しむことができるのです。
【MEMO】
語源を調べる学問をEtymology(エティモロジー:語源学)といいます。
日本語であれ、外国語であれ、鳥類の名前って、エティモロジーを楽しむにはうってつけの素材だと思うのです。鳥の名前の語源だけを調べた本もありますし。