【医師×レバレッジETF】基礎編①「減価」の嘘。
最近の株高に伴って、レバレッジETFが注目を集めています。
しかし、投資ブロガーさんなどの記事を見ていると、
「長期運用に向かない」
「ギャンブル」
といった批判的な意見も目立ちます。
実際のところ、投資する価値があるものなのでしょうか?
結論から先に申し上げますが、
「レバレッジETFは非常に優れた商品」です。
SPXLを徹底的に分析した結果、
巷で囁かれているレバレッジETFの欠点は、
ほぼ全てが的外れであることが分かりました。
投資はギャンブルではありません。
過去のデータを徹底的に分析し、
そこから読み取れる情報を正しく理解し、
それを元に論理的な戦略を組み立てれば、
大きなリターンを得る確率を十分に高めることができます。
当noteでは、
「レバレッジETFは、金利条件を設定した上で、長期運用すべきである。」
という結論に向けて、
1954年からのデータを徹底的に分析した結果を交えて、
レバレッジETFの扱い方について解説したいと思います。
今回は基礎編として、
レバレッジETFに向けられる批判の代表格である「減価」という問題について分析します。
1.減価とは?
一般に言われるレバレッジの減価とは次のようなものです。
元の指数が10%上がって、10%下がった
→1.1×0.9=0.99=1%低下
3倍レバレッジなら3倍の動きをするので、
30%上がって、30%下がる
→1.3×0.7=0.91=9%低下
元の指数は1%しか低下していないのに、
3倍レバレッジは1×3=3%ではなく、
9%も低下している。
その分レバレッジは減価している。
この主張は本当に正しいでしょうか?
私がまず不思議に思うのは、
「元の指数はなぜ低下しているのか」
ということです。
10%上がって10%下がったなら、
元の数字に戻るべきだと思いませんか?
鋭い方はお気付きになったかと思いますが、
元の指数も1%「減価」しているのです。
減価はレバレッジETF特有のものではありません。
なぜなら減価の正体は「複利」だからです。
2.複利には減価と増価がある
投資に興味のある方なら、複利についてはご存知かと思いますが、
ここで複利についておさらいしてみましょう。
指数が10%上がって、10%上がった
→1.1×1.1=1.21
10%増を2回繰り返すと、
20%ではなく、21%増えます。
この1%分が複利の力です。
少し数を増やしてみましょう。
指数が30%上がって、30%上がった
→1.3×1.3=1.69
30%増を2回繰り返したら、
60%ではなく69%増えました。
9%分が複利の力です。
似たような数字をどこかで見ませんでしたか?
そう。減価にそっくりですね。
「減価」という現象を正しく理解するには、
「複利」について正しく理解しなければなりません。
複利とは、簡単に言えば
指数が上がった後は値動きが大きくなり、
下がった後は値動きが小さくなること
と説明することができます。
つまり、「上がった後に、下がる」という動きをすると、
後半の「下がる」動きが大きくなるので指数はより低下します。
逆に「下がった後に、上がる」という動きでも、
後半の「上がる」動きが小さくなってしまうため、上がり幅が小さくなり、元の指数より低下することがあります。
では、「上がった後に、上がる」とどうなるでしょう?
後半の「上がる」動きが大きくなるので、指数はより大きく上昇します。
同様に「下がった後に、下がる」と、
後半の「下がる」動きが小さくなるので、下がり幅は小さくなります。
前者2パターンは、リターンを押し下げる力があるため「減価」と呼ばれ、
後者2パターンは、リターンを押し上げる力があるため「増価」と呼ばれます。
よく言われる「減価」は、
複利の4つのパターンのうち、
2パターンを見ているに過ぎないので、
正しい理解とは言えません。
また、株式だろうが債券だろうが仮想通貨だろうが金だろうが、
複利の影響を受けるすべての指数は「減価」もするし、「増価」もします。
インデックス投資でも、
確実に減価は発生していますが、
それを気にしている人はいないでしょう。
レバレッジETFの本質は、
複利の力を強めることにあります。
すなわち、減価の力も、増価の力も、増幅しているということです。
考えるべきは
「減価がある!」
ということではなく、上記を理解した上で、
「複利の力は強めた方が良いのか、弱めた方が良いのか」
ということです。
3.実際のデータを用いた検証
さて、実際の株式市場において検証すると、
「複利の強化」がどのような影響を及ぼすのか分かります。
まず、1988年1月4日〜2020年1月3日までの32年間のS&P500(配当込み)のリターンを見てみましょう。
全期間のリターン 25.6倍
やはりS&P500のリターンは素晴らしいですね。
1988年に100万円投資していたら、今頃は2500万円を超えていました。
次に、S&P500の1日の値動きを3倍にした仮想3倍レバレッジETFのリターンを見てみます。
全期間リターン 926.1倍
計算ミスではありません。
これが複利の力を増幅させた結果です。
1988年の100万円は、現在9億2600万円になっています。
1日の値動きを3倍にすると、長期的なリターンは、36倍以上になりました。
3倍を超えた部分は、全て「増価の力」です。
「株価は長期的に上下を繰り返すため、レバレッジETFは減価してしまい、長期運用に向かない。」
といった主張はよく見られますが、
完全な嘘であることが分かりました。
長期的に右肩上がりを続ける株式市場では、
次々と増価が繰り返されており、
「減価」という側面が、
いかに取るに足らない些細な問題であるか、
お分かりいただけるかと思います。
※今回の検証結果は、配当やコストを完全に無視した架空のものであり、過去のSPXLの予測リターンとは全く異なることを申し添えます。
この記事を読んでいただいた皆様は、
もう「減価」という言葉に惑わされることはありません。
レバレッジETFは、もちろん無敵の投資法というわけではありませんが、
少なくとも「減価」を理由とした批判を受け入れる必要はないでしょう。
不安になった時は、当noteの検証結果を見返していただき、「増価の力」を思い出して頂ければと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回もレバレッジETFの様々な要素を深く検証していきます。