少子化対策に思うこと
この度異次元の少子化対策の案が幾つか政府から発表された。予算をどこから確保するのかはともかく、内容は確かに今までの政府の中では最も踏み込んでいる物だと思う。
しかし、やはり根本的な所の改善から始めていくのが結果少子化を食い止める近道になるのではないかと私は感じる。給食費無料、保育所に預ける際の制限をなくす、児童手当の支給額を上げる等々、確かに今子育てをしている世帯にはありがたい政策ではあるだろう。だが、これから子育てをする可能性がある世代へのアプローチも同時進行でやるべきだし、むしろこちらの人達への制度を手厚くする事が長期的な効果に繋がるのではないかと思う。なぜならこの国の社会構造は今や、結婚や子育てを自分の人生プランに入れる事に対してメリットを感じにくくなってしまっているからだ。
いい大学に入っていい会社に就職して、たくさんお給料をもらう。これがよしと思われていた時代はもはやひと昔前の話だろう。今の若者の人生の最大の幸せとは、お金より、自分らしく伸び伸びと生きていける場に身を置くことなのである。もちろん全員がそうだとは言えないが、昔よりは働き方を自分で選びたい人が増えているのは確かだ。従って、残業代も出ず、長時間労働で自分の時間を一切持てないような正社員には興味を失くしてしまうのである。それだったら、多少給料が安くても自分の時間が持てる非正規労働者の方を選ぶという人も少なくない。自分だけ養う分には苦労しないお金は稼ぐことが出来るし、会社に縛られない生き方も魅力的に感じるのかもしれない。しかし、その価値観のまま突き進めば当たり前だが、結婚したい人が現れたとしても実際に結婚しようという気持ちにはなりにくいのではないだろうか。
もちろん、結婚=子どもではないのだが、将来を一緒に歩む相手を前に、その考えがよぎる事はあるだろう。そして現実的に考えたときに、お金の問題にぶち当たる。たとえ子どもを作らない事にしたとしても、相手がいるという事は、これまでのように自由に自分のためにお金を使えないかもしれないと思う人もいるだろう。更に正社員でも非正規社員でも、今いるこの会社が結婚し子どもが生まれた自分を歓迎してくれて、キャリアを守ってくれて、子育てに理解を示してくれるかどうかと考えたときに、そうではないと判断する人が多いと思う。要はお金と今の職場の体制を加味した際に、結婚出産はむしろデメリットが多いと感じてしまう人が多いのが現実なのだ。
だから、根本的な少子化対策にはまず、国をあげて日本全国の職場に蔓延る悪しき制度や体質を変えていく事が必要だろう。そのためには国だけが積極的に働きかけるだけでは意味がない。その職場に所属する全ての人間が、この国の少子化がひいては自分の将来へ保証に関わってくるのだということに危機感を持ち、結婚や出産という選択肢を取った同僚を応援し、支えていく気持ちを持たなくてはいけないと思う。その気持ちがあって初めて、企業や組織は本腰を入れて全ての人が安心して結婚出産に踏み込める組織改革に着手することが出来ると思う。もちろん職場には色々な考えの人がいる。子どもなんて嫌いだから、人が結婚しようが子ども産もうがそんなの知ったこっちゃない、自分には関係ないから協力する気にはなれない、そんな人もいるかもしれない。でも考えてみてほしい。少子化になるということは、そんなあなたの老後を支えてくれる若者たちが周りにどんどんいなくなっていく事なのだ。国や教育機関は、もっとこの現実を日本国民に映像等を駆使して幅広く周知させていく必要があると思う。現代人は自由を手に入れ、生き方も多様化してきた。それはいい事だと思う。しかし、その自由の下で、実は多くの公共、福祉のサービスの恩恵を受けて守られている部分がある事も同時に認識しなければならない。その部分が少子化によって削られ、なくなるような事になれば、自由に生きていく事が困難になる時代も訪れるだろう。社会は、自分1人では決して回っていかないのだから。
もう一点の課題はやはりお金であろう。これは国が何とかしなければならない事だと思うが、とにかく経済を安定させて、正規社員、非正規社員共に十分な給料を支払っていく必要がある。少なくとも、お金で結婚や出産を躊躇することのないようにしなければならない。それが容易でないなら、教育や医療、あらゆる公共サービスの料金を全て無償化し、ある程度の給料でも子育てしやすい社会に転換していく必要があるだろう。
職場の改革とお金の確保。この2点が正に少子化対策の根本的改善に繋がると私は感じている。これをやりつつ、今国が提示している少子化対策も出来るところから実践していく形が、今この国が出来る最善ではないだろうか。根本的な部分を放置して、表面的な政策ばかり実行するのは、一時的な結果は見えやすいかもしれないが、長期的には何も解決しない。国は是非とも、まずは根本的な改善に目を向けてもらいたいと思う。
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