読み取れなくなったレコード。 傷ついたものは元に戻らない。 聴きたかった音も聴けなくなってしまった。 肉体の怪我は、だいたいが元に戻る。リハビリを要するような、神経の損傷や大規模な筋肉の損傷がなければおおよそ戻る。 精神はどうだろうか。 これは案外元に戻らないと言われている。 私は精神を大きく壊した。 そして現在進行形で壊しているところだ。 金銭的問題、肉体の脆弱さ、タスクの多さ、人間の愚かさ 様々な要因ですり減らしている。 結局何をやるにも金が必要で、そのためにも丈夫な
アイディアはある。 しかしそれを形にすることは、容易とは言えない。 たびたび書き足すものがあるか、削るものがあるか吟味する。 ハッとさせられるアイディア、あるいは展開の技法が欲しい。 古来から伝わる展開の技法にモチーフを使用すると言うのがある。 中にはこれが使いにくいこともあるし、使わないものもある。 一向に書けない中、取っ掛かりをも求めている。 今日で筆を折るとなったら、それは明日が来ない時であろう。 あしたはこない アイディアはそのままスリップしていくのだ
最近、急に暑くなった。 夏の香り、湿った空気と塩素や花たちだろうか、例え難い独特な空気が広がっている。 それを感じてからというもの、夏の思い出をいくつか思い出した。 中学校の吹奏楽部で出場した吹奏楽コンクール、片想いしていた後輩のこと、初めてできた恋人に振られた高校時代、友だちと2人で飲んだ夜の愚痴、なんだかんだで夏が一番思い出深い季節だと思う。 そして記憶に無い、理想、あるいは空想の夏というのもある。 私がかつて願い、もう二度と叶うことのない事象。 過去が上流、空想が対
お経が聞こえる。 声は一定のトーンとリズムで、言葉と言葉の区切りとして間を挟んでいる。 お経というのは日本語らしからぬもので、ある種詠唱のようにも感じる。 外の音が遠ざかる。眠気が強いせいもあるのだろうか。 次第にお経は複製されて繰り返され重なっていく。 そして別な音が近づいてきた。あるいはこちらが近づいているのかもしれない。 ふと風を感じ目を開けると、そこには幻想的な極彩色の景色が広がっていた。桃と黄色に咲く花と草木の緑、水は青に輝いている。 穏やかな風に揺られなが