タケゴン
″タケゴン″は高校の時の友達のあだ名だ。高1の時に同じクラスで、席が前後だったので話をするようになった。友達は友達だけど、今思えばそんなに遊んだ記憶がない。タケゴンは吹奏楽部で頑張っていたような。私は私でバイトに明け暮れていたような気がする。高校時代の思い出なんてほぼバイトの記憶。学校での思い出なんてないに等しい。高校、あんまり面白くなかったんだ。
高校を卒業して社会人になってから、何回かタケゴンと会ったけどそれもほんとに数回。そのたった数回の中に、私の思い出として残っていることがある。
ある日電話があり、聞くとタケゴンのお母さんが手術するという。私に付いてきてほしいということだった。
病院に行く前タケゴンの家に行って、タケゴンが作ってくれたお昼ご飯をご馳走になった。部屋にエレクトーンがあって私が聴きたいと言ったら弾いてくれた。弾く姿を見ておぉっ!となった。好きなんやなぁと感じたからだ。
病院にはバスで行った。夕方の待合廊下で、タケゴンと私しかいなくて、薄暗い廊下が不安を煽るような感じで、ただずっと、無言でいたような気がする。タケゴンはつかみどころのない雰囲気を持ち、たまに、?と思ってしまう言動や動き?をすることがあった。それがタケゴンの持ち味なんだろうけど、当時は『?』についていけなくて困ってしまうことがあった。今となってはこれもいい思い出?だけれど。。苦笑
不安そうなタケゴンの近くで私はなるべく平静を装うようにした。ヘンに喋ることもしなかった。タケゴンと一緒に居ること。それしかできない私はそれしかしなかった。
手術が無事に終わり、ホッとしたのかタケゴンは涙ぐんでいた。当時はまだ私たちは若かった。不安も大きかったはずだ。一緒に居ることしかできなかったけど、私にはこれが精いっぱいだった。
心に残る思い出は、もう一つある。ある日、タケゴンに音楽を聴きに行かないかと誘われた。場所は神戸・北野にある老舗ジャズクラブ″サテンドール″。
私は即座に大丈夫かな、、と思った。だって、ジャズを聴いたことなどないもの。生で聴けるLIVEというのにはものすごく興味津々だが、きっとめちゃくちゃ大人のお店だろうし、どんな格好で行ったらいいかもわからない。でも。興味津々が勝った。一緒に行くことにした。
サテンドールは予想した通りの大人なお店だった。入ると緊張で肩が上がった。店にあるもの全てがピカピカしていた。大きなピアノもピッカピカだ。どんな音楽が聴けるのか楽しみになった。
LIVEが始まるまでの難関はお酒の注文だ。大体、こんな大人なお店に来るのが初めてだし、どうする?どうしよう?しかない。大げさかもしれないが、当時は本当にこんなんだった。知ってるカクテルの名前をとりあえず口に出した。たしか飲んだのはソルティドッグと、モスコミュールだ。ド定番ですね。(笑)
LIVEはとっても素敵だった。どこまでも大人の世界。印象に残ったのは女性のシンガーが歌った″星に願いを″。美しい曲だと思う。大好きだ。
タケゴンは小曽根真さんが好きだったんだと思う。その日も出演されていたはず。今思い出したけど、タケゴンは吹奏楽部ではサックス担当だった。エレクトーンも弾くし根っからの音楽好きなんだと思う。
緊張しながらもLIVEを楽しみ店をあとにした。帰り道、サテンドールの名前が入るようにしてお互い写真を撮ったのを覚えている。あ、女性シンガーさんとも写真撮ったんじゃなかろうか、、アルバムに残っているかも⁉
この記事を書くのにサテンドールのことが気になって調べたら、なんと2016年に閉店したそうだ。事情あってのことなんだろうけど42年もの歴史があるお店だっただけに別れを惜しんだファンは数しれずいただろう。たった一度しか行っていない私の中に思い出として残るサテンドール。キラキラ煌めくサテンドール。とっても大人で、素敵なお店だった。
タケゴン、今頃どうしているかな?会っていたのは20代の頃まででその後が一切わからず。今も元気で生きていて欲しい。