第9回 教育委員会の職務権限(5)
同じ話題でこんなに連載するとは思いませんでした(笑)。
さて、地教行法(以下「法」とします。)第23条第1項による職務権限の特例ですが、結構いろいろな手続きがあります。
法第1条の4に規定する総合教育会議には議決権はなく、協議・調整の場であり、首長及び教育委員会には尊重義務が生じるのみではありますが、実際にそれぞれが手続きをする上では、今まで掲げた答申等にもあるとおり、総合教育会議の場を活用して協議・調整を行うことが想定されます。
そういう下準備を除いても、結構作業量が多いので、順番に書き出していきます。
1 首長部局での条例を議案として提出することについての教育委員会への意見聴取(法第29条)
意見聴取、とありますが、通常は教育委員会会議での議決(あるいは議決に代わる法第25条第1項の臨時代理)です。
職務権限の特例以外にも、権限を首長部局に移すことで改正が必要な条例も併せて意見聴取が必要です。
宇治市教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例
https://www.city.uji.kyoto.jp/uploaded/attachment/15242.pdf
の附則第3項及び第4項(この場合には、本条例の附則での改正となっていますが、ものによっては本条例とは別に改正することも考えられますので、その場合には、議案としては別となります(説明が一括か別かはその団体で取り扱いが違うと思いますが))。
別に定めている例
中野区教育委員会会議録 平成23年第3回定例会
https://www.city.tokyo-nakano.lg.jp/dept/651500/d012621_d/fil/23-3tei.pdf
(1)「中野区教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例の施行に伴う関係条例の整理に関する条例」の制定について
昨年の区議会第4回定例会で、学校における体育を除くスポーツに関する事務及び文化財の保護に関することを除く文化に関する事務を区長が管理し執行する旨の「中野区教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例」が成立いたしまして、平成23年4月1日から施行されることに伴いまして、現在、教育委員会で所管しておりますスポーツ・文化施設を区長部局に移管する必要があることから、「中野区立体育館条例」「中野区立歴史民俗資料館条例」「中野区もみじ山文化の森施設条例」「中野区区民ホール及び芸能小劇場条例」について、「中野区教育委員会」または「委員会」と定めている規定を「区長」に、「中野区教育委員会規則」または「委員会規則」と定めている規定を「規則」に改正する必要があるものでございます。これらの一部改正をまとめて一つの条例の制定により行うために、「中野区教育に関する事務の職務権限の特例に関する条例の施行に伴う関係条例の整理に関する条例」を区議会第1回定例会に提案する報告でございます。
2 首長部局が議会提案
3 議会から議決前に教育委員会への意見聴取
ここが一番の違いではないでしょうか。法第23条第2項の規定に基づき、再度議会から教育委員会への照会がきます。
教育委員会の職務権限の特例条例の一部改正に関する意見について(吹田市教委)
https://www.city.suita.osaka.jp/var/rev0/0105/6463/20151222144410.pdf
条例の提案で首長部局から意見を求められ、議決したのに、また議会からも意見を求められるのですよね…
4 議会において議決、首長へ通知
ここまでが条例関係の一連の流れです。3以外は、他の条例も同じ流れになります。例えば、職務権限を首長部局とした場合、教育委員会事務局職員の定数を変更することが想定されますが、事務局職員の定数は、法第19条により条例で定めることとなりますので、同じ手続きに沿って事務がされることとなります。
5 教育委員会規則の改廃
愛知県文化財保護条例施行規則等を廃止する規則について
https://www.pref.aichi.jp/uploaded/attachment/331262.pdf
職務権限の特例により、教育委員会規則を廃止し、首長部局の規則を制定する必要が出てきます。このほかにも、法第17条第2項により、教育委員会組織規則などの改正がありますので、教育委員会会議の案件となります。
特定社会教育機関の場合は、首長の規則制定、改廃の際に教育委員会に意見を求められます。
令和元年12月24日 定例教育委員会 会議録(岐阜県教委)
https://www.pref.gifu.lg.jp/uploaded/attachment/144661.pdf
報第3号 社会教育機関の規則に係る協議について
報第3号について説明する。別冊資料の22頁及び23頁をご覧いただきたい。今回、関連する条例の一部改正により、これまで教育委員会規則として整理していた岐阜県美術館管理規則等の5本の規則を、新たに知事部局で定める県規則として制定し直すことについて、地教行法の第33条第3項の規定に基づき12月19日付けで岐阜県知事から協議があったものに対して異議のない旨を、同日付けで専決により回答したことを報告し、承認を求めるものである。
地方自治法第180条の2や第180条の7の委任・補助執行の変更が伴う場合は、その協議も出てきます(このあたりは教育長に委任しているとは思います)。また、教育財産から首長部局の行政財産にする手続きも必要となります。
たぶん、これで一連の流れは書いたかなと思います。もし不足等がありましたらお知らせください。
ご意見ご感想お待ちしています。