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ナゴルノ=カラバフ難民 夫が閉じ込められた女性の場合 難民100人取材

女性は語る”あれから希望が持てない、、、”と。取材当時11月11日この日彼女の夫は仕事でカパンに出かけていた。そして彼は、再び”封鎖された街カパン”に閉じ込められていた。そう、取材前日11月10日アゼルバイジャン軍は再びカパンへの道を不法占拠し、封鎖した。

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ナゴルノ=カラバフ難民 ゾルアップ村出身の女性(32)

2020年9月27日に始まった44日間戦争までは、彼女はナゴルノ=カラバフのカシュタ地方、ゾルアップの村で夫と二人の娘と一緒に幸せに暮らしていた。彼女達は菜園で蜂蜜を取るために蜜蜂を養蜂したり、ザクロを育てたり、家畜を飼育するのが仕事だった。ゾルアップ村の気候は暖かく菜園を営んだり、家畜の世話をするのに適したいい村だった。ゾルアップの村は川のそばにある美しい村でザクロが名物の村だった。ちなみに、ザクロはナゴルノ=カラバフの未承認国家アルツァフ共和国のソウルフルーツでアルツァフ共和国を象徴する彼らにとって特別なフルーツだ。恥ずかしながら筆者はこの取材までザクロを食べたことなかった。”美味しいから食べてみて。”と彼女はたくさんザクロを出してくれた。筆者は食べ方すら知らず、タネを食べられないかと思いティッシュにタネを出していた。”タネも食べられるのよ、タネごと食べても美味しいから食べてみて”と彼女は筆者のぎこちなくザクロを食べる様子を見て笑っていた。優しい笑顔の素敵な人だ。タネごと食べたザクロはタネの食感がよく、ほどよくしょっぱくて甘い。とても美味しい果物であった。

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アルメニアでは蜂の巣に入った蜂蜜は高級食材だが栄養がたっぷり詰まっているので人気の食材だ。

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ザクロはナゴルノ=カラバフのソウルフルーツであり、ゾルアップ村の名物だ。そのまま食べてもほどよくしょっぱくて甘く美味しい。ワインやジャムにしたりする。

2020年44日間戦争が始まるとすぐに彼女達家族はナゴルノ=カラバフからゴリスへと非難した。避難の途中爆撃が始まり怖かったと彼女は語る。ナゴルノ=カラバフのボルタン市での爆撃音はアルメニアのゴリスまでも聞こえたという。

今はアルメニアのゴリスでアパートに住んでいる。彼女は戦争で仕事を失った。だから、家賃を払うのは大変だ。子供達の学費も必要だ、今の生活は前の生活に比べて厳しい。ナゴルノ=カラバフのゾルアップ村には家も仕事も全てがあったというのに。ゼロからのスタートは過酷だ。

彼女の夫はゴリスとカパン間を車で往復し、荷物を運ぶ仕事をしている。そう、数週間前アゼルバイジャン軍に道が不法占拠され封鎖され、独立したあの”封鎖された街カパン”である。


Q”ご主人はゴリスとカパン間を仕事で行き来しているということですが、数週間前のアゼルバイジャン軍による封鎖によって何かご主人は影響を受けましたか?”

”夫は昨日封鎖される前にカパンに向かったから、今はカパンに居て、閉じ込められて帰ってこられないの、、”と彼女は答えた。、、、?昨日から?聞き間違えだろうか、封鎖は数週間前のはずで、この取材の一週間と少し前筆者自身カパンにいたのだから。”、、、、え?昨日?、、、数週間前でしょう?”と筆者は彼女に問い直した。”昨日からまた道はアゼルバイジャン軍に封鎖されたわ。”そう確かに彼女は答えた。彼女に取材を行ったのは2021年11月11日、なんとその前日11月10日から筆者がカパンへ向かう際にバスで通ったアルメニアとアゼルバイジャン国境沿いの道は再びアゼルバイジャンに封鎖されていた。難民100人取材を行っていたにも関わらず、筆者は何も知らなかったのだ。

”えっ、、?なんでまたアゼルバイジャンはそんなことを?”筆者は思わず疑問を彼女に投げかけた。状況が正直掴めていない。何が起きた?。”嫌がらせよ、この道はアゼルバイジャンのものだって言いたいのよ。それだけよ。”今度は通訳が直接筆者の疑問に答えた。そんな、、、くだらない理由で?

あの道を通る時アルメニアの同盟国であり、平和維持軍として駐留していたロシア軍がパトロールをしているのを筆者は前に見ていた。今はロシア軍がいるはずではないか?数週間前の封鎖があったから、ロシア軍が我が物顔であの道をパトロールしていると筆者は思い込んでいた。”同盟のロシア軍があの道に駐在しているだろ?ロシア軍は何をしているんだ?”と通訳に素朴な疑問を投げかけた。”何もしないわ。彼らは治安を維持しているだけ”と冷めた表情で通訳は答えた。治安を、、維持しているだけ?はあ?意味がわからない。現にあの道はアゼルバイジャンに不法占拠されているのに治安維持も糞もないであろう。”、、はあ?治安維持ってアゼルバイジャンが不法に道を占拠してるだろ?同盟国アルメニアの治安が乱れてるじゃないか”ロシアが平和維持軍として駐留しているにも関わらずアゼルバイジャンにアルメニアの道が不法占拠されている事態があまりにも衝撃的かつ予想外で筆者は思ったことをそのまま口にしていた。”ロシア軍には関係ないわ。治安維持でいるだけだから。”そう通訳は冷め切った声で答えた。その冷め切った声は通訳だけでなく、アルメニア人全体のロシア軍への声そのものであった。アゼルバイジャンがアルメニアの道を不法占拠してアルメニア人達の交通や物流を妨害するのは治安を乱すことにならないらしい。その日、筆者はいかにアルメニア人達が同盟国であり、平和維持軍のロシアに何も期待していないのかを理解した。”平和維持軍”、”同盟国”、”治安維持”、、、外交上や国際戦略上の”同盟”や”平和”、”治安維持”は筆者が考えるそれらの言葉とは意味が違うらしい。

筆者がゴリスからカパンを訪れた時に通ったアルメニアとアゼルバイジャン国境沿いの道はアゼルバイジャンにより封鎖されたが、実はカパンにゴリスから行く道はもう一つある。別の方向から険しい山道を通る道がある。しかし、彼女に取材を行った11月11日は天候が悪く雪であった。険しい山道が連なる別の道を雪が積もる日運転するのは危険なため彼女の夫はカパンから帰ってくることはできなかったのだ。結果彼女の夫は1日分の稼ぎを丸々失うことになった。ただでさえ家賃の支払いと学費で苦しい生活だというのに。アルメニア南部ゴリスやカパンの在るシュニク地方は豪雪地帯だ。真冬にカパンへの封鎖されていない険しい山道を運転するのは危険すぎる。要するにアゼルバイジャンの封鎖が続けば彼女の夫は冬の間仕事を失うことになる。彼女も現在仕事がないから、そうなれば彼女の家族の冬の間の稼ぎはゼロになる。アゼルバイジャンがカパン、ゴリス間の国境沿いの道を封鎖したと言ったが、細かく説明すると通行料を徴収する検問所を設けた。その検問所を通るのにはアゼルバイジャンに車一台につき130〜170USドルの通行料を払わなければならない。ゴリスのアルメニア人たちが一ヶ月ほど道路工事又は教師の仕事をして得られる給料が200USドル程だという賃金と照らし合わせると如何にアゼルバイジャンによる不法な通行料が高いかお分かりいただけるだろう。その不法で破格な交通量を彼女の夫が払えるはずもない。

現地のアルメニア人には不法なアゼルバイジャンの道路占拠をアルメニアの同盟国で在るはずのロシアが許すのは産油国であり、オイルマネーを持っているアゼルバイジャンとロシアが友達だからだと思っている人達もいる。だから、アゼルバイジャンの横暴を見て見ぬ振りをすると。

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封鎖された街カパンの子供達の素敵な笑顔

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筆者とカフェで相席したカパンの陽気な若者

少し感情的に意見を述べるがお許しいただきたい。もし、仮に大国の思惑だけでなくアルメニアやアゼルバイジャンの国益、オイルマネーによる利益、力を持った軍隊の横暴等がアルメニア人にしろ、アゼルバイジャン人にしろ、人種関係なく現地で暮らす人々の生活を脅かす、又は破壊するのであれば綺麗事かもしれないがモラルや人道的な観点から言えばそんな行為決して許されていいはずがない。言語道断だ。世界が世界中の人がそのような行為を決して許さない良識を持ち合わせていると筆者は信じている。

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話がだいぶ逸れてしまったが彼女の取材に話を戻そう。

Q”ご自身含めて家族や難民のために一番必要なものはなんだと思いますか?”

A”自分たちの家が必要だと思う。二人の娘がいて賃貸の狭いアパート暮らしは大変よ。雨漏りがひどいから冬が心配。ゴリスは豪雪地帯なのよ、、”

Q”二人の娘さんは今の生活で問題などありますか?”

A”子供達は大丈夫よ。二人とも新しい友達ができたから今の生活も楽しいみたい。今も習い事に行っているわ。”と彼女は答えた。彼女の娘は9歳と8歳のまだまだ小さな少女だ。やはり、子供達は大人より強いのかもしれない。もう既に前を向いて歩いている。

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”全てを失ったあの日からもう希望が持てない、、、もう、村があの日々が帰ってくることはないわ、、、”そう彼女は寂しげな瞳で語っていた。”それでも、国を超えて私たちは助け合える。世界はそんなに悪くないと信じているわ、、”そう彼女は語る。

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取材に訪れたタイミング彼女は義母の家に遊びに来ていたため、彼女の義母の家で取材をさせてもらった。突然アポイントメントを取り訪問したというのに、美味しいアルメニアコーヒー、山盛りの色鮮やかなフルーツ、そしてゾルアップ村名物ザクロを用意してくれていた。素晴らしすぎるホスピタリティだ。”アルメニア人はホスピタリティは良いのに、アルメニアという国の状況は良くないのよ”そんな冗談を言って彼女の義母は笑っていた。こんなにホスピタリティがあり、優しくて温かい人たちの希望を奪うものならば、筆者は戦争を、、、。

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