部下の人々がすごい良い製品を作っていたので、もっとわかりやすく伝えようと思った。
オフィス用の家具というものは、戦後GHQが持ち込んだスチール製の机をコピーするところから始められたというのが定説だと思うが、長らく「スチール家具」と呼ばれてきた。なぜそう呼ばれるかと考えるとそれまでは違う素材で作られてきていたからということになり、おそらく他の家具と同様、木製であったことが想像に難くない。家具というものは木加工で製造するものであったのだと思う。そう考えるとスチールという堅牢な素材を用いることは大したイノベーションであり同時に結構な贅沢であったのではなかろうか。不特定多数の人が業務用に使う道具としてはそれが理にかなっており、その後ディファクト化したのもうなづける。
その後、オフィス用の家具はプラスティックのインジェクションでの成形パーツが多用されるようになったので、もはやスチールで素材を代表することはできないくらいになったが、量産性の観点からは少なくとも木製には戻りにくい状況が長らく続いている。
てな話を書いていると思い出したが、ヨーロッパ輸入家具の取扱会社の人と話している時、スチールを起源とするオフィス家具全般のプレーヤーのことを、「スチールさん」と呼称しててちょっと驚いた。「自分達のような木材を多用したヨーロッパの高級輸入家具ではなくて日本の汎用的なスチール製家具を量産しているブランド」という意味で呼称しているのだと思うが、「スチールさん」て。この呼称を発する行為自体がメチャ日本ぽいなと思った。確かにオフィス用の家具はヨーロッパは概して木製が多く、イギリスのみがスチールの少し比率が高く、その影響なのか北米はスチールの比率がヨーロッパよりは多いような気がする(印象)。
とはいえ、木製の暖かみがいい、とか国産材を活用しようとか言い出してからでも10年以上経ており、オフィス家具のブランドだって立派に木製パーツを使いこなしている、と言いたいところではあるが実状はそうでもない。風合いやテクスチャーを木製素材から取り入れることは比較的容易であるが、スチールやプラスティックが持つ剛性はとても出せない。つまり木質素材側に市場に対する弱みがある。
木質の風合いとメタルの強度の融合、が正解なのであるが製造上はどちらかに寄せたほうが効率がいい。ノウハウも設計も製造も別々に発展している中で敢えて融合させると経済性がイマイチになる。加えて技術者は自身の知見で製品をコントロールしたがる傾向があるので、知らない技術に簡単には近づきたがらない、という性向があるように思う。
てなことを思いながらもう何年も過ぎてしまった。成り行きではできない類の製品であることが身に染みたので、ある程度じっくり取り組まざるを得ない。木質素材に対する市場の受容性も高まってきており、林業界隈の事情もだいぶ汎用性が高まってきていると感じるので、目の前にある資源を活用して自身の技術を施すことに興味を持つことを次世代に繋いでいきたい。
動画の内容(何本かのつづきモノになります):
天板の秘密を知らずしてsiltaの美と技術は語れない。北東北の林業ネットワーク。針葉樹中心の日本の林業の中で、広葉樹の可能性に賭けた先達の視点を活かそうとする若い世代の発想が源流にあった。 まずは木を切り出す。
https://www.itoki.jp/products/table/silta/
00:00 旅の始まり
00:25 現場へ
00:49 行きます
01:08 刃が入る
01:57 その瞬間
02:30 枝をはらう
02:54 予想より大きかった
02:58 ドワーって
03:30 黙ってても生えてくる
04:00 ご安全に
04:07 旅行記